「近江町市場」には8つの入り口と7つの通りがあり、まるで迷路のようだ

石川県金沢市を代表する観光スポット「近江町(おうみちょう)市場」。170もの店が軒を連ねる場内には、日本海の新鮮な海の幸や野菜、果物など食べ物を中心に多種多様なものがそろい、「金沢市民の台所」としても知られている。そんな近江町市場には、地元民が愛する絶品グルメがあるという。舌の肥えた金沢人イチオシのグルメとは何なのだろうか?

とれたて食材で市場ならではのご飯

まず、穴場的な場所にありながら絶大な人気を誇るのが、その名も「近江町食堂」。市場で仕入れた新鮮な食材をふんだんに使ったメニューがそろう。

雰囲気のあるのれんをくぐって「近江町食堂」へ。新鮮な海の幸を使ったメニューが並ぶ

観光客を中心に一番人気なのは、とれたての魚介てんこ盛りの「海鮮丼」(1,770円~)だが、地元民がランチに選ぶのは「日替定食」(700円)だ。魚介をメインにした市場らしい内容でうまくて安いと評判。新鮮さを楽しみたい人には、「刺身定食」(1,150円)も人気。この日は脂ののったブリやサーモンなどが登場。旬のおいしさがたまらない!

ちなみに、市場の中でも長い歴史を誇る近江町食堂は、創業当時、市場商人たちの憩いの場としてにぎわい、通りから少し入る場所柄「近江町の穴」と呼ばれていたそう。今でも穴のようなノスタルジックな佇(たたず)まいを残しつつ市場の活気に包まれ、観光客だけでなく地元の人たちにも愛される食堂となっている。

近江町食堂の「刺身定食」。金沢の魚介のおいしさを実感

●information
近江町食堂
石川県金沢市青草町1

おふくろの味をおなかいっぱい味わう

続いて、家庭的な味を楽しみたい時に地元民が通うのが「ごはんや たつや」。11時30分から15時までの営業で、メニューは「日替り定食」(700円)だけ。近江町市場で仕入れた、その日イチオシの素材を使った献立で楽しませてくれる。お客さんは昔ながらの常連さんが多く、アットホームな雰囲気。お店の方のさりげなくあったかい対応に心が和む。

この日のおかずは「はたはた煮付け」をメインに、「揚げギョーザ ポン酢がけ野菜添え」とご飯、みそ汁、小鉢のセット。脂がのったはたはたは、市場内ならではの新鮮さとおいしさ! 揚げギョーザにはみずみずしい野菜がたくさんなのだ。なにより、バランスも良くて量もたっぷり! おふくろの味的なホッとできるご飯が食べたい時にオススメだ。

地下1階にある隠れ家的なお店「たつや」。「日替り定食」は、魚介や野菜を中心に具だくさんで大満足!

●information
ごはんや たつや
石川県金沢市下近江町26

おばちゃんの笑顔に癒される喫茶室

海の幸のイメージが強い近江町市場だが、喫茶店やカフェも充実している。中でも市場の人たちの憩いの場になっているのが「喫茶室 閼伽(あか)」。スナック風の店内にはフカフカのソファがあり、仕事の合間に横になってくつろぐ人がいるほど。初めて見た人は驚く人が多いというが、それほどリラックスできる場所なのだ。

お店を切り盛りするのは、見た目はちょっと怖い(?)けど、優しいおばちゃん。メニューにはコーヒーなどドリンクに加えて、カレーや焼きめしなどが並ぶ。名物はカレーライスの上に卵とチーズをかけてオーブンで焼いた「焼きカレー」(800円)。チーズと卵のとろけ具合が絶妙でボリュームもたっぷりである。おばちゃんの笑顔と何げない会話と、一緒に楽しんでみてほしい。

とろけるチーズがおいしい名物「焼きカレー」。「きまっし」は金沢弁で「来てね」の意味

●Information
喫茶室 閼伽(あか)
石川県金沢市下堤町37天狗近江町ビル2F

珈琲店の大人味プリンで贅沢なひとときを

ホッとひと息つきたい時には、「東出(ひがしで)珈琲店」が人気。昔ながらの珈琲店の趣が残る店内では、約20種類の自家焙煎コーヒーが楽しめる。朝方は市場に仕入れに来る料理人、お昼時はサラリーマン、午後からは買い物途中の奥様や学生さんなど、奥深いコーヒーの味を求めて足を運ぶ常連さんで1日中にぎわっている。

こちらの絶品グルメは、コーヒーに合うスイーツということで考案された手作り「プリン」(400円)。卵の黄身、生クリーム、牛乳、バニラビーンズを使ったプリンは、滑らかで濃厚、甘さを抑えたほろ苦い味で、ひとくち頬張ればもう至福の時! 口コミで人気が広がり、最近では噂を聞きつけて食べに来る観光客も多いそうだ。

「東出珈琲店」の手作りプリン。コーヒーと一緒にどうぞ

●Information
東出珈琲店
石川県金沢市十間町42

買い物途中や放課後の食べ歩きといえば……

近江町市場には、毎日のように行列ができる名物がある。そのひとつが「近江町コロッケ」。揚げたてのコロッケの香りに誘われて、どんどん人が集まってくる。その数10種類以上。中でも注目は、甘えびがギッシリ詰まった「甘えびコロッケ」(250円)。北陸を代表する海の特産 甘えびが手軽に楽しめるとあって大人気だ。

学校帰りの学生さんがおやつ代わりに食べ歩きしたり、夕食のおかずに主婦の皆さんが買って帰ったり、地元の人にもおなじみ。アツアツ、ホクホクのコロッケ、近江町に来たなら是非とも味わいたい!

ちなみに、筆者が訪れた時にはもうなかったのだが、ここのいなり寿司(130円)は規格外に大きくておいいしいと評判のよう。昼にはもうなくなっていることも多いので、市場の開場とともに行けるのであれば、真っ先にここへ行くことをオススメしたい!

種類豊富な「近江町コロッケ」選ぶのに迷っちゃう! 「甘えびコロッケ」ジャガイモも甘くて美味

●Information
近江町コロッケだいや
石川県金沢市上近江町36

このように、近江町市場には隠れた絶品グルメが数多く存在する。今では観光スポットとして有名だが、元々は市内の魚屋さんや八百屋さんが集まったまさに「金沢市民の台所」。だからこそ、今でも地元民に愛されるグルメやお店が多いのだ。近江町市場を訪れる際には、裏路地を入ってみたり地下に下りてみたり、隠れた穴場も是非チェックしてほしい。