ポイントは「9路盤」「13路盤」「19路盤」という3種類の碁盤だ。通常、囲碁で用いられる碁盤は「19路盤」と呼ばれるもので、縦横に引かれた19×19の線で構成されている。囲碁は線と線との交点に石を置いていく競技なので、単純計算で石を置ける場所が361箇所ある計算になるわけだ。ということは、13路盤は「13×13」なので169箇所、9路盤は「9×9」なので81箇所となる。つまり、19路盤がもっとも勝負のフィールドが広く、自由度が高いのである。この「自由度の高さ」こそ、コンピュータがもっとも苦手とするところなのだ。

日本棋院と提携してコンピュータ囲碁の大会である「電聖戦」を開催するなど、囲碁界の発展に尽力する電気通信大学助教の伊藤毅志氏も、コンピュータ囲碁の現状について「プロ棋士と19路盤で対局できる力はまだない」と分析する。

電気通信大学助教の伊藤毅志氏(左)と「Zen」開発チームの加藤英樹氏

しかし、それは逆にいえば「勝負のフィールドが狭くなれば、コンピュータが有利になる」ということでもある。事実、日本棋院副理事長の山城氏は「9路盤ならプロ棋士とほとんど互角ではないか」と述べている。

日本棋院副理事長の山城宏氏

そこで、今回の企画では、「Zen」と互角になるよう対戦相手を調整したというわけだ。囲碁ファンとしては19路盤でのプロ棋士との対局がぜひ見たいところだが、現時点でのコンピュータ囲碁の実力を考えればやむを得ないルール設定だろう。

ちなみに伊藤氏によると、コンピュータ囲碁が急速に進歩したのは「モンテカルロ」と呼ばれる手法を取り入れるようになってからだという。かつてはアマチュア初段にも満たなかったコンピュータの実力だが、現時点での棋力はインターネット碁会所の欧米レートで5段程度。日本のレートに換算するとアマチュア6~7段クラスとなり、これは「弱い県代表レベル」なのだという。まだまだプロには及ばないとはいえ、9路盤では決して油断のできない強さだ。

急速に力を増してきたコンピュータ囲碁ソフト「Zen」に、プロ棋士である2人はどう向き合うのか。

「電王戦」に出場する張豊猷八段は、「対局が決まってから仲間と研究を始めました。自宅で9路盤の棋譜並べをしたのは人生で初めて。研究すればするほど9路盤の奥深さに気付かされて、正直参ってます(笑)」と気合十分。「初めてコンピュータに負けた棋士にならないようがんばりたい。コンピュータでは見ることができない人間の一生懸命さをお見せできれば」と意気込みを述べた。

また、平田智也三段は「Zenは疲れもないですし、見損じも少ないと思う。そこに気をつけていかないと結果を残すのは難しい」と「Zen」の強さを認めつつも、最後には「勝ちます」と力強く宣言していた。

囲碁電王戦は2月11日の10時、16日の9時30分よりニコニコ生放送で生中継される。対局会場は日本棋院「幽玄の間」。ニコファーレでは武宮正樹九段(解説)、大澤奈留美四段(聞き手)が大盤解説を行う。

なお、本日の発表と同時に「ニコニコ動画」では、「将棋電王戦」と同様にPVも公開されている。