筆者個人は高く評価しているWindows 8.1だが、タブレット向けのUIが導入されたことで、消費者の買い控えを招いている節がある。それでも、8インチ前後のWindows 8.1搭載タブレットが多数リリースされ、ようやく勢いを見せはじめた。

だが、そこに現CEOであるSteve Ballmer氏は「誰もWindowsを買わない」とインタビューで答えたという。Ballmer氏の真意はどのようなものなのだろうか。また、Windows PhoneおよびWindows RTのライセンス料のリーク情報や、両OSのライセンス料を無料にする計画を立てているとの情報も伝わってきている。今週はこれらに関するレポートをお送りする。

デバイス&サービスへ移行するMicrosoft

MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏が、自社の方針を変更すると表明したのは2013年7月の話だ。過去数十年続けてきたソフトウェア企業というスタイルを変えて、「デバイス&サービス」へと舵を切った。

その背景にはITデバイスのトレンドが、従来のデスクトップ型やノート型といったパーソナルコンピューターから、スマートフォンやタブレットのような新しいスタイルに移行しつつあるのが大きい。その流れを踏まえ、圧倒的なシェアを誇るWindows OSやOfficeスイートだけでは将来性がない、という判断から舵を切ったのだろう(図01)。

図01 新CEO決定後に退任するSteve Ballmer氏

しかし、その決断をしたBallmer氏は退き、現在新たなCEOを選定するための活動が行われている。当初は2013年内に新CEOが決定するはずだったものの、実際のところは難航しているようだ。同社は公式ブログで、新CEOの選定が2014年の早い時期になると発表。遅くとも第1四半期が終わる2014年3月までには決定まるはずだ。

そのBallmer氏が11月に受けたインタビューが話題を集めている。Microsoftウォッチャーとして著名なMary Jo Foley氏の記事「Microsoft's Ballmer: Surface a 'tougher' bet than the Xbox」によると、Ballmer氏はデバイス&サービスへ舵を切る理由として、「IT企業がなすべきことは新しい可能性を構築することだ。我々はアップグレードと改善を行わなければならない。Nokiaを取得したのはその一環である」と述べたという。これは冒頭述べた同社の方針変更に関する発言だ。

さらに同氏はSurfaceシリーズについて、「我々のベンダーはハイエンドブランドであり、彼らと競争するための投資で苦労した」と、市場参入の難易度を語りつつ、「我々は素晴らしいソフトウェアを作る方法を知っている会社だが、それを表現するにはサービスとデバイスが欠かせない。誰もWindowsを買うのではなく、Windows PCを買っている」と述べたそうだ。

確かにMicrosoftは以前からハードウェアに関するアプローチを行ってきた。例えばキーボードやマウス、一時期はPCゲーム用のジョイスティックなども手がけている。さらにコンシューマーゲーム機であるXboxシリーズもハードウェアに数えられるだろう。だが、Microsoftは現時点で工場を持たないファブレスメーカーである。Surfaceの製造はFoxconなどのEMSが行ったとみるのが正しい(図02)。

組織改編や戦略変更など、デバイス&サービスへ舵を切って早数カ月。Microsoftの新たな戦略は着々と進んでいる。だが、その歩みを誰が担うのかは、いまだ定かではない。

図02 品不足が発生し、比較的好調な「Surface Pro 2」