「第3回 将棋電王戦」記者発表会が10日、東京・六本木のニコファーレで開催され、対戦カード、日程、会場などが発表された。

電王戦に出場するプロ棋士と将棋ソフト開発者が登壇した

第一局は3月15日に有明コロシアムで行われ、その後は毎週土曜日に会場を変えながら全五局が開催される。特別協賛にソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)と日産自動車株式会社、おやつ協賛に株式会社ローソン。発表会では対戦するプロ棋士と将棋ソフト開発者が登壇したほか、安倍晋三首相が振り駒を行い、奇数局はプロ棋士の先手が決定した。

電王戦は人間のプロ棋士とコンピュータ将棋が5番勝負を行う団体戦。前回は2013年3月から4月にかけて行われ、結果は人間側の1勝3敗1分け。主催はドワンゴで、対局の模様は今回もすべてニコニコ生放送で中継される。

発表会には日本将棋連盟会長・谷川浩司九段、日本将棋連盟理事・片上大輔六段、ドワンゴ会長・川上量生氏、そして電王戦に出場するプロ棋士と将棋ソフトの開発者が登壇し、意気込みなどを語っていった。

主催のドワンゴ会長・川上量生氏

対戦カードと日程、会場は以下の通りとなる。(▲は先手)

第一局:3月15日(土)/対局会場(有明コロシアム・東京都江東区)
▲菅井竜也五段 vs △習甦(将棋電王トーナメント第5位/開発者・竹内章)

第二局:3月22日(土)/対局会場(両国国技館・東京都墨田区)
△佐藤紳哉六段 vs ▲やねうら王(将棋電王トーナメント第4位/開発者・磯崎元洋、岩本慎)

第三局:3月29日(土)/対局会場(あべのハルカス・大阪府阿倍野区)
▲豊島将之七段 vs △YSS(将棋電王トーナメント第3位/開発者・山下宏)

第四局:4月 5日(土)/対局会場(小田原城・神奈川県小田原市)
△森下卓九段 vs ▲ツツカナ(将棋電王トーナメント第2位/開発者・一丸貴則)

第五局:4月12日(土)/対局会場(東京・将棋会館・東京都渋谷区)
▲屋敷伸之九段 vs △ponanza(将棋電王トーナメント第1位/開発者・山本一成、下山晃)

まずは重要な初戦となる第一局は菅井五段と、前回も初戦で登場したソフト「習甦」との対局だ。菅井五段は「もう数カ月で勝負なんだなと。しっかり勉強したい」と改めて意気込みを示しながら、「(習甦は)1年前と比べて終盤が強くなっている」と対戦相手を分析。対する習甦の開発者・竹内氏は「前回は厳しい戦いとなった。前回完敗した無念さが強い思いになった」と、コンピュータ側で唯一の敗戦となった「第2回 将棋電王戦」を振り返り、「好成績を収めている菅井五段と対局できるのは光栄なこと」と話している。

習甦の開発者・竹内氏

菅井五段

そんな初戦の舞台となるのは有明コロシアム。日本テニスの聖地として知られる場所で、2010年の東京オリンピックでは会場の一つになることが予定されている。川上氏によれば、「普通だと絶対に将棋をやらなそうな場所で、しかも"戦い"の場所でもある」ことが会場選考の決め手になったのだという。

続いての第二局を争う佐藤六段は、この日対局のため欠席となったが、代わりにビデオレターで「対戦相手のやねうら王についてはまだよくわからないが、とても個性的なソフトだと聞いている。僕もプロ棋士の中では個性的な方だと思うので面白くなると思う。会場は両国国技館なので、まわしの締め方も研究したい」と佐藤六段らしいユニークなコメントで会場を笑わせた。これに対して「やねうら王」の開発者・磯崎氏は、「佐藤六段は将棋界の"お笑い"担当。私も同じなので、お笑いの方でも負けたくない」とライバル意識(?)を燃やしていた。

この日の発表会には、日本将棋連盟会長・谷川浩司九段(中央)、日本将棋連盟理事・片上大輔六段(右)も登壇

第二局の場所は両国国技館。川上氏曰く、「日本でもっとも古いゲームである将棋を、伝統ある相撲を行う両国国技館で対局するのは面白いのでは」とのことだ。

やねうら王の開発者・磯崎氏

ビデオレターで登場した佐藤六段

続いて第三局は、大阪市・阿倍野区に3月開業予定となるあべのハルカスで行われる。大阪が地元だという豊島七段は「地元なので人を呼びやすい」と話しつつ、「しっかり練習して臨みたい」と気合充分。対するYSS開発者の山下氏は「豊島七段は強豪なので、少しでもいい将棋を指せたら。相当厳しい相手に当たってしまったなという感じ」と控えめなコメント。勝負の流れを決定づける重要な対局だけに、勝敗の行方が注目される。

YSSの開発者・山下氏

豊島七段

第四局で激突するのは、森下九段とツツカナ。「ツツカナは将棋の筋が良い」と絶賛した森下九段は、「奇策を弄するのではなく、ツツカナの胸を借りたい」と正々堂々と真正面からぶつかることを約束。これに対してツツカナ開発者の一丸氏は「開発はすでに終わっており、対局日を待つだけ。その日が待ち遠しい」と冷静な表情。森下九段の著書にも目を通したという一丸氏は「森下九段は原理を熟知するタイプで、私と同じ」とうれしそうに話していた。

ツツカナの開発者・一丸氏

森下九段

その第四局、対戦会場となるのはなんと小田原城。北条市の居城として歴史にその名を残す名城だ。この小田原城の中で、一年に一度しか公開されない「銅門(あかがねもん)」が電王戦第四局の舞台になる。こうしたイベントに銅門が使用されるのは初めてのことだという。