3日後に迫ったWindows 8.1の発売。既にRTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)版の完成を8月27日(現地時間)に発表し、紆余曲折(うよきょくせつ)の末、9月10日からMicrosoftの開発向け/ITプロフェッショナル向け有料サービスであるMSDN/TechNetでイメージファイルの配布を行った。しかし、あくまでもRTM版は完成版ではない。同社バイスプレジデントであるAntoine Leblond(アントニー・レブロンド)氏は、RTMリリース後もベンダー各社との最終調整のため、GA(General Availability version:一般提供版)版に至るまで改良を続けると述べている。

日本マイクロソフトは、Windows 8.1リリースの約一週間前となる10月11日に製品事前説明会を開催し、Windows 8.1の新機能に加えて、GA(General Availability version:一般提供版)で加わるいくつかの機能を紹介した。その内容は今後Windows 8.1へ移行する予定のユーザーや、旧OS(オペレーティングシステム)を使い続けようとするユーザーにとって興味深い内容ばかりだ。そこで今週は同説明会の内容をまとめたレポートをお送りする。

検索が楽しくなる「ヒーローアンサー」

まもなく登場するWindows 8.1に向けて、日本マイクロソフトは10月11日、日本本社にて製品事前説明会を開催した。この手の発表会は同社において定番だったが、OS(オペレーティングシステム)に限れば、Windows 7以降は開催回数も減り、情報コントロールがMicrosoft本社に移った印象を受けていた。今回は3時間と若干長時間の説明だったが、興味深いのは2部構成で開催された点である。まずは順を追って説明しよう。

第1部は既に本レポートで述べてきたWindows 8.1の変更点を中心に解説が行われた。同社業務執行役員Windows本部本部長の藤本恭史氏は、今年6月に開催した開発者向けカンファレンス「Build 2013」でMicrosoft CEO(最高経営責任者)であるSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏が述べたように、状況やニーズに即した短い期間で新しいOSをリリースする「Rapid Release」という考え方を採用。そして新たなデバイスとソフトウェアの格差を縮めたファーストリリースがWindows 8.1である、と述べた(図01)。

図01 日本マイクロソフトの藤本恭史氏

続いて具体的な機能に関しては、元Internet Explorerチームから移籍したWindows本部の溝口宗太郎氏がWindows 8.1のコンシューマー向け機能を、法人向け機能は西野道子氏が解説した。Internet Explorer 11などを用いた分割表示機能(旧スナップ機能)や、WebGLのパフォーマンス強化をアピールするデモンストレーションなどを実施。WebGL Aquariumを用いたデモンストレーションは、Google Chromeのバージョンを示さなかったものの、Internet Explorer 11の方が高いfps(フレーム/秒)を打ち出していた(図02~03)。

図02 Webページ上の電話番号をタップすると、そのままSkypeで発信できることを紹介した

図03 Googleが開発したWebGLのデモンストレーションをInternet Explorer 11上で実行

法人向け機能としては、タブレット型コンピューターで業務遂行するシチュエーションを踏まえて、グループポリシーによるスタート画面のカスタマイズを抑制する機能や、ワークフォルダーやワークプレイスといったサーバー連動型機能などを紹介。また、アサインドアクセス(旧キオスクモード)という実行するWindowsストアアプリを1つに限定する機能は、POSシステムや案内システムなど、来客者向けシステムへの応用が想定される。この他にもWindows RT 8.1によるデバイスの暗号化機能なども紹介された(図04~06)。

図04 企業向けWindows 8.1の強化点として、5つの機能をアピール

図05 BYODを促進するためのワークフォルダーやワークプレイスなど、Windows Server 2012 R2と連動する各種機能を紹介

図06 デバイス上で操作するWindowsストアアプリを1つに限定するアサインドアクセス機能。POSなど利用範囲は広そうだ

このような内容で第1部は終了。続く第2部は残念ながらスライドに映し出された内容やスピーカーの撮影は一切禁止であったが、その内容はMicrosoftのバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストであるSteve Guggenheimer(スティーブ・グッゲンハイマー)氏が「Blogging Windows」で述べたように、RTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)版完成後にも改善を重ね、GA(General Availability version:一般提供版)版に至るまで改良を続けた結果を説明するというものだ。こちらも順を追って紹介しよう。

1つめはBingスマート検索。Windows 8.1プレビュー以降、何度も述べてきたようにWindows 8.1はWeb検索機能をOSと融合させるスタイルを採用している。前述したBuild 2013で説明されたように、Bingを単なるWeb検索サイトから、プラットフォームとして提唱した「Bing Platform」は記憶に新しい。OCR(文字認識)やTranslator(翻訳)、Speech Control(音声認識)など各種機能を備えることを目標としているが、これらはWindows 8.1のリリースタイミングで提供される予定だが、日本語対応や日本国内への提供は現時点で未定である(図07~08)。

図07 Build 2013で発表されたBing Platform(同プレゼンテーション資料より)

図08 3D表示に対応したBing Maps。日本国内での提供は現時点で未定(同キーノートより)

10月17日20時のリリースタイミングで唯一利用可能になるのが、Bingスマート検索だ。Windows 8の検索チャームやアプリや設定、ファイルといった異なるチャームを用意していたが、Windows 8.1ではこれらを1つにまとめると同時にWeb検索も実行可能にしている。テキストボックスはオートサジェスト(自動補完)機能を備え、スクロールによる検索結果の提供などをまとめて「スマート検索」という呼称を用いたのだろう。

注目すべきは「ヒーローアンサー」と呼ばれる機能。人物や都市などエンティティ(実体を指す概念やデータの集合体)と判断されるキーワード検索時に稼働し、特別なUI(ユーザーインターフェース)で検索結果を提供する。もちろんローカルファイルに対しても同時に検索が実行されるが、スクロールした先には、コンテンツに応じてWindowsストアアプリを呼び出す機能を搭載。例えばWikipediaの検索結果がある場合は、同Windowsストアアプリが起動可能になる(図09~10)。

図09 検索チャームから「渡辺謙」を検索すると、ヒーローアンサーとして検索結果が示される

図10 Web検索結果は「ニュース」や「Wikipedia」など、特定のWindowsストアアプリと連動可能

このヒーローアンサーが稼働するタイミングは不明だったが、今回の説明によると俳優や映画、著名人、都市が対象になるという。また、RTM版では稼働していないが、GA版からはレストランやホテルも対象に加わる予定だ。なお、ヒーローアンサーの配色は用いる画像(写真やポスターなど)から自動的に判断に決定するという。図11はポスターの色味が赤や黒が用いられているため、同色が強く使われている。図09と比較するとわかりやすいだろう(図11)。

図11 ヒーローアンサーの配色は写真やポスターを参考に自動調整される