G-SHOCK SKY COCKPITシリーズの最新モデル「GW-A1100」について、規格や開発の裏話を聞くインタビューシリーズ。後編では、磁気(方位)センサーを搭載することの難しさ、新素材の採用、操作性への一工夫などを紹介しよう。
企画・開発スタッフに聞く! - G-SHOCK SKY COCKPIT「GW-A1100」ができるまで(前編)
―― 計測機能が温度から方位に変わったことで、操作は変わったのでしょうか?
牛山氏「温度計の操作を、そのまま方位計の操作に置き換えました。GW-A1000のユーザーインタフェースは非常に優れていると多方面でお褒めをいただき、ロイヤルエアフォース(英国空軍)からも高く評価されています。今回、商品企画から受けたミッションのひとつは、この操作性を極力継承するようにということでした。
開発というものは、コンセプトが明確でないと、あれもこれも…と機能を詰め込んでしまいがちなんです。そうじゃなくて、GW-A1000ではこのボタンを押すと温度が分かる、GW-A1100では方位が分かる。それ以外の操作系は同じ。それが大切でした。」
斉藤氏「機能を増やすと、操作が難しくなるんです。例えばボタンが1個増えただけで、操作のバリエーションが格段に増える。ボタンを押す順番や、二個押しするか、それとも長押しするかなど…。PRO TREKのユーザーは多くの方が使いこなせるんです。複雑な操作でも、マニュアルを読んで覚えて、使いこなそうとしてくれます。
でも、G-SHOCKのユーザーはちょっと違うと思っています。もちろん、機能を使いこなしている方は多いでしょうけれど、どちらかといえば耐衝撃性能やデザイン、防水、電波で時間が狂わないといった根本的なところに魅力を感じてくださっていると思います。計測機能は、あくまでプラスアルファ。そこが、センサー機能を優先して選んでいただいているPRO TREKとは違う部分ですね」
牛山氏「GW-A1000とGW-A1100では、アラームやタイマーの時刻合わせや都市選択を、スマートアクセスのリューズスイッチで行います。ボタンは、モードボタンのほかアクションのボタンが2つあるだけです。これは、ごく普通のアナログ・クロノグラフとまったく同じ。ですから、マニュアルを読み込まなくても、何となく使えてしまう。それは良さとして受け入れられていますし、流通や販売店の方々にも説明しやすいですね」
斉藤氏「ダイヤルデザインも分かりやすい。例えば、モードダイヤルの左側には曜日、右にはモード名が配置されています。つまり、針が左を向いていれば、それだけでモードスイッチが押されていない(=通常表示)状態と分かります。
右側のモード表示も非常に有効です。例えば、デジタルではモードボタンを押すたびに機能が切り替わっていきますよね。このとき、ストップウオッチが何番目にあるかはちょっと分かりにくい。でも、アナログではモードダイヤルを見ると、機能の切り替わり順がひと目で分かります。
あと2回押せばストップウオッチだなとか、減算タイマーだな、というのが分かるんですよ。モードボタンを押しているうちに『あ、しまった、通り過ぎちゃった!』ということが圧倒的に少ない。これは非常に有効なインタフェースだと思います。
音もそうです。『ピッ』で進んで『ピピッ』で元に戻る。こういったUIも含め、GW-A1100は非常に使いやすくできていて、それらはみんなGW-A1000から受け継いだものです」
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