長野県諏訪市から伊那市、飯田市にかけての国道153号線沿いにある「信州・天竜川どんぶり街道」をご存じだろうか。ここは、地元の食材を使った昔ながらの丼に、新しく作ったユニークなご当地丼を加えた、個性豊かな丼が楽しめるルート。食材豊富な地域らしく、9団体136店舗(2010年9月時点に集計)が考案したバラエティに富んだ丼がそろい、注目を集めている。
諏訪はおいしさがてんこ盛りの丼
「信州・天竜川どんぶり街道」があるのは、南北に長い長野県の中部から南部にかけて。この辺りは、諏訪湖がある諏訪市を中心とした「諏訪地区」、伊那市、駒ヶ根市などの「上伊那地区」、飯田市を中心とした「飯伊(はんい)地区」に分かれる。今回は、このエリア別に地域色豊かな丼を紹介していこう。
まず、最も北にある「諏訪地区」の丼は、諏訪市の「信州諏訪みそ天丼」と、全国有数のうなぎの産地 岡谷市の「うな丼」。
このうち「信州諏訪みそ天丼」は、諏訪湖特産の川えび、わかさぎ、地元で採れた野菜の天ぷらに、諏訪のみそを使ったタレをかけたもの。諏訪自慢のみそをより多くの人に味わってもらおうと、地元の皆さんが力を合わせて作りあげた。アツアツの天ぷらと奥深いみその組み合わせは懐かしく新しいと評判で、幅広い世代の人気を集めているそうだ。
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れすとらん割烹 いずみ屋
上伊那は歴史と文化、風土を感じる丼
続いて、「上伊那地区」を見ていこう。ここには、辰野町(たつのまち)の「ほたる丼」、伊那市と駒ヶ根市の「ソースかつ丼」、飯島町(いいじままち)の「さくら丼」がある。
まず、「ほたる丼」は、香ばしく焼いた地鶏に特製ダレをかけた照り焼きと卵を組み合わせたもの。ほたるの名所「松尾峡(まつおきょう)」にちなんだほたるがアクセントになっている。鶏と卵の食べやすさと見た目のかわいらしさから、女性や子供にも人気があるそうだ。
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コーヒー・レスト むう
続いて、伊那市の「伊那ソースかつ丼」は、ご飯の上にキャベツの千切り、その上に特製ソースにくぐらせたトンカツをのせたもの。昭和初期、市内の飲食店が提供したかつ丼が原型で、地元で長く愛されている名物丼だ。「駒ヶ根ソースかつ丼」とともに、この辺りでかつ丼といえばソースが定番。市民の舌になじんだ郷土の味だという。
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カジュアルレストラン しらかば
戦国時代からの馬の産地である飯田町の「さくら丼」は、上質な馬肉を使った丼。海がないこの地域では、馬肉は動物性タンパク源を取る食材として重宝され、今では栄養価が高くヘルシーな食材として注目されている。そんな馬肉を使ったさくら丼は、和風、牛丼風からビビンバ、洋風までバラエティに富んだ味が楽しめ、女性を中心に人気を集めている。
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味処 みよし
飯伊ではイチオシ食材を多彩にアレンジ
最後に、最も南に位置する「飯伊(はんい)地区」では、飯田市の「鹿味噌グリル丼」、松川町の「ごぼとん丼」、高森町の「アルプスサーモン丼」が名を連ねる。
地元で取れた鹿肉を使った「鹿味噌グリル丼」は、飯田市にある山肉専門店 星野屋だけで食べられる貴重な丼となっている。また、「ごぼとん丼」は特産のリンゴなどのフルーツで育った黒豚と、地元産のごぼうを使ったもの。豚肉に含まれるビタミンやコラーゲン、ごぼうの食物繊維など栄養たっぷりの一品だ。
「高森アルプスサーモン丼」は、両親ともニジマスを交配させた養殖のブランド鮭・アルプスサーモンを使ったもの。色鮮やかなサーモンは、脂がのっておいしいだけでなく見た目にも美しく、食欲をかきたてられる。内陸部に当たるこの地域では珍しい魚の丼ということで注目度も高く、創意工夫を凝らしたメニューが話題を呼んでいる。
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日本料理 葵
ボリューム丼からヘルシー丼まで、長野のおいしさがギュッと詰まった「信州・天竜川どんぶり街道」。どの丼も基本的なルールを守ればアレンジOKなので、お店それぞれの味があり、メニューの数は全部で100以上ある。特にタレにこだわっているお店が多いので、気になるお店にはどんどん足を運んで、自分の好みの丼を見つけてみてはいかがだろうか。
どんぶり街道を運営するのは、「信州・天竜川どんぶり街道の会」。発足は平成21年(2009)で歩み始めて間もないが、イベント出店などPRによって徐々に知名度がアップし、丼を目当てにこの地域を訪れるお客さんが増えているという。
どんぶり街道沿いは、東西にアルプスを抱える自然豊かなエリア。山深い場所もあるが、道路は奥まで整備されているので、これからの季節は紅葉ドライブルートとしてもオススメだ。