漫画家として『ビー・バップ・ハイスクール』などの作品を手掛けるほか、映画監督としても活躍する木内一裕氏の小説デビュー作『藁の楯』。2013年4月に三池崇史監督の手で映画化された本作がBlu-rayとなって、2013年9月18日にリリースされる。

犯人の首に懸けられる"10億円"というキーワードと"命懸けでクズを守る"という設定の面白さで話題を呼んだ本作では、主人公のSP・銘苅一基を大沢たかおが演じるほか、松嶋菜々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗、余 貴美子、藤原竜也、山﨑努といった豪華なキャスト陣が集結。全編に亘って繰り広げられるスリルとノンストップアクションが最大の魅力となっている。

そこで今回、Blu-ray化を前に、三池崇史監督にあらためて作品について振り返ってもらった。

三池崇史監督が語る『藁の楯 わらのたて』

――初めて原作小説を読んだときの印象を教えてください

三池崇史監督

三池崇史監督「最初、映画化の話があって、自分が監督をするかもしれないという視点で読んだのですが、そのとき強烈に感じたのは、たぶん木内(一裕)さんはほかの人に監督されるのは嫌だろうなって。ここからは自分の想像なんですけど、木内さんは、『カルロス』とか何本か映画を撮られていて、優秀な監督さんでもある。ただ、自分で撮ってみて初めてわかる日本の映画の現実みたいなものがあって、そこにフラストレーション、つまり映画だったらこれぐらいはやりたいなっていうところから、それができない欲求不満があったのではないか。それがエネルギーになって、この作品ができたのではなかろうかと思いました」

――その欲求不満というのは予算や制作上のさまざまな制約などですか?

三池監督「それに加えて、はたしてハードボイルドでお客さんがいっぱい呼べるのだろうか、みたいなところ。でも冒険するのが映画人ですから、そういう想いがこの作品にはパンパンに詰まっている。これは監督を引き受け難いですよ。だから最初は正直に、『これは木内さんがやるべきですよね?』って(笑)」

――原作者の木内さんとは直接お話をなさいましたか?

三池監督「もちろん。作品を預かるわけですから、最初に会って話をしました。映画化するときには原作にいろいろと変更を加えなければいけない。それは長さの問題も含めてですが、小説をそのままコピーすることはできないので、必ず監督は原作者の前に登場するんですよ。『この人が責任者です』って(笑)。それで話をしてみたら、木内さんの中でも本当に大事にしている作品だというのがわかって、自分で撮るために書いたんだろうなっていう感触がより強くなりました」

――でも今回は三池監督が撮ることになった

三池監督「監督としての木内さんはとてもリアリストなんですよ。人が撮ったもので失望しないため、自分の中のハードルをきっちり下げてくる。全編すごいなんて必要はないし、まず無理でしょう、と。ただワンカットでもいいから、観たことがないような画が1回くらいはあるべきじゃないかっていうわけですよ。それはカット割でも表情でも、死に方なんかでもいい。何でもいいけど、何か観たことがないものがないと映画じゃないよねって。それで全体が破綻してもいいから、ワンカットだけでもあればいい。なるほどなと。発想としては正しいと思いました。でもそれに甘えるわけにもいかないですから、じゃあ、ちょっと本気を出すとどうなるかをお見せしましょう、と(笑)」