9月12日、ヒューレット・パッカード カンパニーのグローバル戦略においてコマーシャル事業の責任者であるエンリケ・ロレス氏、アジア・パシフィックエリアのマーケティングをサポートするアネリーズ・オルソン氏といった首脳陣が来日。日本ヒューレット・パッカード本社にて、法人向けPC事業戦略をテーマとしたラウンドテーブルを開催した。HPが分析する市場の動向や、今後同社が提供していくエンタープライズ向けのクライアント技術などが語られた。

ヒューレット・パッカード カンパニー
プリンティング&パーソナルシステムズ
ビジネスPCソリューションズ
シニア・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー
エンリケ・ロレス氏

ヒューレット・パッカード カンパニー
アジア・パシフィック&ジャパン
プリンティング&パーソナルシステムズ
パーソナルコンピューティングカテゴリー
バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー
アネリーズ・オルソン氏

ビジネス市場の劇的変化に、HPの大きなチャンスがある。

「日本市場の重要性は非常に高く、重要な戦略は日本から始まっている。」

ヒューレット・パッカード カンパニー シニア・バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャーのエンリケ・ロレス氏は語る。氏によれば、PC市場を観察していると、日本から始まったムーブメントが将来的に世界のトレンドになることがよくあるという。HPは法人向け事業の占める割合が全体の約2割であり、当然その動向には常に目を配ることとなる。

また、エンリケ氏は現在、ビジネスPC市場において、今までの25年間の中で最も大きな変化が起きつつあるとも語る。そして、そこにHPのビジネスチャンスがある、と。

エンリケ氏「ひとつはワーキングスタイルの変化です。今までは、社員は毎朝決められた時間に出社して、自分のオフィスや職場という固定されたスペースで働いていました。しかし現在は、オフィスで働く人もいれば、街角のカフェで作業する方々もいます。」

HPの強み

ワークスタイルが大きく変化

これらを可能にしたのはモバイルインフラの整備やPCの小型・高性能化だ。さらに、それらが働く人々の意識やビジネスのスタイルを大きく変えつつあるともいう。

エンリケ氏「今後新しく社会人となる方々は、すでにデジタル機器を使い慣れた方々です。ハードウェアにもソフトウェアにも慣れ親しんでいて、一人の消費者として、SNSや写真や動画、音楽など、さまざまなデジタルサービスを使いこなすことができます。つまり、ビジネスPCユーザーでありながら消費者であり、プロフェッショナルでもあるわけです。

ここに我々のチャンスがあります。なぜなら、HPは法人向けとコンシューマー向け市場の両方で強い存在感を示している唯一のベンダーだからです。例えば、法人向け分野で培ったマルチOSやクラウド、卓越したテクノロジーとコンシューマー向け分野で鍛えたデザイン性、使いやすさ、素材、重量、強度などのノウハウを融合して提供できます。また、ハードウェアとソフトウェア、そしてサービス、すべてのカテゴリを事業としており、ナンバーワンベンダーとして幅広い製品ラインナップを提示できる強みがあります。」

ビジネスマン、一般消費者といった様々な顔を持つ「個人」

HPのビジネスPC戦略は6つの柱からなる

同社が分析するエンタープライズ市場の激流は、洋の東西、企業の業種を問わず共通のものだとエンリケ氏は語る。確かに、伝統的な製造業や小規模な小売業ではその速度は緩いかもしれないが、方向性そのものは変わらないだろう。それに、これらの市場に対しても柔軟に製品やサービスを提供できるのが、幅広い製品ポートフォリオを持つ同社の強みといえる。

エンリケ氏「今後、企業の社員に対する期待値が大きく変化することで、ビジネスツールとしてのPCのあり方だけでなく、提携企業や契約業者とのコラボレーション、コミュニケーションの方法も変化します。ペーパーレス化やリセールなど、ビジネスエコロジーのニーズも大きくなるでしょう。

これらの複雑化するビジネス環境に対して、企業内のIT部門への負荷も大きくなると予想されます。そこで、IT部門のオペレーションをよりシンプルにすることで、企業のビジネス環境をハード、ソフト、サービスという総合的な面から強力に支援する存在が必要です。このソリューションを提供するのが私たちHPの役割であり、他社と差別化できるポイントであり、事業として投資していく部門と考えています。」

多彩な製品やサービスを手がけるHP

この総合的なPC環境最適化を、HPでは「PC アズ ア サービス」として展開する。ヒューレット・パッカード カンパニー バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのアネリーズ・オルソン氏によれば、顧客の業務内容に最適化されたPCシステムを用意し、社員数あたりの価格を設定したインストール・ベースのビジネスになるとのこと。SIerや量販店から導入した大量の社内PCを数年後にリプレース、そして、そのしわ寄せをすべてIT部門が被っていた従来のビジネスPC環境を大きく変える試みといえそうだ。

このほか2014年には、同社の既存テクノロジーを活用した新たなセキュリティサービス「リモートセキュリティ&マネージビリティ」を展開するという。ビジネスPCのセキュリティには、データを不正アクセスから守る「データプロテクト」、IDの流出を防ぐ「IDプロテクト」、デバイスを紛失や盗難から守る「デバイスプロテクト」があるが、新サービスではこれらをサーバープラットフォームで実現。紛失したPCを追跡するトレーサビリティーや、特定の建物から離れた時点で自動的にデータが消去される機能も実装するという。ITマネージャーの大きな悩みの種であったセキュリティコントロールを、飛躍的にシンプルにしてくれるサービスのようだ。

2014年には、多機能かつ強固なセキュリティサービスをローンチする予定

ラウンドテーブルでは、日本ヒューレット・パッカード 取締役 副社長執行役員 プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏が補足を加えてくれた

HPの新しいビジネス戦略と思想について多くの話を聞くことができた今回のラウンドテーブル。スピーチの最後、エンリケ氏の言葉が印象的だった。

「日本市場における重要なキーワードは"クオリティ"です。日本市場では、クオリティを伴わない製品やサービスは支持されません。それはHPが常に心がけるべきキーワードであり、最も高いプライオリティとして存在しています。」(エンリケ氏)