標準搭載される新型Kinect

その一方でXbox 360では別売りだったKinectだが、Xbox Oneでは標準搭載されたことも注目に値する。前述した音声認識やジェスチャーによる操作は皆、新型Kinectが担うからだ。Kinect for Windows Product Blogによると、新しいKinectは過去に紹介したMicrosoft Researchの研究結果を反映し、3Dセンサーのロジックを見直すことで、解像度や奥行き方向の分解能が向上。

また、RGBカメラも従来のVGAから1080pにパワーアップしている。広角の拡大により、全身認識できる人数も従来の2人から6人に増えるなど目を見張るポイントは多い。暗所や狭い部屋での認識精度向上も、日本のような比較的狭い生活環境にマッチするだろう(図07)

図07 Xbox Oneに標準搭載される新Kinect。RGBカメラは従来のVGAから1080pにパワーアップしている

続いて図08をご覧頂きたい。これはプレスキットに含まれる動画から取り出したスクリーンショットだが、新型KinectではOrientation(オリエンテーション)、Skeleton(骨格)、Muscle+Force(筋肉+力)などの骨子トラッキングをサポートしている。特にMuscle+Forceはモデルが繰り出すパンチやキックを衝撃として捉えているが、これは人体物理モデルを利用し、筋肉から生み出される力を計算するそうだ。

なお、Microsoftによるとカメラと人物の距離によっては、指や手首まで認識できるという。この精度向上によって顔の表情や心拍数も読み取ることが可能になり、同研究所が進めているヘルスケアシステムへの応用できそうだ。この他にもアクティブIR(赤外線)の採用により、暗闇や間接照明などによる一方からの光に左右されず人物の動きを認識できるという(図08~09)。

図08 新Kinectがサポートする各骨格認識。これらのモードを切り替えることでゲームやジェスチャー操作の精度を向上させる

表情認識のデモンストレーションを行うKinectグループプログラムマネージャーのScott Evans(スコット・エヴァンス)氏

実に興味深いデバイスに成長した新型Kinectだが、前述のブログでは既にWindows版の準備を進め、来年にもリリースすると述べられている。ここ数日は海外のニュースサイトでもWindows版に関して言及する記事が公開されていたが、Kinect for WindowsのディレクターであるBob Heddle(ボブ・ヘドル)氏の発言である以上、疑う余地はない。

記事では今年6月後半に開催される開発者向けイベント「BUILD 2013」で詳細を明らかにすると述べているように、来年には新型Kinectが生み出す経験を非Xbox Oneユーザーも享受できる。ちょうど昨日、日本マイクロソフトは来日したMicrosoft CEO(最高経営責任者)であるSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏の講演を開催し、「Microsoftは『デバイス&サービスの企業』に進む」と声高にアピールしていた。ゲームだけでなくエンターテインメントプラットフォームを目指すXbox One、そしてNUI(ナチュラルユーザーインターフェース)の基盤となる新型Kinectは、Microsoftの"デバイス"戦略を推し進める重要な存在となりそうだ。

阿久津良和(Cactus