巷で話題の熟成肉

店に入ってすぐのところに設置された東京・中野「肉食系ビストロTsui-teru! (ツイテル)」の熟成庫。ここで4~8週間、ブロック肉をじっくり熟成させる

ここ数年、都内を中心とした肉好きの間でおいしさがささやかれ、一般にも徐々に広がってきた「熟成肉」。まだご存じない方も多いと思うが、長時間生肉を寝かせて"熟成"させ、おいしさをアップさせた肉のことである。寝かせる期間は何日単位ではなく、何十日や何カ月単位にわたる。

長期間熟成させることで、肉は一体どうなるのだろうか。一般的には酵素の働きで肉のタンパク質が分解されて旨み成分のアミノ酸に変わり、余分な水分が出て味や風味が凝縮されるといった効果が見込まれている。

店内に専用の熟成庫を持ち、自家製の熟成肉をリーズナブルな価格で提供して人気の東京・中野「肉食系ビストロTsui-teru! (ツイテル)」では、熟成を次のように定義している。「肉自体が元来持っている酵素と、外側から肉に付着した微生物(カビ・酵母)の酵素というダブルの酵素で、肉のたんぱく質を内側・外側の両方から分解。旨み成分のアミノ酸に変えると共に、肉の細胞壁を分解させて、食材を柔らかくする方法」。

カビや酵母に覆われながら熟成が進む

温度や湿度、風、微生物をコントロールした熟成庫の中で、4~8週間じっくりブロック状の生肉を寝かせる。熟成期間中、肉の表面はカビや酵母にびっしりと覆われるが、それにより腐敗菌等の雑菌の繁殖を妨げるため、腐敗は進まず、ゆっくりと旨みを増していくという。熟成が完了すると、周りのカビと酵母の部分を大胆にトリミング(削り取り)し、提供する。

牛赤身肉を主体に熟成。表面の酵母やカビが肉をおいしくさせる。表面部分はしっかりトリミングするので、酵母やカビが口に入ることはない

熟成により乾燥も進むため、トリミングも含めてロス率は40%に及ぶ。そのため高価格の店が多い中、同店は店舗内に熟成庫を設けて自店で熟成することで、リーズナブルな価格設定を可能にしている。200gの「熟成肉の炭焼きステーキ」は1,554円で提供し、「熟成肉って何? 」という一般のお客からも好評を得ているのだ。ちなみに都内の他店を見てみると、この価格の2、3倍程度の店が多い。

熟成肉200gを使った「熟成肉の炭焼きステーキ」(1,554円)。じっくり熟成された赤身肉は、甘いナッツのような香りで、ミルキーな旨みが特徴

同店では、主にホルスタイン等の赤身系の肉を熟成させて提供。「昨今の健康ブームもあり、脂身の少ない低脂肪で健康的なお肉をおいしくたくさん食べられると評判です。甘いナッツのような熟成香、ミルキーで余韻の長いおいしいお肉は今までにない味と、評価いただいております」(同店代表取締役・鈴木潤一氏)。

話題の熟成肉、そろそろ一度チャレンジしてみてはいかがだろうか。