Windows OS以外という選択肢

その一方で既存のコンピューターを使い続けるのであれば、Linuxに移行すると いう選択肢も現実的だろう。メジャーLinuxディストリビューションの一つUbuntu(ウブントゥ)とLibreOffice(リブレオフィス)の組み合わせなら、追加出費を避けてWindows XP時代と"ほぼ同じ"実行環境を得ることができる(図07)。

図07 Ubuntu(Linux)にも、Officeスイートは用意されているため、書類作成や表計算は実行可能

ただし、Windows OS向けアプリケーションは基本的に動作しないため、異なるアプリケーションの操作方法や、OSの使い方を一から学ばなければならない。Linux上のオープンソースプロジェクトのなかには、Windows OS向けアプリケーションを実行する「Wine on Windows」があるものの、コンピューター初心者がそのまま利用できるか、と言えば疑問が残る。Linuxは代替アプリケーションの種類も豊富だが、目的のアプリケーションを探し当てるまでには慣れも必要だ(図08)。

図08 Wineでは動作したアプリケーション(主にPCゲーム)の情報を公開している

一方で既存の周辺機器がそのまま使用できるかは、ケースバイケースと言わざるを得ない。Windows Vista以降にサポートを打ち切られた古いデバイスでも、デバイスドライバーが提供される場合もあれば、Windows 8時代のデバイスはそのままでは動作しないケースもある。

また、Linuxが低スペックのコンピューターでも安定動作するのは事実だが、UbuntuではUnity(ユニティ)というデスクトップ環境を採用しており、透過処理や描画演出のため、OpenGLが快適に動作するGPUを搭載していなければならない(ハードウェア的制限がある場合はソフトウェア実装のLLVMpipeが使用されるので、動作しないわけではない)。いずれにせよ、Windows XPからUbuntuへ移行する場合は一定以上の知識が必要となるため、コンピューター初心者にはハードルの高い選択肢となる。

本稿をご覧になる読者は対象にならないと思うが、コンピューター上の作業が電子メールの送受信やWebページの閲覧程度にとどまる場合は、タブレット型コンピューターに移行するという選択肢もあるだろう。iOSやAndroid OSを搭載したデバイスはアプリケーションも豊富なため、デジタルカメラで撮影した写真や動画を管理する程度なら、Windows XPマシンの代替に使えるのではないだろうか。

このようにWindows XPサポート終了後はいくつかの選択肢があるものの、以前と変わらない環境を欲する場合は、Windows 8が正しい選択肢であると筆者は考える。なお、組み込み用途向けエディションであるWindows XP Embeddedだが、メインストリームサポートは2011年1月11日で既に終了し、エクステンデッドサポートも2016年1月12日に終了する予定である。

約3年後の話だが、周囲を見渡すとWindows XP Embeddedを使用しているキオスク端末やATMシステム、POSデバイスなど意外に多い。Windows XP Embeddedのサポート終了は、今回の一件とは違うユーザー層で新たな混乱を招きそうだ。

阿久津良和(Cactus