2012年のスマホゲーム業界は『パズル&ドラゴンズ』、通称パズドラの話題でもちきりでした。かく言う筆者も『パズドラ』で遊んでいる一人です。そんな『パズドラ』がつい先日1,000万ダウンロードを達成したということで、2013年もしばらくは引き続き『パズドラ』がスマホゲーム業界を牽引していくことになりそうです。

昨年はパズドラの年だったといっても過言ではない

さらっと書きましたが、1,000万はすごい数字です。話題になっているから落としてみたもののすぐにやめてしまった人が半分いるとしても、プレーヤーの数は500万。これはコンソールでいうと『スーパーマリオ』や『ドラゴンクエスト』『モンスターハンター』クラスの大ヒットです。『パズドラ』はなぜここまでヒットしたのでしょうか。今回は、その理由について考えてみたいと思います。

『パズドラ』は純粋にゲームとしてよくできている

1,000万ダウンロードは途方もない数字です。アクティブ率はさておき、これだけのダウンロード数を達成するには、ゲーマーも非ゲーマーも取り込まなければ不可能です。ではどうして『パズドラ』は両者に受け入れられたのでしょうか。

当時はソーシャルゲームというと、非ゲーマーが暇つぶしにポチポチ遊ぶもので、ゲーマーにしてみれば内容は子供だましというイメージが強く、ゲーム性は低く見られがちでした。そして実際、ゲームとしてはさほど面白くないソーシャルゲームが多かったのも事実です。しかし、『パズドラ』はそれまでのソーシャルゲームに比べると、明らかにゲームとしてよくできていました。

『パズドラ』のベースになっているのは、スリーマッチパズルというジャンルのゲームです。これはかなり古典的なゲームで、パネルを移動して縦もしくは横に同じ色を3つそろえると消せるというルールが名前の由来になっています。

パネルを移動し同じ色を3つ以上消すと色に応じた属性のモンスターが敵に攻撃する

ダンジョンに潜り、モンスターを獲得したら成長させてパーティーを強化していくのが基本的な流れ

パネルを移動するという操作性ゆえにスマホとの相性がよかったスリーマッチパズルは、スマホ黎明期からアプリとしてリリースされ、数々の名作が生み出されました。手軽さとゲーム性をちょうどいい塩梅で両立していたからこそ、ゲーマー、非ゲーマーを問わず、スマホでゲームを遊ぶ層に広く行き渡っていたのです。

『パズドラ』はこのスリーマッチパズルをベースに、「時間内ならパネルを好きなだけ動かせる」という独自の要素を組み込んでルールを構築しています。言い方は悪いかもしれませんが、スマホで大ヒット作を何本も生み出した鉄板のゲームシステムを下敷きにして生まれたのが『パズドラ』というゲームなのです。

戦闘時のBGMは"イトケン節"が炸裂していて気持ちが高ぶる

一方でソーシャルゲームといえば当時はカードバトル全盛期で、カードを集めてバトルはボタンをポチポチと押すだけというシステムが一世を風靡していました。もしも『パズドラ』が純粋にソーシャルゲームとしてヒットを飛ばそうとしていたら、こちらを下敷きにしていたかもしれません。しかし、ガンホーはそうはしなかった。『パズドラ』は最初から"ゲーム性を持ったゲーム"として作られたのです。

その姿勢は、コンポーザーにイトケンこと伊藤賢治氏を起用したことからも見てとれます。伊藤氏は『サガ』『ロマンシング サ・ガ』シリーズなどで知られる著名な作曲家で、ゲーマーならまず間違いなく名前を聞いたことのあるビッグネームです。しかし、一般的にはさすがにそこまでの知名度はなく、彼を起用するということはゲーマーへのアピールにはなっても非ゲーマーへのアピールにはなりません。このことからも『パズドラ』がゲーマーを強く意識したタイトルであったことがわかります。

また、パネルの大きさ一つをとってみても指で動かすのにストレスのないギリギリの大きさで調整されていたり、モンスターの絵柄がすべてきちんと統一されていたりと、非常に丁寧に作られているのも好印象でした。

絵柄が統一されているのは重要な要素

さて、そうやってスタートした『パズドラ』ですが、単なるスリーマッチパズルではなく、いくつかの独自要素が組み込まれていました。一つは前述したように、「時間内ならパネルを好きなだけ動かせる」ようにしたこと。もう一つは、RPGの要素を持ち込んだことです。これがヒットの強い後押しになりました。

言うまでもありませんが、日本人はRPGが大好きです。キャラクターを成長させたり、アイテムをコレクションすることも大好きです。考えようによっては単なる作業でしかないレベル上げだって喜んで行います。努力を積み重ねて、数字という目に見える形で得られる達成感が大好きなのです。

つまり、『パズドラ』はもともとゲーマーの中でも高い人気を誇っていたスリーマッチパズルに、これまたゲーマーが大好きなRPGを組み合わせて作られたゲームであり、これでゲーマーに受け入れられなかったらむしろおかしいというくらいのアプリだったわけです。……続きを読む