ニコニコ生放送にて「ニコニコ『クリエイター奨励』新発表~現代の絵師が生計を立てるには?~」と題した番組が19日、放送された。番組内では2011年12月からスタートし現在も継続して行われている「クリエイター奨励プログラム」の利用状況の報告が行われ、現在までの総支払額が約3億円であること、1,000万円以上を受け取っているユーザーが3名いることなどが明らかにされた。
また、後半には漫画家の佐藤秀峰氏、イラストレーターの西又葵氏、岸田メル氏、「DLsite.com」の高原氏、「TINAMI」の篠田氏らを招いて「現代の絵師が生計を立てるには?」と題したトークセッションが行われている。
そもそも「クリエイター奨励プログラム」とは、クリエイターの創作活動とコラボレーションの発展・推進を図ることを目的に、niconicoのプレミアム会員収入の一部を原資として、投稿作品に対して奨励金を支払う制度のこと。奨励金額は作品の人気度で決定されるが、単純に再生数だけで見ているわけではなく、さまざまな点から金額を算出しているという。クリエイター奨励プログラム開始時には転載作品や工作活動などに対する懸念の声が寄せられていたが、ドワンゴ伴氏によれば、そうした問題にもきちんと対応しているとのことだ。
ユニークなのは、奨励対象となった作品が二次創作や三次創作作品であった場合、その作品の元となった"親作品"の作者にも奨励金が支払われる「子ども手当」制度。これまではニコニコ静画に投稿された作品は"動画の起源"になったときのみ奨励金の支払対象になっていたが、今後は作品が動画に使われなくても支払対象となることになった。
また、2011年12月から取り組みがスタートしたクリエイター奨励プログラムの現状報告が番組内で行われ、開始時からの1年間で奨励金を受け取ったユーザー数が3,973人、総支払額が3億336万8,632円であることが発表された。支払い額別の人数としては、1,000万円以上を受け取ったユーザーが3名、500万円~999万円を受け取ったユーザーが4名、100万円~499万円を受け取ったユーザーが56名となる。
今後は静画にも対応したことでさらに奨励対象となる作品が増加すると見られており、そのため原則的には個々の作品への分配額は減少することになるが、試算ではすぐに大きな影響が出るほどではないとのことだ。
ニコニコ動画に作品を投稿することで生活できるだけの収入を得ているユーザーがいることにニコニコ生放送視聴者からは驚きの声も上がっていたが、しかし一般的にはクリエイターが創作活動で生計を立てるというのはそう簡単なことではない。
番組後半では、そうしたクリエイター、特にイラストを描いている"絵師"が生計を立てるにはどうすればいいのかというテーマについてのトークセッションが行われた。
出演したのは、MCを務めたまつもとあつし、ドワンゴ伴氏のほかに、漫画家の佐藤秀峰氏、イラストレーターの西又葵氏、岸田メル氏、同人誌や同人ゲームなどの販売を行う「DLsite.com」の高原氏、ユーザーが作品を投稿して交流する「TINAMI」の篠田氏の計7名である。最初のテーマは、「"儲かる"と"儲からない"の分かれ道」について。インターネットが普及したことで作品を発表する場は大きく増えたが、だからといって絵師が生計を立てやすくなったのかというとそういうわけでもない。
ホームページがイラストレーターデビューのきっかけだったという岸田メル氏は、「ネットで絵を発表している人で、売っていこうと意識している人は少ないと思う」と述べ、「例えばpixivで人気があるのに、プロデビューするとお金にならないという話はよく聞く。単純にネットで有名になれば商業デビューしたときの反応も大きくなるので、作品を発表することはいいのだけど、人気が直接お金になるかというとそうではない」と現状を分析する。
では、なぜSNS等での人気が"お金"につながらないのか。「TINAMI」の篠田氏によると、「SNSでの人気というのは作品の評価というよりも一種のコミュニケーション」であり、それをまず理解する必要があるのだという。ただし、ネットにアップするイラストは作家としてのポートフォリオとして機能するため、作品をアップしておくこと自体は重要であると解説する。……続きを読む