米AMDは、2013 International CESの開幕前日となる1月7日に、同イベントのメイン会場となるLas Vegas Convention Center(LVCC)内の特設ブースにおいて記者発表会を開催し、2013年のクライアント向け製品戦略を明らかにした。

同社でグローバル・ビジネス・ユニットを統括するLisa Su上級副社長は、2013年を「サラウンド・コンピューティング元年」と位置づける。このサラウンド・コンピューティングとは、昨年、同社のMark Papemaster CTOが提唱した、あらゆる場所(サラウンド)にコンピューティングが溶け込み、コンピュータや情報デバイスと人間が、より自然な連係が図れるようになることだと言う。これを実現するためには、クラウドを支えるデータセンターだけでなく、クライアント側にも、より自然なユーザーインタフェースを実現するための膨大なコンピューティングパワーが必要となる。

2013年は、サラウンド・コンピューティング時代の幕開けだと宣言するLisa Su上級副社長

2013年のコンシューマ向け製品戦略の中心は、第2世代のGCNアーキテクチャ採用GPUと、次世代APU群だと説明

Richlandコアを次期AMD A10および同A8として市場投入

具体的には、サラウンド・コンピューティング時代には、音声やジェスチャー認識、顔認証といった、より直感的かつ自然なユーザーインタフェースを実現することで、コンピュータや情報端末を、さらに身近なものになると言う。しかし、このような自然なユーザー体験を可能にするためには、より強力な演算能力が必要となる。そこで、同社はグラフィックスコアの持つ優れた並列演算処理性能を活かせるAPU(Accelerated Processing Unit)が実現するヘテロジニアス・コンピューティングこそが、新時代のコンピューティング環境を構築できるとしており、Su氏はこのサラウンド・コンピューティングを実現するために、2013年は、強力な製品を数多く市場に提供していくと宣言。同社の優れたグラフィックスコアを統合した新しいAPUやSoCが、新しいユーザー体験をコンシューマ市場に提供する上で中核的な役割を担っていくという見方を示した。

AMDが考えるサラウンド・コンピューティングの例。ジェスチャー認識でPCを操作したり、テレビや携帯端末などとPCの画面を共有したり、顔認証やジェスチャー認識でタブレットPCを操作できるようになると言う

そこでSu氏は、2013年のAPU強化の第1弾として、現行のAMD Aシリーズ"Trinity"(トリニティ)の強化版にあたり、20~40%のパフォーマンス向上を果たす次期AMD Aシリーズ"Richland"(リッチランド:開発コードネーム)の顧客向け出荷をすでに開始しており、今年前半に搭載製品が市場投入させることになるとアナウンス。今後登場する予定の製品として、ASUSTeK Computerが開発中の「U38 Ultrathin」やHewlett-Packardの「HP Pavilion TouchSmart Sleekbook」などが披露された。

Trinityの強化版という位置づけになるRichlandだが、20~40%の性能向上が望めると言う

Richlandを搭載するASUSTeK Computerの「U38 Ultrathin」

Richlandを搭載するHewlett-Packardの「HP Pavilion TouchSmart Sleekbook」

Richlandは、Trinityと同じ32nmプロセスで製造されるが、動作クロックが高いモデルが採れやすいように製造プロセスや選別工程などが見直されたもので、BrazosとBrazos 2.0の関係に近いもののようだ。AMDは、このRichlandコアを次期AMD A10および同A8として市場投入するとともに、サラウンド・コンピューティングを実現すべく、顔認証ソフトの「AMD Face Login」やジェスチャー認識の「AMD Gesture Control」などのソフトをバンドル。さらに、PCの画面をスマートテレビや携帯端末でも共有できる「AMD Screen Mirror」も提供され、APUが持つ演算処理性能の高さを、タブレットPCなどでも共有できる環境を提供したい考えだ。

Richland搭載PCには、、顔認証ソフトの「AMD Face Login」やジェスチャー認識の「AMD Gesture Control」などのソフトをバンドルされると言う

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