Wi-Fiアライアンス(WFA)は9月20日、東京都内で「Wi-Fiアライアンス メディアブリーフィング 2012 Autumn」を開催し、動画コンテンツのワイヤレス伝送に関する認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」の詳細や今後の展開について説明した。

「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」は、デバイス間で動画コンテンツをワイヤレス伝送するための認定プログラム

Wi-Fiアライアンスは、無線LAN製品の普及促進を目的にしたグローバルな非営利団体で、業界大手の数百社を中心に構成。Wi-Fiに関する技術開発、マーケット構築、規制プログラムの策定などを行っている。今回のブリーフィングでは、Wi-Fiアライアンスのマーケティング・ディレクター、ケリー・デイヴィス フェルナー氏から説明が行われた。

Wi-Fiアライアンスのマーケティング・ディレクター、ケリー・デイヴィス フェルナー氏(写真左)。Wi-Fiアライアンスは世界500社以上のメンバー企業で構成される(写真右)

Wi-Fiアライアンスの概要と背景

スマートフォンの普及拡大に伴い、映像コンテンツなどを近くの機器へ無線で飛ばす技術の開発・実用化が各メーカー間で進んでいる。その中で、無線LAN技術をベースにした伝送方式が注目を集めているという。「Wi-FiはノートPC、スマートフォン、電子書籍、テレビなどあらゆる家電機器に選ばれる技術に成長しました」とケリー氏。グローバルでは、Wi-Fi搭載機器の出荷実績は2011年度だけで10億ユニットを超えた。ホームネットワークの数は4億以上に拡大しているという。

2011年、Wi-Fiを搭載する機器の数は10億を超えたと見られる。ホームネットワークの数は今後4年間で8億に到達する見込み(写真右)

家電製品の様々なカテゴリの中で、Wi-Fiの普及率が伸びてきている。Wi-Fi対応のホームデバイスの出荷実績は、年間28%で成長しているという。加えて、オンライン上の動画コンテンツを楽しむユーザーも、年々増加の傾向にある。2011年、日本国内でスマートフォンから動画を視聴したユーザーは1,225万人にのぼった。2012年の成長率は181%にもなる見込みだ。また、全世界のYouTube視聴時間は毎月40億時間だという。こうした世界的な傾向の中で、Wi-Fi技術の存在感が一層きわ立ってきている。

Wi-Fiの搭載率が100%に達する家電製品も増えてきた(写真左)。動画コンテンツをスマートフォンで視聴するユーザーは年々増加の傾向

映像を圧縮して送る技術・規格が複数存在する中、Wi-Fiアライアンスは、ユーザーが最新のセキュリティを利用して各種機器に映像コンテンツを伝送できるプログラム、「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」(以下、Miracast)を開発した。Miracast認定デバイスでは、他デバイスの検出とセットアップをシンプルに実行し、デバイス間でコンテンツをスピーディーに共有できるようになるという。ケリー氏は「Miracastほど私たちのビジョンを体現しているものはありません」と普及拡大に期待を寄せる。

既存のソリューションはセットアップして利用するまでに、知識や経験、時間などいくつもの障壁を乗り越える必要があった。Miracastが実現すれば、真にシームレスな環境の構築が可能になるとのこと

Wi-Fi CERTIFIED Miracastの詳細

Miracast認定デバイスでは、例えばスマートフォンから大画面のテレビへ映像を出力したり、会議室のプロジェクタでノートPCの画面をリアルタイム出力したり、テレビの放送をタブレットで視聴したり、といった利用方法が可能になる。Miracastブランドを有する製品であれば、異なるメーカー間であっても簡単に相互接続できる。

これにより、自宅やオフィスなどあらゆる場所でワイヤレス接続を実現。アクセスポイントがなくても、デバイス同士を無線LANで接続可能な「Wi-Fi CERTIFIED Wi-Fi Direct」によって接続が確立されるので、利用環境にWi-Fiネットワークは必要ない。接続の仕組みはMiracast認定デバイス自体に内蔵される仕組みだ。

スマートフォンの動画をテレビで楽しんだり、ノートPCの画面を会議室のプロジェクタでリアルタイムに共有したりといった利用が可能

Miracastは保護されているコンテンツのストリーミングをサポートするので、長編映画やコピーガードされている素材でも、任意のデバイス上で視聴できるという特徴を持つ。また、どんなタイプのデバイスでもMiracast認証の対象になるため、ユーザーは同一の環境で幅広いベンダーの製品を利用できるようになる。2016年にはMiracastデバイスの出荷実績は15億を超える見込みだという。ケリー氏は「マルチメディアを接続する上で、多くの利益をもたらす技術です」と力を込めて強調した。

Miracast認定デバイスでは最新のWPA2セキュリティが自動的に有効化される

現在、各ベンダーにおいてMiracast認定試験が開始されている。製品には、LGのOptimus G、SamsungのGALAXY S IIIなど、最新スマートフォンも含まれているという。Wi-Fiアライアンスに認定されたデバイスのみが「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」の表示を認められるとのことだ。

ケリー氏は最後に、業界の反応を紹介した。ソニーモバイルコミュニケーションズのニコラウスシェレル氏は「Wi-FiアライアンスのMiracastプログラムをサポートできることを嬉しく思います。これからも新しくエキサイティングなユーザーエクスペリエンスを提供できるよう努めていきたいと思います」、インテルのジョー・ヴァン・デ・ウォーター氏は「ユーザーが求めている環境、それは間違いなく自宅や職場、学校、外出先など、あらゆる場所でコンテンツとアプリケーションを利用できる環境です。今回、当社のWiDi(編注:インテルワイヤレス・ディスプレイ)が、初のWi-Fi CERTIFIED Miracast認定ソリューションの1つになれたことを大変嬉しく思います」などのコメントを寄せている。

現在、各ベンダーにおいて認定試験が開始されている(写真左)。最後に業界の反応も紹介された

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