9月5日、ニコニコ生放送にて「メルマガの未来~ネットはオープンorクローズ? どちらにすすんでいくのか?」と題したディスカッションが行われた。

出演したのは元・株式会社はてな執行役員最高技術責任者(CTO)のnaoyaこと伊藤直也氏、株式会社ドワンゴ代表取締役会長・川上量生氏、まぐまぐの創始者であり現在は有限会社未来検索ブラジル代表取締役としてガジェット通信を運営する深水英一郎氏、株式会社夜間飛行 メルマガ配信サービス「夜間飛行」を運営する株式会社夜間飛行代表取締役社長・井之上達矢氏の4名である。

左から川上氏、伊藤氏、深水氏、井之上氏

事の発端は、伊藤直也氏が昨今の有料メルマガブームについて次のような発言をtwitterで行ったことだった。

「アルファブロガーとか言われてた人のメルマガって、一線退いた芸能人のその後のディナーショーみたいなもんでしょ? 嫌すぎるよねw」

伊藤氏の発言は大きな反響を呼び、有料メルマガに関する議論が巻き起こった。そこで企画されたのが、今回のディスカッション番組というわけだ。

メルマガの未来~ネットはオープンorクローズ? どちらにすすんでいくのか?

そもそもなぜ伊藤氏はメルマガに対して上記のような思いを抱いたのか。きっかけとなったのは、「昨年くらいからアルファブロガー(多くの読者を抱え、強い発言力と影響力を持つ著名ブロガー)と呼ばれる人たちが、メルマガを始めた」ことだった。

伊藤氏:「なぜこのタイミングでメルマガなのか。堀江さん(ライブドア創業者・堀江貴文氏)がメルマガで人を集めて、メルマガは儲かると言われた時からは時間が経っているし、(メルマガを始めたアルファブロガーの)皆さんは今さらお金が目的でメルマガを始めたとも思えない」

有料メルマガに疑問を投げかける伊藤氏

さらに伊藤氏は、映画評論家・町山智浩氏による「(メルマガのような)閉じた情報サーキットを作るとどうしてもカルト化する」という発言に同意し、「アルファブロガーは『メルマガじゃないと書けないことがある』と言うが、それはブログだと批判されるからということではないのか。それは言論と呼べるのか」と改めてメルマガに対して疑問を投げかけた。(※「有料メルマガをやりたそうな町山智浩さんに、津田大介さんらがアドバイス」のtogetterまとめはこちら)

この意見にメルマガ配信サービス「夜間飛行」を運営する井之上氏は次のように反論する。

井之上氏:「メルマガだからカルトになるわけではない。(メルマガのような)システムがカルトを呼ぶという意味では、紙の本だって閉じている。紙がメルマガと違うのは編集者がついているということ。カルトな本をカルト向けに出していればお客さんも怖いとは思わないが、それを一般向けに売ろうとすると編集者がストップをかける。編集者と著者に対話があって、それをもとにコンテンツを外に出すというのは、今まであまり議論されてこなかったが、すごく大事な構造。『夜間飛行』では全員に編集者がついている」

カルト化を防ぐのに重要なのはシステムではなく、内容をチェックし著者と対話する"編集者の有無"であると語る井之上氏だが、これにドワンゴ会長・川上氏は反対意見を述べる。

川上氏:「編集を入れずにメルマガを出すとカルト的な方向に進むという意見には、二つの点で反対する。一つ、ネットの人はマナーや価値観を押し付けようとするが、(コンテンツの内容は)カルト的でバラバラな方が面白い。二つ、ネットの集合知からくる批判によって言論の質は下がる。ネットの意見の方が基本的に頭が悪く、文字の間違いや足し算くらいはできても、少し難しい内容になるとわからない。空気を読んで、正しいことを言ってそうな人を判断しているだけ。そんなのは知性ではない。賢い人が揚げ足取りをされることで賢いことを書かなくなってきているのがこの10年だ」

川上氏は以前、とあるブログで実際に批判を恐れて言論の質が下がる場面を目にしたのだという。

川上氏:「僕じゃなくてkawangoさんっていうブロガーさんがいるんだけど、彼は炎上しないように一生懸命に記事を書いている。以前、彼は『モテキ』と『あの花』について記事を書いたのだが、『あの花』を批判すると相当荒れるだろうなと思った。そうしたら『あの花』を批判するつもりが、できあがった記事は『あの花』賛美の内容になっていた。書いている内容がカルト化してゆがむのは、オープンな場での言論。言論の質を上げようと思ったら、むしろクローズにした方がいい」……続きを読む