「愛知県の魚」とは? 実はクルマエビなのだ。「魚じゃないのでは?」というツッコミはおいといて、名古屋人および愛知県民が元来エビ好きなことは間違いない。さらに近県、三重県の魚はイセエビだったりする。
エビフライが名古屋名物というのは、「タモリ氏が広めた(エビフリャ~!)」というのが定説。そこに便乗し、後付けした感が強い。でも名古屋人がエビ好きというのは間違っていない。実際、名古屋市内のレストランには「名古屋名物エビフライ定食」やら「エビフライサンド」があふれている。
そんな中、純粋にエビフライLoversに支持されている店が、千種区にある「キッチン欧味」だ。
「なんじゃこりゃー!?」と叫びたくなるほどのデカさ!
欧味のエビフライは通常、3段階の大きさに分けられる。普通サイズはまぁいいとして、ジャンボは長さ25センチもある。それだけでもすごいのに、ジャンボ&ジャンボ(店呼称はジャジャンボ!)は何と長さ30センチもあるのだ! 聞けば、使われているエビは天然のブラックタイガーだという。そんなに大きなブラックタイガーが存在していることもちょっとした恐怖。して、その味ってどんなもんなのよ? と疑問を抱きつつ、現場に潜入してみた。
衣を付ける前のブラックタイガーを見せてもらう。当たり前だが、この時点で「な、長い……!」と、絶句。これに衣を付けて、カリッと焼きあげるのだが「うまく筋切りしないと、揚げている間に丸まっちゃうんですよ」という。
揚げ時間は数分、意外と早い印象だ。揚げ過ぎると当然、身は固くなる。そのあたりの見極めはさすが、長年エビフライを揚げてきただけのことはある。
あっと言う間に完成。長さをメジャーで測ってみよう。28、29……ジャスト30センチ! すげええ。看板に偽りなしだということを確認した。
ただのデカ盛りメニューとあなどることなかれ
では、実食に移ろう。まず、大き過ぎて箸でつかみにくい!(笑) しかしご安心を。店に頼めば、ちゃんとカットしてくれる。口に頰張ると、サックリした衣の中にエビさんが登場。プリップリの食感が、エビ好きにはたまらない。ずーっと口の中にエビがあふれている幸福感を堪能できる。そのボリュームに圧倒されつつも、自慢のタルタルソースはあっさり風味で、これならドンドン食べられる。そのヒミツは、油にあるようだ。
ジャンボサイズだからこそヘルシーに、と揚げ油にはラードではなく植物性油脂を使用。タルタルソースには綿実油を使っている。サクサク感を出すために、パン粉は通常よりも粗めにしているそうだ。ただのネタメニューでないのは、「好きな人は尻尾まで食べるよ」という店主・大野稔さんの言葉が物語っている。この香ばしさがたまらない!
今でこそ店名物の「ジャンボエビフライ」。そのきっかけは15年前、問屋で売れ残っていた大きなエビを引き取ったことだという。余り物や残り物、まかないからスタートするのは、手羽先や台湾ラーメンなど名古屋グルメの定石だ。しかし近年は、大型のブラックタイガーの出回る量が少なくなっているようで、それが悩みの種だという。
実は長さ30センチの「ジャジャンボ」の上に、さらに大きな長さ33センチ以上の「メガジャンボ」もあるらしい。これはもはや品薄で、幻のメニューになりつつあるとか……。「一体いつ食べられるんだと、お客さんにも怒らるんですよねぇ」と、大野さんは頭をかく。33センチを要求する客とは一体どんな客なのだろうか……。いずれにしろ、タイミングよく食べられた人は超ラッキーだ。
ジャンボエビフライは大人のお子様ランチなのだ
実は大野さん、エビフライには特別な思いがあるのだとか。「昔、遊園地で食べたお子様ランチが忘れられないんですよ」と。そういえば欧味のメニューを見ると、ナポリタンや目玉焼き、ミックスベジタブル、ポテトと、つけ合せがどことなくお子様ランチっぽい。
「僕は昔、お子様ランチのエビフライが大きいと、すごくうれしかった。だから大人になって、おなかいっぱいエビフライを食べれるって幸せだよね」と、大野さんはニコニコ笑顔を振りまく。その笑顔で謎が解けた気がした。
エビフライはただの名古屋名物じゃない。かつて子どもだった大人たちの、夢が詰まっているごちそうなのだ。大人よ、来たれ名古屋へ! 子ども時代の思い出に浸りながら、エビフライを「大人食い」しようではないか!!
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