ゴールデンウィークがスタートした直後の4月29日未明、群馬県の関越自動車道藤岡ジャンクション付近で高速ツアーバスが道路側壁に衝突し、乗客7名が死亡、多数の重傷者を出した。この事故の報道で、改めて高速ツアーバスの安全性、労務環境が問題となっている。ツアーバスの安全管理はどのように行われているのだろうか。
急成長する高速ツアーバスとは
高速ツアーバスとは、企画旅行商品の形態をとった貸切バスツアーである。そのルーツはスキーバスやディズニーランドツアーと言われており、旅行会社がツアー参加者を募集し、貸切バスを仕立てて運行した。2000年以降に貸し切りバス事業が免許制から許可制へ緩和されると、都市を目的地とする貸切バス旅行が大幅に増えた。目的地が都市であるため、従来の都市間高速路線バスとほぼ同じルート、時間帯となった。
高速路線バスは路線の届出申請が必要で、運賃も30日前に届け出なくてはいけない。また、公共交通という前提のため定期運行が原則で、乗客が少なくても運行する必要があり、停留所の設置義務もある。
これに対し、高速ツアーバスは単発の募集型旅行という形態をとっているため、路線の届け出は不要、運賃も自在に設定できる。ただし、団体貸切バスのため、路線バス向けに作られた停留所には乗り入れできない。したがって路上や民間駐車場などを集合場所としている。
ツアーバスは路線バスに比べると路線設定や価格の自由度が高く、低価格を設定できる。例えば、関越道で事故を起こしたツアーの場合、石川発東京ディズニーリゾート行きのバスで、料金(旅行代金)は3,500円から。バスの定員は2+2席×11列で45名(最後部5列)。補助席を使えば55名の参加が可能だった。これに対して高速路線バスは、同一路線ではないが3列シートで運賃は7,340円と倍以上、低価格タイプの4列シートタイプでも5,000円でほぼ1.5倍となる(JRバス石川 - 東京で割引無しのケース)。
ツアーバスの利用者の増加と合わせて、ツアーバスを実施する会社は急増している。2008年10月に結成された業界団体「高速ツアーバス連絡協議会」によると、加盟会社は89社で、内訳は企画実施会社が38、運行会社が38、その他(販売ポータルサイト運営・現地受付業務など)13となっている。4月29日に事故を起こしたバスについては、募集会社は同協議会に加盟していた。しかし、運行会社は非加盟だった。
ツアーバスと路線バスの主な違い | ||
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ツアーバス | 路線バス | |
運行形態 | 貸切バス(募集型団体旅行) | 乗合バス |
監督省庁 | "募集会社:国土交通省(観光庁) | 運行会社:国土交通省(貸切バス) 国土交通省(路線バス) |
関連法令 | 募集会社:旅行業法 運行会社:道路運送法(貸切バス) |
道路運送法(路線バス) |
運営会社の届出 | 募集会社:第一種・第二種旅行業者 (登録制) |
一般乗合旅客自動車運送事業 (許可制) |
路線の設置 | 届出不要 | 届出義務あり |
運行義務 | なし(乗客なしでツアー取りやめ) | あり(乗客なしでも運行) |
停留所設置義務 | なし(路上や民間駐車場を使用) | あり |
運賃の設定 | 届出不要 | 国土交通大臣へ 上限運賃の認可申請が必要 |
運賃の変更(値下げなど) | 届出不要 | 地方運輸局への届出が必要 (30日前まで) |
運賃の支払 | 運転士への支払いは不可(事前払込) | 運転士へ支払い可能 |
行き先の表示 | 不可(ツアー名称を掲出) | 可 |