──英会話を勉強するにあたって、別所さんがまずアドバイスしたいポイントがあれば教えてください

別所 : 前回お話しした「朝時間を有効活用して、毎日短時間でもいいからコツコツと続けること」という話題にも繋がってくるのですが、最初はとにかく四の五の言わずに英語に触れることが大事だと思います。毎日、短い時間でもいいから英語を聞き、自分の思っていることを英語にして話す、という練習を続けてみる。このあたり、スポーツと一緒かもしれません。僕は高校時代、バレーボール部だったのですが、たとえばレシーブを100本、1,000本と受け続けていれば、いろいろなボールの受け方とか力の抜き方を身体が覚えてくれる──そんな経験をしました。語学もそれに似たところがあって、何度も何度も聞いて、口にして身につけるしかない。母国語である日本語とは異質な、第二言語として英語を覚えようとしているのですから、やはりある程度の努力が必要になってくるでしょう。

──努力、やはりしなきゃいけませんか……

別所 : ええ。とはいえ、そんなに大仰に構える必要もありません。「これまで漫然と聞き流していた英語だけど、ちゃんとリスニングして意味を捉えるようにしてみよう」「いまの日本語の表現、英語だと何て言うんだろう」といったことを、日常的に少し意識してみるだけで、英語の理解力が大きく変わってきます。そして朝活の5分、10分、15分なんて短い時間でも構わないから英語に集中する時間を持つよう、毎日コツコツと努力を続ける。ほんのちょっとの意識と、ほんのちょっとの努力。それを心がけるだけで全然違うと思いますね。

これも日本人の悪いクセなのかもしれませんが、英語を文法中心に捉えてしまうところがあって、それで喋れなくなってしまう。いや、もちろん構文やイディオムは大切だし、受験英語も英会話をするうえで非常に役立つところはあります。ただ、文法を過度に意識しすぎてしまうと、結局、僕らは英語が喋れなくなってしまうんですよ。「あれ、いまの言い回し、文法的にヘンだったかもしれない」「この場合、アクセントってドコに置けばよかったんだっけ」みたいなことをいちいち気にしていたら、ドツボにハマります。話す前にいちいち構文を考えて「この文型はSVOCだから……」「関係代名詞は? 前置詞は? どうなるんだっけ?」なんてあたふたしていたら、誰だって会話なんてできません。実際、外国語として英語を喋っている他国の人たちを見ても、そんなことをいちいち気にしている様子はありませんから。

──理屈はさておき、とにかく喋れという感じでしょうか

別所 : いや、もちろん言語構造的に正しく英語が使えるに越したことはありませんよ。その前提を踏まえつつ、まずは多少ブロークンでもいいから臆することなく英語を使ってみる、という姿勢が大事。そうはいっても「この単語の複数形って何だっけ?」とついつい細かい部分を気にしてしまうのが日本人ですから(苦笑)。だからこそ、最初のうちは特に、細かいことは気にせずに喋るよう努めるわけです。別に「She does'nt understand.」ではなく「She didn't understand.」でも、最初はいいんです。伝わりますから、ぜんぜんOKです。時制や人称が一致しなくたって、前後の文脈や状況から理解してくれます。

もうひとつ付け加えるとしたら、一般的な英会話の練習でよくあるシチュエーション・スキット(場面設定された会話)にあまり縛られる必要はない、と僕は思います。それよりも、興味があったり必要に迫られたりする事柄から英語に触れるほうが覚えは早い。クルマ好きならクルマに関すること、釣りが好きなら釣りに関すること、ガーデニングが好きなら園芸に関することを切り口にして英語に親しむわけです。いまはインターネットでさまざまな動画や文章に手軽に触れられるのですから、趣味に関係するそれらの英語素材を活用しない手はありませんよ。


「会話って、相手の言わんとしていることを理解しよう、とお互いが意識することで成り立っているもの」「ブロークン・イングリッシュでも臆する必要はない。ただし、失礼な表現とか下品な言葉は絶対に使わない、相手に不愉快な思いをさせない、といった配慮を怠ってはダメ」と真摯に語っていた姿が印象的だった別所さん。他者への気配りや、相手に喜んでもらいたいという思い……そういった要素も、英語力向上には案外欠かせないのかもしれない。

【別所哲也 プロフィール】
慶應義塾大学法学部卒。90年、日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー。米国映画俳優組合(SAG)会員となる。以降、映画・TV・舞台等で幅広く活躍中。2010年4月、第1回岩谷時子奨励賞授賞。99年より、日本発の国際短篇映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰。2008年には、横浜みなとみらいに、国内初の映画祭連動型短編専門ブティックシアター、『ブリリア ショートショート シアター』をオープン。また、これまでの映画祭への取り組みから、文化庁長官表彰を受け、観光庁「VISIT JAPAN 大使」、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員に就任。公式ファンサイトはこちら

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