ジャパンネット銀行(JNB)が提供する、必要時にその都度"カード"を発行するサービス『ワンタイムデビット』。従来のデビットカードと異なり、プラスチック製のカードを発行しないため、カードの紛失や盗難の心配がないのが特徴だ。今回は、このサービスについて、同行マーケティング本部 商品企画部 決済商品グループの小谷卓氏に聞いた。

カード番号は"日本初"というワンタイム方式

個人口座向けの決済サービス「ワンタイムデビット」は、正式商品名が「JNBカードレスVisaデビット」。2010年の2月25日から提供が開始された。

同サービスは、世界中のVisaマークのあるネットショップ(一部を除く)で利用ができるネットショッピング専用のデビットカード。カード番号は"日本初"というワンタイム方式で、顧客が必要なときにだけ、その都度自分で発行して利用ができる。また、従来のデビットカードと異なり、プラスチック製のカードを発行しないため、カードの紛失や盗難の心配がない。

『ワンタイムデビット』利用の流れ

カード番号は、一度利用すると、他のネットショップでは利用ができなくなる。また、発行日から10日を経過するか、カード番号一覧から削除されると、同一のネットショップでも利用ができなくなる。

ワンタイムカード番号のため、万が一第三者にカード番号を知られてしまっても、悪用されるリスクが低いほか、カード番号を発行する都度に、カードの利用限度額を自分で設定できるため、必要最低限の金額でカード番号の発行ができ安心だ。

利用代金は、ジャパンネット銀行の口座から原則すぐに引き落とされる。入会審査やカードの発行が不要のため、ジャパンネット銀行の口座を持つ人なら、すぐに利用を開始できるのが特徴となっている。

海外サイトでの購入にJNB口座を利用でき、セキュリティが高いのが特徴

――「ワンタイムデビット」は、日本で唯一のサービスということですが、開発の経緯を教えてください。

開発が始まったのは、2007年です。もともとJNB(ジャパンネット銀行)というのがYahoo!オークションとか、公営競技経由での口座開設が圧倒的に多いんですけれども、利用シーンがある程度限定されていると。それをもうちょっと幅広く、JNBの口座をお客様にいかに使っていただくかということで、振込み感覚で使っていただけるものって何かないかと考えました。

ジャパンネット銀行 マーケティング本部 商品企画部 決済商品グループの小谷卓氏

その中で一つ出てきたのが、今までは日本国内でしか決済できなかったのが、Visaのマークがあれば、国内・海外関係なく世界で利用でき、JNBの口座で海外の支払いができれば、一つ新しく利用シーンが増えるのではないかと。

また、Yahoo!オークションをやられている方って、海外のeBayなどを使われている方が多い。そうなった時に何が心配かというと、やっぱりセキュリティだと。じゃあどうすればセキュリティを高くできるかということを試行錯誤して、3年を開発に費やしました。

――海外サイトでの購入にJNB口座を利用でき、さらにセキュリティが高いものを、と考えたわけですね。

もともとJNB口座を振り込み感覚で使ってもらえて、お客様にいかに手数料無料にする方法はないかということで、「ワンタイムデビット」では、クレジットカードの仕組みを使っているので、お店から手数料をいただき、お客様には無料でサービスを提供できるという点もあります。

振込みというと、お客様が手数料を支払うサービスになりますが、「ワンタイムデビット」ではビジネスモデルが逆転していて、お客様からは手数料をいただかないというビジネスモデルになります。クレジットカードと同じビジネスモデルということです。

――なるほど。そうした意味でも画期的ですね。

「ワンタイムデビット」の特徴をまとめますと、(1)カード番号使い切り、(2)審査不要のVisaカード、(3)年会費無料、ということになります。(1)の「カード番号使い切り」は、他社に模倣されない圧倒的な強みを持っているので、当社がセキュリティを重視する銀行という点が発揮されるシーンです。

また、(2)の「審査不要のVisaカード」については、改正割賦販売法により、クレジットカードを持ちにくくなっていて、カード会社がカードを発行しにくくなっているという時代背景も踏まえています。クレジットカードは、会社勤めの人などは持っているケースが多いですが、実は自営業の人などに対しては、収入に浮き沈みがあるということなどから、審査が厳しいという事実があります。お金はあるけれども、カードが持てないという方々に、「審査不要のVisaカード」という点がメリットがあると考えています。

せっかく海外から買い付けをしたいと思っても、クレジットカードの限度額を下げられてしまったとか、お金はあるんだけれども今決済できないなど、そういった方々も、「ワンタイムデビット」なら、審査なく安心して海外の支払いができるのです。

(3)の「年会費無料」ですが、年会費無料・手数料無料なのですが、1点だけ補足させていただきますと、海外決済の場合は、両替手数料というものを、「事務手数料」という形で、決済金額の2.94%を換算レートに乗せさせていただいています。これは我々だけではなく、他のクレジットカードのカードもすべて、率は異なりますが、海外決済の場合この手数料がついてきます。

毎月数千人というペースで入会者が増加

――サービス開始から約1年半たちますが、利用者の数はいかがでしょうか?

毎月数千人というペースで入会者が増えています。また、決済金額・件数とも、前月比10~15%増というペースで伸びています。

国内・海外の利用割合ですが、一般的なカード会社ですと、国内 : 海外がだいたい8 : 2といわれているのですが、「ワンタイムデビット」は、国内 : 海外の割合は7 : 3で、海外決済の割合が高くなっています。お客様に利用いただいている上位100サイトでみても、半分近くが海外サイトとなっています。

――海外サイトでの利用が多いというのは、狙い通りといえるのでしょうか?

そうですね。お客様の決済動向としては、オンラインゲームの利用であったり、商用利用の場合もあります。副業ということで、海外のアパレルブランドショップで買い付けて、日本国内で売るという人も多いです。

円高が続くというこのご時勢ですので、海外サイトでの購入ということを、皆さんやはり考えられるのだと思います。これまでは、海外サイトでの購入ということをあまりなさらなかった方も、「挑戦してみようかな」というお気持ちになるのではないでしょうか。

その場合、「ワンタイムデビット」はやはり1回で使い切りのカードですので、言葉が通じない国ですとか、いつも使っているカードに何かあると心配だという場合も、使いやすいカードといえ、精神的なハードルが低いと思います。

――御社の事業全体にとっての位置づけはいかがでしょうか?

金融商品というものはやはり相場に影響を受ける商品ですが、決済商品というのは相場に関係なく安定的に収益が得られるものですので、当行の健全性につながっていると思います。

――ありがとうございました。