『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』など、数々の名作を放ち、国内外から高い評価を受ける新海誠監督。そんな新海監督の最新作となる劇場アニメ『星を追う子ども』が、2011年5月7日より、シネマサンシャイン池袋・新宿バルト9ほかにて公開開始となる。
待望の劇場公開を目前に控える今回は、新海監督自らが語った作品の観どころなどを紹介しよう。
■劇場アニメ『星を追う子ども』ストーリー概要
ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄。その唄を忘れられない少女アスナは、地下世界アガルタから来たという少年シュンに出会う。2人は心を通わせるも、少年は突然姿を消してしまう。「もう一度あの人に会いたい」。そう願うアスナの前にシュンと瓜二つの少年シンと、妻との再会を切望しアガルタを探す教師モリサキが現れる。そこに開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る――
新海誠監督が語る『星を追う子ども』
――新海監督の最新作となる『星を追う子ども』がいよいよ5月7日より公開されますが、まずは公開を直前に控えた現在の率直な感想をお願いします
新海誠監督「毎回そうなのですが、作品を作り終わってから公開まで、大体ひと月ぐらい開いたりするので、やはり落ち着かないですね。実際にお客さんに観てもらうまでは自分たちがやってきたことがどのように評価されるかわからないので、とりあえずお酒とか飲んで過ごしています(笑)」
――早くお客さんに観てもらいたいという感じですか?
新海監督「それもありますが、観せたくないという気持ちも半分ぐらい……。もちろん手応えがあると思って作っているわけですし、作り終わっての達成感もありますが、こればっかりは開けてみないとわからないので、このまま観せずにおきたいような気もします(笑)」
――それでは作品についてお伺いしますが、『星を追う子ども』という作品の着想を得たのはいつ頃ですか?
新海監督「実際に着手したのは2年ぐらい前ですが、着想自体はずいぶん前になりますね。着想にはいくつかのきっかけがありますが、その中の大きなひとつは、子どもの頃に読んだ児童文学なんですよ。その本は、ピラミッドパワーに導かれて、子どもが地下世界に行くというお話で、地下世界アガルタもその本に出てきます。すごく好きな本だったのですが、実はその作者の方が途中で亡くなってしまっていて、未完のまま終っているんですよ。ただ、未完なんですけど、ほかの方が補足したエンディングがついている。それが子ども心に読みたいものと違うなって思っていたんですよ」
――新海監督としては、あまり納得のいく終わり方ではなかったのですか?
新海監督「そうなんですよ。その後しばらくは、本当はどういう話だったんだろうって考えていた時期があって、今回作品を作るにあたり、それを思い出したという感じですね。地下世界アガルタというのは、実際にある伝説なんですけど、初めて知ったのはその本でしたし、その本が映画制作のきっかけのひとつになっています。それに、映画作りが自分の仕事ですから(笑)」
――そろそろ作らないと(笑)
新海監督「そろそろ作らないとまずいというのもありましたし、あとは、自主制作からアニメーション作りを始めて、だんだんと自分たちで出来ることを先鋭化させてやってきたつもりだったんですよ。モノローグを使うとか、音楽とのシンクロとか、日常描写とか。それをある程度コントロールできたという手応えがあったのが前作の『秒速5センチメートル』なんですね。それで、一段落したかなという気持ちがあったので、次に作る作品は少し違う方向性のものにしようと思っていたんですよ。あと、『星を追う子ども』の脚本を書き始めた当時はロンドンに一年半ぐらい滞在していたのですが、そういった海外経験もあったので、日本的な前提条件みたいなもの、たとえば桜が咲くとか、学校が男女共学だとか、そういった前提条件とは少し違う文化圏の人にでも、単純に面白かったって言ってもらえるような作品を作りたいなという気持ちがありまして、そのあたりのいくつかの気持ちが固まって、今回の作品へと繋がっていくといった感じですね」