「いやあ、暑いですね」――。お決まりのそんな夏の挨拶も、今年はひときわ実感がこもっている。なにしろこの猛暑だ。うだるような暑さが、体力、思考、そしてやる気を根こそぎ奪っていく。増えるのは、ビールの本数ばかり……。暑さを言い訳にして、つい昼間からアルコールに手が伸びる。そんなダメ人間まっしぐらな自分が怖い、今日この頃。

"涼"を求めるのは、皆同じ。エアコンはもちろん、ビールやアイス業界の売り上げも軒並みアップ。お馴染みのロングセラー「ガリガリ君」にいたっては、過去最高の売れ行きで品薄状態が続いているほど。ようやく夏も後半戦にさしかかったというものの、気象庁の発表によると、どうやら残暑も厳しいそうだ。とはいえ、エアコン頼みの生活では、光熱費の明細を見るのが恐ろしい。さらには、エアコンによる身体の冷えすぎや室内外の温度差で「冷房病」を引き起こすことも。まだまだ続くこの暑さ、どう乗り切るか――。

首を冷やすと全身ひんやり。保冷剤入りバンダナがブーム

暑さ対策グッズは、なにも電化製品だけではない。今夏、売れまくっているのが、保冷剤や冷却ジェルを活用した"涼感グッズ"。特に、これまで主に食品の腐敗を防ぐために利用されていた"保冷剤"が、実用性とファッション性を兼ね備えた涼感グッズとして登場し、人気を呼んでいる。代表的なものが、首を冷やすバンダナやスカーフタイプの商品だ。

「しろくまのきもち」は15分ほど水にひたすだけで、吸水ポリマーが水を含んで膨らむ。表面の水分を軽くふき取り、首に付ければOK。医学的にも、首や脇の下を冷やすことは熱を下げるのに最も効果的だといわれている。凍らせるわけではないので、冷たすぎない清涼感が身体を包み、これがなかなか心地よい。バンダナタイプの商品にはオシャレな柄やデザインも多いので、ファッションのアクセントとしても通用しそうだ。もちろん日焼け防止にもなる。

ビッグウイング しろくまのきもち

また、アウトドアやスポーツシーンなら、シンプルな「MAGI COOL(マジクール)」もオススメだ。オフィス用として、会社にひとつ置いておくのもいいだろう。さらに、「アイスノン」シリーズには、おでこや首に巻いて利用できる「アイスノンベルト」や「首用アイスノン」も。ライフスタイルに合わせて選びたい。

白元 首用アイスノン

わざわざ商品を買わなくても、自宅にある保冷剤を活用させる手もある。肩かけバックやリュックサックのなかに、凍らせた保冷剤を忍ばせておけば、バッグを通じて背中や脇腹にひんやりとした感触が伝わってくる。うだるような暑さでも、せめて顔だけは涼しげに……そんなオンナゴコロも満たしてくれる。筆者もこの夏は保冷剤のおかげで、せっかく時間をかけた顔の塗装が流れ落ちる恐怖から開放された。子供のリュックに入れれば、熱中症の予防にもなる。

"冷却ジェルパッド寝具"で、NOエアコンライフ

寝苦しい熱帯夜を少しでも快適に過ごしたい――。そんなときに役立つのが、「冷却ジェル」の敷きパッドや枕用パッドだ。ジェルがほてった体の熱を吸い取り、熱を自然に発散するという仕組み。ただし涼感には個人差があり、筆者の周りでも「すぐにぬるくなる」という人もいれば、「冷えすぎて夜中にトイレに駆け込んだ」という人まで。「ひんやりジェルマット」や「熱さまひんやりジェルマット」など、多くのメーカーが発売しており、値段も3000円台から1万円を超えるものまでさまざまだ。寝具は、人にとって好みの硬さや感触がそれぞれ違うので、できれば一度手に触れて選ぶのが賢明だろう。

ヒラカワコーポレーション ひんやりジェルマット

もちろんこれらのグッズだけで猛暑を乗り切ることは難しいが、エアコンと組み合わせて上手に使うことで、設定温度を上げたり、使用量を抑えることはできる。財布はもとより、身体と地球にもやさしい「エコ涼み」で残暑を乗り切りたいものだ。

「ネクタイクーラー」に「男性用日傘」!? ユニークアイテムも売れ行き好調

会社勤めでも比較的服装が自由な女性と違い、男性はスーツにネクタイ着用がほとんど。なかなか服装で体温をコントロールすることは難しい。そんな外出がちなサラリーマンには、服の上から噴きかける「シャツクール」などの"冷却スプレー"が人気のようだ。シュッとひと拭きでクールダウンが完了。またデスクワークが多いなら、パソコンのUSBにつなげて使う「USBネクタイクーラー」なるユニーク商品も。見た目は普通のネクタイだが、シリコンネクタイの首もとにファンが内蔵されており、USBで回る仕組み。涼しさ云々よりも、なんだかパーティグッズのようで社内の人気者になりそうだ。すでに現在3代目のバージョンらしいから、実は隠れた人気商品!?

小林製薬 シャツクール

サンコー USBネクタイクーラー

さらに、新たなムーブメントも生まれつつある。スーツ姿ゆえ帽子をかぶるわけにもいかないサラリーマン。粋な紳士風になればいいが、『笑うセールスマン』になる可能性も高い。だからなのだろうか――。最近増えているのが、「男性用日傘」。ご年配の方の話かと思っていたら、20~40代の購入者も多いのだとか。オフィス街でおもむろに日傘をさすビジネスマンの姿が見られる日も近いのかもしれない。

PROFIL:西尾英子(にしおひでこ)

大学卒業後、ビジネス誌、男性誌の編集者を経て、フリーランスライターに。現在、女性誌やビジネス誌でのインタビューやルポ取材をはじめ、マネー誌や主婦誌で節約系の記事などを執筆している。著書に、『今度こそ貯金ができる方法』(共著・永岡書店)、『楽しい0円生活入門』(共著・主婦の友社)、『楽しい節約倹約100のコツ』(主婦の友社)などがある。