今では、Web制作の分野でも数多くのユーザーを獲得しているアドビ社だが、その歴史は意外にも新しい。しかし現在、アドビ社はFlash技術やAdobe AIRといったコンテンツ生成から配信、閲覧、Webアプリケーション開発環境を手掛けており、もはや、アドビ社は最新Webソリューションの先進を行くリーディングカンパニーであることは疑う余地もないだろう。

ここでは、アドビ社がWebの分野で大きな成果を上げたきっかけとなったアプリケーション、Adobe GoLiveを中心に、現在までの動向を紹介していこう。

Web分野に後れを取った90年代後半

Webページのデザインが個人にまで普及し始めた90年代後半、プログラミング言語であるHTMLを使わずともWebページを制作できるアプリケーションがさまざまなメーカーから発売されていた。

当時の日本で高い人気を持っていたのが日本IBMが開発した「ホームページビルダー」。初心者向けとして発売され、現在でも根強い人気を誇るWebオーサリングツールである。このホームページビルダーを例に挙げるまでもなく、当時のWebページ作りはWindows環境が中心。1997年に米GoLive Systemsが発売した「GoLive CyberStudio」やマクロメディアが98年に発売した「Dreamweaver」などによって、ようやくMac環境におけるWebオーサリングソフトウェアが一般的になった。

一方、アドビ社はというと他社同様にWebページ向け「PageMill」を販売していたとはいえ、その内容は初心者向け。プロユーザーが満足できる機能は搭載されておらず、クリエイティブ市場の中で大きく遅れを取ったと言えるだろう。

ところが1999年、アドビ社がGolove Systems社を買収し、自社ソフトとしての販売を開始すると徐々に状況が変化してくる。元々「GoLive CyberStudio」は、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopといったアドビのアプリケーションと親和性が高く、この点が多くのクリエイターに評価されていた。既存のユーザーからは驚きと期待、そして少しの不安の声も聞かれたが、「いよいよアドビ社が本格的にWeb業界に参入する」というきっかけになったことは間違いない。

アドビ社がリリースするアプリケーションとなった「GoLive CyberStudio」は、その名前を「Adobe GoLive」と変え、さらにWindows環境への対応も発表。2005年にマクロメディア社を買収するまで、アドビ社のWebクリエイター向けアプリケーションとして大きな役割を果たしてきた。

そしてFlash技術の時代へ

「Adobe GoLive」となってからはAdobe Creative Suiteにもパッケージされ、よりアドビ社のクリエイティブ製品との親和性と連携性を重視して開発されていたが、2005年にさらに状況は変化する。

マクロメディアを買収したことでWebオーサリングツールが2製品となり、徐々にDreamweaverへと重心が移ってきたのだ。結果として、Adobe Creative Suite 3でAdobe GoLiveに代わってDreamweaverがパッケージされ、2008年4月末に販売が終了された。

現在、アドビ社ではWebコンテンツフォーマットの軸としてFlash技術を挙げ、その普及に努めている。とくに期待されるのが、現在公開βテストが行われている「Adobe Flash Catalyst」だ。これはFlash開発ツールでありながらコーディングせずにFlash技術を扱えるというもの。Adobe Creative Suite 4と連携し、動的なアニメーション効果を付加したFlashアニメーションに変換できる。

プログラミングに弱いクリエイターと、デザイン力を求めるプログラマーの橋渡しを行う存在、そんなツールに成長するのかどうか、「Adobe Flash Catalyst」の動向にも注目したい。

「Adobe Flash Catalyst」は、Adobe Labsで入手可能。興味のある読者は公開β版を入手してみてはいかがだろうか。