【インタビュー】
室町末期の乱世の時代を舞台に、運命に翻弄されつつも力強く生きる男 多襄丸の姿を描いた映画『TAJOMARU』。芥川龍之介の『藪の中』をモチーフに、小栗旬主演で制作されたこの作品は、これまでにない異質な時代劇に仕上がっている。2月19日にDVDリリースされた『TAJOMARU』を監督した中野裕之に話を訊いた。
――これまで中野監督の作品に強く出ていた「ピース」ですとか、「あまり人が死なない時代劇」という部分が、今回『TAJOMARU』では大きく変わりました。
中野裕之監督(以下。中野)「今回は、プロの監督として映画を撮るという事に徹したんです。これまでの僕の作品はプロデューサーも兼ねていて、監督としては、あくまでも作家に近いスタンスでしたが、今回は"映画監督という仕事をする"という立ち位置でした。プロデューサーが求める作品を現実化するという意味で、CMの監督をするのに近いものがありました。フランス語では監督の事を現実化する人という意味の単語で表記することがあって、現実化する人こそを監督と呼ぶんです。そうじゃない人はアーティストなんですよ。そういう意味で僕の作品を分類すると、アーティストとして取り組んだのが『Stereo Future』、映画監督をやりたいけど半分以上アーティストとして臨んでしまったのが『SF サムライ・フィクション』、『RED SHADOW 赤影』では、まだ自分の我があって監督になりきれていなかったという感じですね。『TAJOMARU』では、プロデューサーの頭の中を現実化するという作業に徹しました」
――映画に関して、そういう職人的な取り組みを初めてされていかがでしたか?
中野「条件が悪いから、正直燃えました(笑)。人が何人死ぬどころか、どんな話かも知らないまま仕事を引き受けましたから。撮影期間も短いし、脚本も大きく変えられない。そういう状況の中で、自分がオーダー通りに撮影した後、プロデューサーがどうリミックスするのか楽しみな部分もありました」
――本当に今回は職人的なスタンスだったんですね。
中野「CMの仕事に近い印象ですね。悪い意味でなく、そういう意識で仕事に徹すると、また良い仕事ができるものなんですよ。自分の主張を強くするだけではなく、効率よく良い素材(映像)を限られた条件の中でオーダーに応じて撮るということが大切でした」
――そういう映画の作り方で、なにか得るものはありましたか?
中野「映画を何本も作ってるようなプロデューサーとしっかりと組んで、それがクリエイティブにも干渉してくるという現場でやった経験がなかったから、本当に楽しかったし目から鱗でしたよ。『このやり方なら、僕でも年に2、3本は映画撮れる』と思いましたし。組む相手にもよりますが、こういうスタイルに抵抗感はありません。とにかく、『ないよりはマシ』というのが僕の座右の銘なんで。映画制作、撮影の場所に居て、成立しないことには、意味がないですから」
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室町末期、名門・畠山家の次男・直光(小栗旬)と兄の信綱(池内博之)は、将軍に「大納言家の阿古姫と結婚して、その財宝を継いだ者を管領とする」と命じられる。許婚だった阿古姫(柴本幸)、兄の信綱、家臣・桜丸(田中圭)、それぞれの裏切りにより全てを失った直光は、盗賊・多襄丸として生きるのだが…… |
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――監督として、これまでにないような取り組み方でも、中野監督らしさという部分で、意識されたところはあるのですか?
中野「意識というか、出来上がった作品を観て、とにかく『日本人なんだなあ』と思いましたね。この映画の物語にしても、直光が最初にお寺で、ちゃんと許婚に事情を説明していれば、このドラマは生まれないし、映画にはなっていなかったんですよ。それをちゃんと言わないという部分が、日本人らしいと思いました。言えないのも、言わないのも日本人。全て言わないのが日本人だし、日本映画だと思いました」
――そういう日本人的な部分は監督もやはりお好きなんですね。
中野「僕が好きなのは大映や松竹の昭和の日本映画。濃い感じというか、人の想いがしっかりある作品が好きですね。そういう昔の作品で描かれていた事に、『TAJOMARU』と同じような、家システムゆえのメンタリティというか、次男の悲しみがあった。長男に対して次男の存在自体が軽んじられていたという事、そこから生じる悲しみが存在したんです。それを、今の日本の若者に伝えられるかは難しいのですが、プロデューサーはこの作品でそれを表現したかった。難しくても、やりたい事はやるべきだと思う。プロデューサーのその思いを、あくまでも僕は現実化したという感じです」
――中野監督自身は、これからどんな作品を作っていきたいのでしょうか?
中野「僕はスピリチュアルなことが好きなので、そういう作品を作ったいきたいですね。あとは、『SF サムライ・フィクション』のように軽いビールというかウキウキした作品ですね。それを観る事によって1カ月くらい揚がった感じをキープできるような作品を撮りたいです。泣かせる映画ではなくて、『心が綺麗になったかな』なんて観た観客が感じるような作品を」
――チャンバラや時代劇にもこだわり続けていくのですか?
中野「時代劇ってSFなんで、楽なんですよ。携帯も入れなくていいし、誰も観たことがないから服装も自由に作れる。実は時代劇は自由度が高いジャンルなんです。志を持つ人間を描けるという部分でも、時代劇は良いですね。現代は正直な話、志がないんで、それを時代劇で現代の観客に見せることが出来たら嬉しいですね」
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画像左より、『TAJOMARU』DVD 特別限定版 6,090円、DVD 通常版 3,990円、Blu-ray 5,040円。発売販売 アミューズソフトエンタテインメント |
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撮影:石井健
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