【レポート】

Chrome 4でGoogleが見せた"Web標準"へのこだわり - グーグル・及川氏

出張先のオーストラリアからビデオ会議で説明を行ったグーグル シニア エンジニアリング マネジャー 及川卓也氏

既報の通り、Googleは1月25日(米国時間)、Webブラウザ「Google Chrome 4」の安定版(Windows版のみ)をリリースした。これに伴い、東京・渋谷のグーグルにおいて、同社シニア エンジニアリング マネジャーの及川卓也氏がChrome 4の新機能について説明を行ったので、これを紹介したい。

新機能追加でもChromeのテーマは変わらない

「シンプル、高速、スタイリッシュ - これはバージョンがいくつになろうと変わらないChromeの開発方針」と及川氏は冒頭でこう述べた。Chrome 4の主な新機能としては

  • 拡張機能(エクステンション)
  • ブックマーク同期

の2つが挙げられるが、ベースはあくまでシンプルに徹し、拡張機能でもって「各ユーザがそれぞれ本当に必要とする機能を追加してもらいたい」(及川氏)とする。また、高速性については「終わりなきゴールだが、ブラウザは速ければ速いほどいい。どこまでも追求していきたい」としており、実際、JavaScriptエンジンの改良などにより、前バージョンのv3に比べ42%増のパフォーマンス向上を実現しているという。

JavaScriptエンジンやSGLのパフォーマンス向上により、高速性にさらに磨きがかかった

拡張機能は、Chromeの設定メニューから「拡張機能」を選択すると「拡張機能ギャラリー」に遷移でき、好みのものを選択できる。また、Chromeでは拡張機能インストール時にブラウザを再起動する必要がないため、ユーザにとっては非常に使い勝手が良い。本稿執筆時点ですでに1,500以上の拡張機能がリストされているが、残念なのは日本語対応の拡張機能がまだわずかしかないことだ。及川氏もこの点については「日本人開発者にも、もっと拡張機能開発に参加してもらいたい」としている。

Chromeの拡張機能ギャラリー。日本人開発者によるものとしては、はてなブックマーク用拡張「Hatena Bookmark GoogleChrome extension」などがある

ブックマーク同期は、複数のPC間で同じ内容のブックマークを保存できる機能だ。職場と自宅で使用しているマシンが異なる場合などには非常に便利な機能である。同期を有効にすると、ユーザのGoogleアカウントにブックマークがオンラインで保存され、同期を有効にしている各PCのブックマークにも変更が反映される。

Webアプリケーション開発者へのメッセージ

このように一般ユーザにとってもさらに魅力的なブラウザとなったChrome 4だが、及川氏は「Webアプリケーション開発者やデザイナーにとっても、大幅な機能向上が図られている」と強調する。Webブラウザは開発者にとって最も重要な開発環境のひとつ。したがって「ブラウザが"標準"に従い、それを"実装"していることが開発者/デザイナーにとっては非常に重要」とし、ChromeがWeb標準に準拠する姿勢であることを明確に表明している。

ブラウザの標準化がなぜ重要なのか。及川氏は「WindowsやMacといったPCだけでなく、携帯電話やスマートフォン、そして今後は家電製品までにブラウザが搭載される時代がくる。開発者がマルチプラットフォームで動作するWebアプリケーションを作ろうとするとき、標準に即していないブラウザに対応させるのは非常に困難。そういった開発のムダはなくしていかなければならない」と説明する。Chrome 4は、ブラウザのWeb標準の度合いをテストする「Acid3」において100/100のスコアを獲得しているが、高機能なWebアプリケーションが生まれる土壌作りのためにも、ブラウザベンダによる標準化に向けての努力は欠かせないとGoogleは捉えているようだ。

Web標準へのこだわりを見せるChrome。Acid3では100/100というスコアを獲得

もうひとつ、Google/Chromeが開発者に向けて積極的にアピールしている点がHTML5への対応だ。HTML5は規格が正式に策定されるまでまだ数年かかると見られているが、数あるブラウザの中でも、Chromeは最も積極的にHTML5への対応を進めている。Chrome 4では、おもに以下の機能についての拡充が図られた。

通知(Notification)

複数タブで作業中にあるページでアラートが出た場合、該当ページだけでなく、ブラウザ下部のステータスバーにアラートが表示される。

オフライン機能(Web Database、Local Storage)

Webアプリケーションのウィークポイントのひとつがオフライン機能だ。そのためChromeでは今回、クライアント環境にデータを永続化させるWeb Databaseと、メールボックスのような大きなデータをキャッシュするLocal Storageをサポートした。また、HTML5での採用は見送られているが、SQLを使用しないデータベースシステムであるSimple DBの取り込みもChromeでは行っている。

ルビ

日本の開発メンバーが中心となり、<ruby>タグを使用して漢字の上部に振り仮名を表示させることが可能に。

Chrome 4が採用したHTML5と、CSS3におけるルビの表記方法の違い。HTML5では<rb>タグがないことに注目

WebSockets

双方向通信を"真の意味"で実現する機能。「HTTPをだまして一方向の通信を双方向に見せているような現在のシステムではなく、パイプラインでリアルタイムWeb通信を実現できる」(及川氏)ため、アプリケーションの大幅な高速化が期待できる。

チャットアプリケーションやコンファレンスシステムなど、双方向通信で威力を発揮するとされるWebSockets

また、HTML5ではなくCSS3に関する機能ではあるが、Web上の日本語表示の貧弱さを解決する有力な方法として「Web Fonts」をサポートしている。これはサーバにアップロードされたフォントをダウンロード→レンダリングすることでWeb画面に適用できるようにするもので、クライアントの環境に依存することなくさまざまなフォントの表示が可能になる。「欧文フォントのバリエーションの豊かさに比べ、日本語フォントに関してははっきり言って明朝とゴシックしか選択肢がなかったといっていい。Web Fontsはこの状況を大きく前進させられる可能性がある」(及川氏)

***

Webアプリケーションの機能向上はいちじるしいが、現在のWebアプリケーションはまだ多くの面でデスクトップアプリケーションに遅れを取っている。そのギャップを埋めるには、クライアントの環境を問わず、(ほぼ)同じ画面がブラウザに表示されていることが求められる。Webアプリ開発者が開発しやすい環境を促進するためにも、やはりブラウザの標準化は欠かせない。及川氏は「Chrome 4がWeb標準に沿った形でリリースできたことは(ブラウザベンダとして)非常に重要な一歩」と語るが、Googleが見ている先は、PCや携帯電話だけでなく人びとが持ち歩くすべてのデバイスにWebブラウザが搭載される日 - アプリケーション=Webアプリケーションとなる日、のようだ。

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