また、リーク先の人物選定にも特徴があるという。WSJにはWalt Mossberg氏というデジタルガジェット分野の大御所がいるが、同氏をスルーして別の記者を選ぶことで、同氏の世間での評判を維持しつつ非難の対象から外すことが可能だという。一方で、今回はYukari Iwatani Kane氏とGeoffrey Fowler氏という2名のWSJ記者による連名記事となっているが、あえて2名の記者を介在させることで、互いが牽制し合ってこの話題が記事になりやすい土壌を作っているという。かくして実際にリークは成功して大手新聞社のWSJで記事になったようだが、WSJ本紙向けの記事が出されるのは米国東海岸時間で夜中。すでに株式市場は終了しており、誰も株価操作を狙った情報提供とは考えないだろう。

その目的は?

リーク情報のコントロールは、だいたいある問題解決に利用されることが多い。実際のケースでいえば、Appleが今回のタブレット製品に関する情報をあえて早めに提供したのは、次のような理由が考えられるという。

  • 扱いにくいパートナーがいる中で話題を提起する
  • あらかじめ「1,000ドル」という価格帯を提示することで反応をみる
  • Appleが認識している潜在的な競合他社にパニックや混乱を引き起こす
  • 26日開催(とみられる)イベントで適切な種類の人物が一定数集まるよう、業界アナリストや評論家らの期待を喚起する。Appleは空席が嫌いだから

もし金融街の人間らが適切な結論を導き出したのであれば、Appleの株価は上昇し、皆にとってメリットとなる。だが株価操作が目的なのではなく、あくまで本来の目的の結果にすぎない点に注意してほしいとの言葉でMartellaro氏の記事は締められている。

非常にオーソドックスな手法がみられるということで投稿されたエントリーだが、秘密主義と意図したリークの2つをうまく使い分けることで、つねにユーザーの期待を喚起させているAppleの企業像が浮かび上がってくる。もしかしたら、こうした話題もまた、Appleによって意図的にコントロールされているのかもしれない。