ヒューレット・パッカード(以下、HP)が、全世界の中学/高等学校を対象に実施している、PC/ワークステーションの寄贈プログラム「Inovation in Education」が2009年から日本でも開始され、今年夏、国内4校に寄贈された。

そのうちの1校が、東京・小石川にある東京学芸大学附属竹早中学校である。他の3校にはタブレットPCが寄贈されたのに対して、東京学芸大学附属竹早中学校には5台のワークステーションを寄贈。一般的なPC教室ではなく、「グループ学習室」に設置され、社会科や理科、数学の合同授業などに利用されているのが特徴だ。

東京学芸大学附属竹早中学校

「Inovation in Education」プログラムで5台寄贈されたワークステーション「HP xw4600」。あわせてNVIDIA Quadro FX1700(GP529AA)×5、1台につき2GBのメモリ(1GB DDR2-800 ECC GH 739AA×10)も寄贈されている

お話をお伺いした東京学芸大学附属竹早中学校の鈴木一成教諭

ワークステーションならではの高性能を生かしたグラフィック表示能力などにより、これまでの授業とは一線を画した授業を実現している。日本HPの寄贈プログラムによって、ワークステーションを導入した東京学芸大学附属竹早中学校における教育利用を取材した。

HPの「Inovation in Education」は、春に募集が行われ、カリキュラム内容やPC/ワークステーションの用途、貢献度などを総合的に評価し、寄贈先を決定している。

東京学芸大学附属竹早中学校は、「ミクロからマクロに至る自然の構造を理解するための理科・数学教育のイノベーション」をテーマに、生徒が直接体験できない自然現象について、コンピュータグラフィックスやシミュレーションによる仮想現実世界を通じて、生徒が理解を深め、教育的効果の促進を図ることを目的に、このプログラムに応募した。

具体的には、中学1年生の数学、理科の学習において、「南の島の大航海(Charting a Course of Sea)」とし題し、タヒチからハワイまでを帆船で航海する計画を作成する授業を8時限で構成。航海に伴って必要とされる地形、気象、海流、星座などの情報を活用する一方、飲料や食料の確保、危機管理に至るまでを想定した航海計画を、生徒自身が作成するというものだ。

「南の島の大航海(Charting a Course of Sea)」の授業の様子

情報機器を扱うという点では技術科、地図の使用やオセアニアの自然を学ぶという点では社会科、単位の換算では数学の学習となり、さらに、NASAが実施しているEducational Programを、日本の教育課程にどう取り組むかの実践的要素もあるという。

情報機器だけに頼るのではなく、地図やホワイトボードなどを積極的に活用

男女20人ずつ、40人構成のクラスを、5つのグループにわけ、船長、副長、測量士、航海士というように役割を決め、それぞれが作業を分担して行う。そして、完成した航海計画は、全員の前で発表する。

この授業は、理科と社会科の2教科の連携カリキュラム授業と位置づけており、最初の3限目まではPC教室において、PCの基本的な使い方を学習。次の3限で話し合いを行い、航海計画を策定する。策定に当たっては、ワークステーションを活用することになる。その後、中間発表を行い、さらに修正作業を開始。最後に本発表を行うというカリキュラムだ。