多様化したニーズに合わせ進化する「Acronis True Image Home 2009」

写真左から本国Acronis社最高執行責任者ヘルムート・ヘプトナー氏、アクロニス・ジャパン株式会社代表取締役村上督氏、同社プロダクトマーケティングマネージャー甲斐崎由加子氏、同社セールスエンジニア吉田幸春氏。

9月10日に行われたアクロニス・ジャパンの日本国内における事業戦略発表会において、今後アクロニス・ジャパンが日本でバックアップ&リカバリーの先駆者として業界を引っ張っていく、その牽引役として「Acronis True Image Home 2009」を2009年9月11日に市場に投入した旨は既にお伝えしたとおり。

本稿では、Acronis最高執行責任者ヘルムート・ヘプトナー氏、アクロニス・ジャパン代表取締役村上督氏、同社プロダクトマーケティングマネージャー甲斐崎由加子氏、同社セールスエンジニア吉田幸春氏に加え、同社マーケティングマネージャー今村康弘氏に、Acronisが担ってきたバックアップ&リカバリーマーケットの現在と今後の展望、「Acronis True Image Home 2009」を世に送り出す意義と製品に込められたメーカーの思いを伺った。

「Acronis True Image Home 2009」のパッケージ製品ラインナップ。左から通常版、2ライセンス版、5ライセンス版、アップグレード/乗換版、アカデミック版

「Acronis True Image Home 2009」って、どんなソフトなの?

読者のなかには「Acronis True Imageってどんなソフトなの?」と疑問を持たれた方もいることだろう。基本的にはパソコン内に保存されているデータのバックアップや、万一HDD等の記憶媒体がクラッシュしてしまった際のリカバリーをおこなうソフトウェアであるのだが、バックアップという作業の本当の意味までは理解しきれていない場合も多いだろう。そこで、甲斐崎氏に「Acronis True Image Home 2009」の機能やポイントについて伺ってみた。

一重にバックアップと言ってもそこに含まれる意味や種類は様々なものがある。アクロニス・ジャパン プロダクトマーケティングマネージャー甲斐崎由加子氏

「ひと言で本製品を表すならば"ユーティリティ・ソフト"でしょうか。バックアップを作成しておくことによって想い出の写真や音楽などを保護するほか、万一システムがクラッシュしてしまっても一からOSをインストールしてソフトをインストールして……という作業を大幅に簡略化できるリカバリー機能を有しています。また、HDD自体の使用容量を削減することも可能です」とのこと。その際に一番気を遣ったのが、誰もが如何に簡単にその作業を行えるかだと言う。

「Acronis True Image Home 2009には"保護"というボタンをワンクリックするだけで恒常的にバックアップを作成する"Acronisワンクリックプロテクション"を用意しています。製品を購入してインストールしてもどのようにシステムを保護しなければいけないのか、そこが判らずに躓かれていたお客様に対して、判らないままでもただクリックしていただくだけで保護できるように工夫しました。バックアップの詳細な設定が行えなくても、自動でシステムを分析して最適なバックアップ方法を実行することができるのです」

なるほど、筆者のような面倒くさがり屋でものぐさな人間でも、ワンクリックするだけであとは勝手にバックアップを作成してくれるのはありがたい。でも、バックアップを作成するにあたって用意せねばならない記憶メディアは? 容量はどの程度用意すればいいのだろうか? それについてはケース・バイ・ケースであって「Acronis True Image Home 2009」に用意された豊富なバックアップ種類によって解決できるという。

PC全体、パーティション、フォルダ、ファイルとバックアップする対象を決め込むことでバックアップファイルの容量を調節できるほか、その後の作業等で発生したファイルなども差分や増分したもののみバックアップしていくことができる。加えて、バックアップファイルのアーカイブを統合することによって安全性を保ちながら容量を軽くすることができるのだ。

体験版をダウンロードしてアイコンをダブルクリック。すると、このような画面が表示されインストールを開始できる

インストール終了後に表示されるダイアログ。「Acronisワンクリックプロテクション」で一度"保護"をクリックするだけで恒常的にバックアップを自動で作成してくれる

基本画面は2ペインで構成されており、グラフィカルなアイコンと説明で非常に判りやすい

「その他に、仮想環境を利用して新たなソフトを導入してもシステムに問題・不具合が生じないかをテストすることができる"試用モード"の機能も充実させました。メールにファイルが添付されている。でも、ひょっとしたらウイルスかもしれない。そんな時に"試用モード"を利用していただけると便利ですよ」と甲斐崎氏。

確かにここまでの技術が盛り込まれていると、単なるバックアップ&リカバリーソフトではなく、パソコンをより安全に、しかも快適性を損なわず万一の事態に備えることができる。ネットブックなどの記憶容量が少ないPCであっても、外部記憶メデイアにバックアップを作成して本体からはデータを消去、その後は必要に応じて抽出する、といった使い方も提案していくことができるユーティリティ・ソフトと言えるだろう。

こちらが試用モードの画面。ただワンクリック、"開始"ボタンをクリックするだけでオーケーだ

まとめで甲斐崎氏は、バックアップという作業についてこう語った。

「バックアップというものは、一度作成すればいいというものではありません。継続的にバックアップを作成しておかなければ、万一の事態の時、復旧で使うデータが2カ月も昔のものでは空白の期間が生じてしまいます。そういったリスクを回避するために、Acronis True Image Home 2009の"Acronisワンクリックプロテクション"は初期状態で1週間ごとにバックアップを自動生成するように工夫されています。ですので、お客様にはインストール後ただ一度だけ、"Acronisワンクリックプロテクション"の"保護"というボタンをクリックしていただきたい」

たった一度のクリックで、PCに保存されたデータ、いや、財産を保護することができるのだ。大企業、中小企業、一般家庭で幅広く支持されてきた理由を垣間見た気がした。

"簡単"であること、"判りやすい"ことを追求した

まだ公にはできないが、既に次期「Acronis True Image」のプロジェクトは動いており、更なる驚きを約束して下さった村上氏

「Acronis True Image Home 2009」のキーワードのひとつは"簡単"であると今村氏は語る。「無くしたくないデータを適切な処置で簡単に保護することができる。"簡単"と言うのはより直感的に扱いやすくなったユーザーインタフェースや、製品に盛り込まれた機能を判りやすく表現することによって実現しています」という言葉からも、メーカーが込めた意志が感じられる。実際に体験版をダウンロードしてWindows Vistaにインストールしてみたが、確かにユーザインタフェースはユーザビリティ向上のために改善され、パソコン初心者であっても「どのボタンを押したらどうなるのか」が判りやすい。加えて、"タスクの管理"でカレンダーをベースに何時バックアップを作成するのかを決めるスケジュールは、ひと目でバックアップ状況を確認できて便利だ。エンタープライズ領域や大企業、果ては米国空軍の基幹システムのバックアップにAcronis社の技術が採用されているのも頷ける。また、村上氏は「今後はもっと幅広い層のユーザーへ訴求していきたいと考えており、さらに親しみやすいインタフェースの開発を課題として考えていく」とも。近い将来、もっと簡単にデータを保護、リカバリーできる「Acronis True Image」が登場する。そう期待させてくれるひと言だ。

"幅広いニーズに応える製品を提供し続けること。"と語るヘプトナー氏

そして、ヘプトナー氏もこう言葉を繋げた。「Acronis True Image Home 2009のメインポイントは、経験値に依らず広い範囲のお客様のニーズに合った製品であるということです。弊社では"統合化"という表現で様々な機能を製品に集約しています。バックアップについても同様で、単純なファイルのコピーもバックアップのひとつの種類と呼べますが、単一ファイルのコピーだけではなく様々なバックアップのカタチを統合し提供しています。Acronis True Image Home 2009は、簡単に、そして瞬時に必要な機能を使いこなすことができる新しいタイプのソフトウェアと表現できるでしょう。リカバリーに関しても、表面上簡単に復旧しているように見えますがそこにはAcronisが今まで培ってきたノウハウが込められています。すべてのデータを失ってしまった場合、バックアップがなければ復旧まで何日も時間を費やさねばなりません。その手間暇が省けるのは大きな特徴と言えるでしょう」。

確かにヘプトナー氏の言葉にあるように「Acronis True Image Home 2009」にはシステムボリューム、マスタブートレコード、差分・増分のバックアップ、アーカイブの統合など様々なバックアップ機能が用意されている。

バックアップ&リカバリーソフトをあまねく人々に利用してもらいたい

では、ここで今後の「Acronis True Image」がどのように進化を遂げていくのか、そのビジョンを村上氏に伺った。 「進化にはふたつの方向性があると考えています。技術的な側面と思想的な側面とでも申しましょうか。技術的な側面は開発陣に委ねるとして、私からは思想的な側面をお話したいと思います。現状、弊社製品は限られた年齢層のお客様からご利用いただいておりますが、これからは"ひとつのPCにひとつのバックアップ&リカバリーソフト"というカタチで喚起していきたい。

ウイルス対策ソフトのように、誰もが当たり前のように利用していただくためにも、広くあまねく年齢層に訴求できる思想を製品に詰め込んでいきたい」と力強い決意の言葉をいただいた。Acronisの持つ技術は様々なシチュエーションでの実績があり、それは既にBritish Telecom、Chevron Texaco、US Air Force、Volkswagenなどの企業、政府機関への導入によって証明されている。一般の家庭から大企業まで幅広い範囲でカバーする製品ラインナップを提供しているユニークなメーカーだけに、アクロニス・ジャパンの今後に注目していきたい。