Windows Vistaでユーザーからの厳しい評価を受けたMicrosoftは、Windows 7をより使いやすくフレンドリーなOSにしようとしている。米カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されているハードウェア開発者会議「WinHEC 2008」で11月5日(現地時間)、同社はWindows 7で信頼性やパフォーマンス向上、さらなる省電力化など、地道な改良が行われている点を強調した。またハードウェアサポートのためのさまざまな取り組みをデモストレーションし、そのうちの1つである「Device Stage」を紹介した。

WinHEC 2008会場となったLos Angeles Convention Center。先週まではPDC 2008の会場だった場所だ

「Windows 7」での地道な改良をアピール

WinHECに先駆けて開催されたPDC 2008では時間の関係もあり「新型UI」「マルチタッチ」といった、どちらかといえば色モノ的な側面がアピールされたWindows 7だが、WinHECではむしろWindows 7の堅実な面が強調されている。その一端がシステムのブラッシュアップによるカーネルの軽量・高速化だ。PDCでもデモストレーションされていたが、Windows 7のプリベータ版をネットブックで動作させ、問題なく利用できる程度のコンパクトさになっている。スペック上の問題から、この手のマシンでWindows Vistaを動作させるのがかなりきついのは周知の事実だが、Vistaの延長線上にあるWindows 7でその問題をクリアしている点がアピールポイントになる。

米MicrosoftでWindows Core Operating System部門シニアバイスプレジデントのJon DeVaan氏

5日の基調講演に登壇した米MicrosoftでWindows Core Operating System部門シニアバイスプレジデントのJon DeVaan氏は、Windows VistaとWindows 7の2つのマシンを並べて起動時間を比較、現バージョンと比較して大幅に速度向上を果たしていることをアピールした。高速化のポイントはいくつかあるが、無駄なプロセスを省いてできる限り最適化を行っており、特に時間のかかるディスクI/Oなどのプロセスを大幅に削減した点が大きく寄与している。「Windows Vistaでは起動までにすべての初期化プロセスを通過していたが、これを工夫することでかなりの時間が省略できる」とDeVaan氏はコメントする。シャットダウンも同様で、こちらもちょっとした工夫を加えることで時間を省略している。

Windows Vista SP1のリリースから安定性が増し、OSのクラッシュ率が減少している

Windows 7での強化点の1つ「起動時間の短縮」。細かい最適化作業のほか、起動プロセスの無駄を省いてI/Oアクセスを減少させるなど、高速化のための試みが多数行われている

メモリ消費量の低減も強化点の1つ。複数のウィンドウを同時に開いてもメモリ消費量がリニアに上昇しなくなった

またメモリ消費量の少なさもポイントだ。Vistaでは高速化のためのスーパーフェッチなどの機能が導入されていたが、一方で要求されるメモリの最低スペックが高く、これがストレスの原因となっていた。Windows 7では前述のネットブックの例のように最低動作メモリ要件が低いだけでなく、複数のウィンドウを開いても消費するメモリが正比例には増加せず、一定レベルを保っている。そのためスケーラビリティが高く、例えばWindows Vistaではメモリ不足でシステムがストップするような状態に陥る状況でも、Windows 7では比較的安定して継続動作する。

最後のポイントが消費電力の少なさだ。2008年第3四半期の販売データで、米国内のPC出荷シェアにおけるノートPCの比率が完全にデスクトップPCを逆転したことが話題になったが、このようなノートPC全盛時代には「消費電力の少なさ=バッテリ稼働時間の向上」が大きな意味を持つ。壇上のデモでは同一スペックのマシン上でVistaと7を走らせ、両者にDVD再生をかけた状態で数時間放置し、その後のバッテリの減り具合の差を紹介している。またMicrosoftではWindows 7開発者向けに「powercfg」というツールを公開しており、これを使うことで電力消費の無駄を誘発するデバイスやソフトウェアの検証を可能にしている。例えばpowercfgを使って最適化する前後でバッテリ駆動時間が倍近く変化するケースもある。

消費電力の低減はノートPCにとってはありがたい強化点。同じスペックのマシンにWindows VistaとWindows 7を入れて同時にDVD再生をかけた場合、Windows 7のほうが消費電力が少なく、結果としてバッテリ稼働時間が延びている

電力消費効率を検証するツール「powercfg」。ツールを走らせると診断結果をレポート形式で出力し、問題箇所を指摘してくれる

powercfgを使っての最適化前後のバッテリのプロパティを比較したところ。電力消費効率がアップしている

以上は地味な改良だが、使い勝手を向上するうえでの工夫という点で、Vistaから比較してかなりユーザー目線になっていることが印象的だ。またDeVaan氏は自身のプレゼンテーションの最後にWindows Vistaにおける64ビット版の利用比率が高まっていることをグラフで示し、会場の開発者らに対して64ビット時代への準備を進めるよう促した。64ビット版Windowsではデバイスドライバの不足が依然として問題となっており、これを解決するのが狙いとみられる。

Windows Updateのデータを基に、Windows Vistaで64ビット版の利用が進んでいることがわかる。つまり開発者にはこれからは64ビットを意識した開発を行ってほしいとMicrosoftでは訴えている。WinHECにはデバイスメーカーの関係者が多いため、特にデバイスドライバの64ビット対応を進めてほしいという訴えだ