大ヒットDVD『スキージャンプ・ペア』(2002年)シリーズで「3DCGを駆使したお笑いビデオ」という新たなジャンルを開拓した映像クリエイター・真島理一郎。彼が総監督を務める最新作『東京オンリーピック』の制作秘話や、自身の映像表現について語りつくす。

「有名・無名を問わず優れた映像クリエイターを集めた」

――『東京オンリーピック』の企画成立の経緯を訊かせてください。

真島「『スキージャンプ・ペア』シリーズを作った後、色々な人から"他の競技も見てみたい"という声を頂いたんです。でも、どうしても二番煎じになるから、やりたくなかったんです。僕自身のモチベーションも上がりませんし……。ただ、今回の企画は"色々な競技映像を複数のクリエイターで競作する"という企画だったので、やる価値はあると思ったんです」

――有名・無名を問わず、様々な映像クリエイターが『東京オンリーピック』には参加していますね。

真島「世の中にはまだ知られていない才能ある映像クリエイターが多数います。有名・無名に関わらず、『東京オンリーピック』では僕がリスペクトしているクリエイターを集めて、面白い事をやりたかったんです。新しい才能がこの映画をきっかけに世に出たら嬉しいですからね。一般のレベルではまだ知られていない埋もれた才能を、とにかくみんなに見せたいんです。普段の生活でも、面白い作品があると友達に薦めるじゃないですか。そんな感じですね。それが今回の企画の大きな狙いでもあります」

――参加クリエイターの選定にも真島監督は関わっているのですか?

真島「はい、過去の実績などにはこだわらず、僕が好きなクリエイターに自分で声をかけました」

――各クリエイターの作品内容にはどんなレギュレーションを出したのですか?

真島「『5分から10分の短編作品』、『新しいスポーツ競技を作ってください』、『競技シーンを描いてください』という事だけですね。『他は自由にやってください』とお願いしました(笑)」

――ギャグというかお笑いに関して、真島監督からの要望はあったのですか?

真島「笑いというよりも、あくまでエンターテイメント作品であるという事はお願いしました。今回参加した方々は、お笑い映像を作っているクリエイターだけではないので。声に出して笑う物だけが、面白い物だとは限らないですし。何よりも、各クリエイターに個性を出していただくことが大事だと思いました」

――真島監督自身も2作品を監督されていますが、他の映像クリエイターとの競作に関して、プレッシャーを感じる事はなかったのですか?

真島「あまりなかったですね。それぞれ好きなことをやったという感じですから(笑)。『東京オンリーピック』は開会式でも言っているように、"ナンバー1でなくオンリー1を目指す"ものだったので(笑)」

――3DCGアニメだけでなく、2Dアニメ、実写、コマ撮り作品など、様々な作品が集結しましたね。

真島「実は、僕はまったく手法にはこだわりがないんですよね。まずはアイデアが大事だと思うんです。どう表現したらよいか、そのためにどの手法を使うかが大切なんです」

――真島監督はデジタルハリウッドご出身ですし、3DCGに深い愛着があると思っていました。

真島「僕はデジタルハリウッドに入った時から、『CGは嫌いです』と言っていたんです(笑)。元々、映画が好きで、デザインの勉強もしていたので、アナログの魅力もわかります。それぞれの手法によって表現できる面白さが存在すると思うので、手法にはこだわりません。映画版『スキージャンプ・ペア』にしても、競技シーンはCGでしか描けませんが、選手のインタビューシーンをCGで作っても面白くも何ともない。実写がベストですからね。今回、僕が監督した『男子親離れ』という競技にも実写映像が出てきますが、あのシーンをCGで描いても、なんの面白みもないんです。あと、僕は実写とCGをごちゃ混ぜにする事に、何の抵抗も無いですから。『男子ヒューマニズム』という競技でも、コマ撮りと動画を混ぜてますし(笑)」

真島監督が得意とする3DCGと実写とを有効に使い分けた『男子親離れ』
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

関節可動のフィギュアをコマ撮りして制作した『男子ヒューマニズム』
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会