PCで音楽や映画を楽しむ場合に多チャンネルスピーカーよりもヘッドホンを好む人は多いだろう。スピーカーでは同居人などに迷惑をかける場合がある。ヘッドホンなら音量を上げて外部の雑音を遮断できる。そしてなによりも、スピーカーよりヘッドホンのほうが音像定位がわかりやすい。これはゲームでも同じだ。特にオンライン対戦ゲームでは敵の位置、銃声の位置を把握するためにヘッドホンのほうが都合がいい。

そしてゲーム用ヘッドホンの場合、チーム戦で仲間と会話するためにマイクが必須となる。つまり、ゲーム用ヘッドホンは企業のコールセンターで使われるようなヘッドセットというスタイルになる。日本でも海外製のゲーム用ヘッドセットが流通しているが、「DHARMA TACTICAL HEADSET」は日本企業が開発した珍しい製品だ。しかも、ゲーム用ブランドとして昨年デビューし、急速に愛好者を増やしているDHARMAPOINTである。これは見逃せない。

密閉型ヘッドフォン&マイク。アルミフレームのため軽い

端子はすべて金メッキ。ステレオピンプラグを外すとピミニプラグになる

ビビリの無い重低音の心地よさ

テストで遊んだゲームは対戦型FPSの「チームフォートレス2」と「バトルフィールド2142」、そしてレーシングゲームの「ニード・フォー・スピード カーボン」だ。チームフォートレス2は比較的狭いマップでの多人数対戦という場で、音像定位が重要である。バトルフィールド2142は日本では旬を過ぎた感もあるが、爆音や戦車、航空機の駆動部で重低音が多い。レースゲームも音像定位が重要で、とくに後ろから迫るライバルが左右のどちらから抜きに来るかを把握する必要がある。

音質は、重低音が心地よく、中音域の再現性に優れ、その反面、高音は抑え目という印象だ。特に気に入った音域は重低音だ。DHARMA TACTICAL HEADSETは50mm径の大口径ドライバユニットを採用しており、それをアルミ製ハウジングでしっかりと抱えている。だから重低音型であろうことは予想できた。その重低音がとても聴きやすく、迫力を感じた。重低音を強調するヘッドホンのなかには、音圧が上がると独特のビビリを発生させるものがある。密閉型は耳たぶが痒くなるほど震えるものもあり、不本意ながらボリュームを下げる必要がある。しかしDHARMA TACTICAL HEADSETの低音はとても上品だ。バトルフィールド2142の母艦タイタン内の戦闘において、爆音に囲まれながらも冷静でいられた。ニード・フォー・スピード カーボンではエキゾーストノートが騒音ではなく"サウンド"として聴ける。

高音は抑え気味だが存在感はしっかり

高音が抑えられていると感じたときは少々驚いた。なぜなら、ゲーム用ヘッドホンには音楽用途を無視してでも高音を強調するタイプがあるからだ。ゲームでは銃声や足音などの効果音として高めの音を使う。金属が触れ合うカンカン、靴音のコツコツ、兆弾のピーンという音である。筆者には「ゲーム用ヘッドホンは高音重視のチューニングになるもの」という先入観がある。それゆえにDHARMA TACTICAL HEADSETの第一印象は「これでゲーム用と言っていいの?」であった。しかし、チームフォートレス2でしばらく遊んでいると、その心配はなくなった。高音は控えめながらもしっかりと存在感を持っており、銃撃戦の方向や、自分が撃たれた方向がよくわかった。

今までのヘッドホンでは、画面に表示されるまでどこから撃たれたか分からなかった。これはとても悔しい。DHARMA TACTICAL HEADSETで方向が分かってもやっぱり撃たれるわけだが(笑)、悔しくても納得できる。「なるほど、これが音像定位というものか」と理解できた。ニード・フォー・スピード カーボンではライバルを確実にブロックできる。ゲームプレーヤーにとってヘッドホンは効果音再生機ではなくセンサーだ。その役目をDHARMA TACTICAL HEADSETはしっかり果たしていた。

ただし、高音が抑えてあるという部分は好みが分かれる。筆者にとってはシャリシャリ感がなく耳に心地よいが、ピーンと張りつめた高音を好む人には物足りないかもしれない。しかし抑えたといっても高音の存在感はちゃんとある。音の再現性は素晴らしく、あまり音楽に親しまない筆者でもオーケストラの楽器をきちんと追跡できた。

ちなみに今回は、執筆中に映画評論家の水野晴郎氏が亡くなったこともあり、氏が解説を担当したテレビ番組「金曜ロードショー」のテーマ曲「フライデーナイト・ファンタジー」(ピエール・ポルト楽団)を聴いてみた。トランペットの主旋律が有名なこの曲は、実はピアノの独奏で始まる。このピアノがテレビではトランペットとバイオリンに消されてしまう。DHARMA TACTICAL HEADSETではピアノが小さいながらも波の音のように存在を示しており、サビの大音量でもちゃんと活きている。

マイクの定位置がピタッと決まる

DHARMA TACTICAL HEADSETは音像定位性に優れた音楽用ヘッドホンにマイクを取り付けてゲーム用にしたものと考えても良さそうである。マイクはケーブルごと取り外し可能で、そこに取り付けるマイクなしのケーブルも付属している。ゲームはもちろん、音楽や映画鑑賞も楽しみたい人はこれひとつで足りる。

コードは取り外し式。フックを回転させて固定するので外れにくい

マイク付きコードにはリモコンが付いている

もちろんDHARMAPOINTだからゲームプレイヤーへの配慮もちゃんと施されている。ケーブルは左側からの片出し式でマウスを持つ手をわずらわせない。マイクの取り付け方式は上下方向にクリック感を伴う回転式、前後方向はちょうど良い硬さのフレキシブルワイヤーとなっている。期待した位置にピタッと停まるし、飲み物を口にするときは簡単に口元から離せて、同じ位置に戻せる。

マイクつきコードは左側に取り付ける

こちらはオーディオコードを取り付けたところ

耳当て部分の素材は柔らかく、肌触りは優しい。筆者は眼鏡を使っているけれど、フレームに圧力を与えずに包み込んでくれた。この耳当て部分のヒンジを折り込んで持ち運びに配慮するという仕掛けも便利だ。ゲーム大会や競技会に参加するときに持ち運びやすい。贅沢を言うなら、折り畳んだ状態で固定できればよかった。あるいは、ちょうど良いサイズのDHARMAブランドのロゴ入り布袋がついていたら満足度が増しただろう。もっとも、小袋なんて百円均一ショップに行けばちょうどいいものがありそうだし、ガールフレンドにお願いしやすい小物でもある(ちなみに、ロゴのフォントは公式サイトで公開されている)。DHARMA TACTICAL HEADSETの市場価格は8,000円前後。余計なおまけがなくたって、この音質と機能に見合った価格であることは間違いない。

カップは柔らかく、眼鏡使用者も苦にならない

折り畳んで持ち運びできる