競馬写真ファンにとっての悩みの種は、時速約60キロで疾走する競走馬の美しいフォームをゲットするために、1秒間におよそ10コマ撮れる高速連写が可能なカメラと、明るい大口径の、300ミリ以上の望遠レンズが必要なことだ。この二つの条件を満足させるためには、実に100万円もの大金をカメラに投入する必要があるのだ。

カシオから発売されたEXILIM PRO EX-F1(以下EX-F1)はこの条件を軽くクリヤしているにもかかわらず、実売価格が約10万円と信じられないほどリーズナブルなカメラだ。しかも一眼レフデジカメなら写真しか撮れないが、EX-F1は高画質ハイビジョンムービーや、超高速(スローモーション)ムービー撮影もできる超スグレモノなのだ。

早速EX-F1を持って、今シーズン牡馬クラシック第1弾「皐月賞」を撮りに中山競馬場へ出かけてみた。

競馬撮影のポイント

JRA(日本中央競馬会)には日本全国に10カ所競馬場がある。それぞれコースの形状が異なるので、撮影ポイントも競馬場ごとに違ってくる。今回訪れた中山競馬場は、ボクにとって40年間、競馬写真を撮り続けている馴染みのコースで、いわばホームグラウンドだ。

土曜日と大きい重賞レースのない日曜日は比較的すいているが、それでもメインレースの11R頃になるとスタンドはほぼ埋め尽くされてしまう

皐月賞は3歳馬しか出られない重要なクラシックレースのひとつ。ディープインパクト引退後、観客入場数が低迷している競馬場だが、この日はさすがに満員

中山競馬場の撮影ポイントは、各馬が一斉に追い出しをかける4コーナー地点と、ゴール手前200メートルにある坂を駆け上がるときのジョッキーの表情、そしてゴール板通過直前のデッドヒートと勝利の瞬間だ。撮影したいシーンに応じて、撮影ポイントをあらかじめ決めておくといい。1日12レース中、芝のレースは5~6レースあるので、レースごとに場所を変えてみるのもいいだろう。

まず第4コーナー。向こう正面では縦長だった馬群も、残り400メートルを切るとラストスパート体勢になり、各馬の距離が一挙に詰まってくるので、迫力ある写真が撮れる。EX-F1は光学12倍ズームを搭載、35ミリフィルム換算で36~432ミリ相当になる。4コーナー端の芝生から最望遠域の432ミリで狙うのがいい。EX-F1は最大秒60コマというすさまじい超高速連写が可能なカメラ、プロ仕様の一眼レフ機でさえ最大秒8~10コマなのだから、連写能力は桁違いのすごさだ。ただ競馬の場合、60コマを1秒間で使い切るより、3秒から4秒で撮ったほうが、被写体イメージにあった写真が撮れるので、ここでは20コマ/秒で3秒間撮影。

直線コースめがけて各馬が一斉にラストスパートをかける第4コーナーは、馬群が一団となって固まるので、狙い所。400ミリくらいの望遠レンズが必要

次はゴール200メートル手前の直線コース。中山コースの特徴は第1コーナーが最も高く、そこから向こう正面、3コーナーへと徐々に下っていき、4コーナーを回ってゴールまで残り200メートルの地点が最も低く、そこからゴールに向かって一気に駆け上がらなければいけないのだ。高低差は実に2メートル以上あり、馬にとっても騎手にとってもまさに心臓破りの直線コースだ。騎手は「さー行け!」とばかりに一斉にムチを入れるので、その瞬間の表情を狙う。ここも15コマ/秒か20コマ/秒で撮るのがベスト。

ゴール前200メートル地点が、このコースの最も低いところ。ここからゴールまでいかに鋭い脚を使うかがジョッキーの腕の見せ所だ。200ミリくらいの望遠レンズで狙う

最後はゴールの瞬間。中山競馬場のゴール地点はスタンド側が低く、近くからでは柵がじゃまして写真にならない。ゴールからはやや遠くなるが、ベンチシートがあるスタンドを少し上ったあたりから撮るといい。ゴール板までの距離はほぼ50メートル。ここでも光学12倍ズームの望遠側が威力を発揮する。

中山競馬場のゴール地点は観客スタンドよりも高いため、一番前で撮ると柵がじゃまでうまく写らない。建物側のやや高い位置から望遠レンズで狙うのがいい

建物側スタンドのやや高い位置からゴールの瞬間を狙う。4、5頭が一団となってなだれ込んでくれると、迫力のある写真が撮れるが、なかなか思うようなアングルになってくれないのが競馬写真。400ミリの望遠で狙う

競馬撮影の準備

いくら60コマ/秒と光学12倍ズーム搭載のすごいデジカメでも、すべてをA(オート)モードで、簡単お手軽にかっこいい写真は撮れない。基本はS(シャッター優先)モード。1/400秒程度で撮れば、手ブレや被写体ブレを防ぐことができる(EX-F1にはセンサーシフト方式手ブレ補正機能が搭載されているが、念には念を入れたい)。用具で必要なものは一脚。本当は三脚のほうが安定して撮りやすいが、場内は観客が多いので禁止。焦点距離が430ミリともなると、画角は極端に狭くなり、ちょっとしたカメラの動きでも、写真は大きくブレてしまう。特にムービー撮影を手持ちで行うと、まるでジェットコースターに乗っているみたいで、再生すると目が回る。望遠撮影は一脚に装着することで、かなりブレを減少させられるが、さらに一脚をスタンドのフレームにテープで固定すると、よりブレ防止になる。また、競馬撮影は晴れの日ばかりとは限らない。急に降り出す雨も考えられるので、レンズのところだけ穴の開いた撮影用のビニールコートを常に携帯しよう。

スタンドの手すりに一脚を固定させるテープと、雨の日でもカメラを濡らさないで撮影するためのビニール。EX-F1は最大432ミリの超望遠撮影が可能だが、手ブレには特に注意

手すりにテープで固定しておくと手ブレ防止効果が一段と増す。EX-F1はハイビジョンムービーもズームが効くので、ブレ対策は絶対必要

レースの間隔はほぼ30分、せっかく競馬場にきて、馬券を買わないでは面白さも半減。入場門には当日のレーシングプログラムが山のように置いてあるので、それをもらい、レースの合間に馬券検討。そのときに必要になるのはボールペン(赤と黒)とラジオ。場内は専用のFM放送が受信できるので、それを聞こう。FM放送はレース中にお目当ての馬が馬群のどのポジションにいるかを確認するためにも役に立つ。

レーシングプログラムは入場ゲートを入ったところに置いてある。同時開催している阪神や福島競馬場の出馬表も載っている。いい写真を撮って馬券で儲けて帰ろう

馬場内ではパドック解説やレース実況をFM放送している。レース中はお目当ての馬や騎手がどのポジションにいるかを知るためにも聞いていると便利

遮るものがないスタンドは予想以上に風の音を拾う。ムービー撮影では外部マイクを使ったほうが不快な風の音を小さくすることができる

400ミリのズームレンズを付けた一眼レフカメラとカシオEX-F1。大きさも重さも格段に違う。小さく軽いEX-F1を使うともう重いカメラに戻れなくなる。特に女性には大きなアドバンテージとなるだろう