17日、NTTドコモからWindows Mobile搭載スマートフォンの新製品「F1100」(富士通製)が発表された。Windows Mobileを搭載した電話機というと、これまではPDAに通話・通信機能を追加した構成の機種が主流だったが、F1100は「ケータイ」としての使い勝手を高めることを明確に打ち出したという点で、従来機種とは一線を画している。日本市場での「Windowsケータイ」デビューから2年あまりが経過し、新たな展開を見せるWindows Mobileの今後について、マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部長の梅田成二氏に話を聞いた。

携帯電話としての使い勝手に重点を置いたNTTドコモのWindows Mobile搭載スマートフォン「F1100」(富士通製)

F1100は、いくつかあるWindows Mobile 6のエディションの中で、タッチパネルを使わずキーのみで操作することを想定した「Standard」版を搭載している。日本でこれを初めて採用したのはソフトバンクモバイルの「X02HT」(HTC製)だが、開発がスタートしたのはF1100のほうが先だったという。X02HTはHTCが既に世界市場で発売していたモデルをベースとしていたのに対し、F1100は完全な新規プロジェクトだったので、その分開発に時間がかかった。

マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部長の梅田成二氏

「F1100の企画を最初にいただいたのは、W-ZERO3が出てからまだそんなに経っていないころでした。W-ZERO3はヒットしましたが、携帯電話機能を持たないWindows Mobile 5.0 for Pocket PCを使われていました。ですのでマイクロソフトの米本社からも、電話機能付きのWindows Mobileは日本ではあまり必要ないのでは、と思われていたところがありました」(梅田氏)

Windows Mobile 6には、キー操作型スマートフォン向けの「Standard」(5.0ではfor Smartphone)、タッチパネル型スマートフォン向けの「Professional」(同for Pocket PC Phone Edition)、標準では携帯電話機能を持たない「Classic」(同for Pocket PC)の3種類がある。ただし、日本独自方式のPHSは、Standard/Professionalが持つ標準の電話機能ではサポートされないため、W-ZERO3シリーズはfor Pocket PCまたはClassicを採用し、通話などの機能はPHS用の独自ソフトを追加していた。F1100の企画が持ち込まれた2006年初頭には、標準の電話機能を使ったWindows Mobileデバイスが自体が、日本市場では想定されていなかったわけだ。

「Standardの日本語版も用意はしていたのですが、そういう状況だったので、ローカライズのレベルがそこまで高くはありませんでした。ですから、富士通さんから『Standardでやりましょう』というお話が来たときは大騒ぎでしたね。StandardではIMEが付いていないので、標準では日本語入力もできないですから。ただ、我々もフォームファクタのバリエーションは増やしていかないと、すぐに市場が飽和してしまうのではないかという思いはありましたので、そこにF1100のような企画をいただけたのはとても良かったです。我々から見ると、富士通さんが目指されていたコンセプトは当初から、日本の携帯電話的なフォームファクタの中にWindows Mobileを入れることで新しい市場を開拓する、というものでした」(同)

そうして出来上がったF1100は、制限なくインターネットを使える、Outlookと簡単にスケジュールを同期できる、PCに近いメディアプレイヤーやメッセンジャーを利用できる、といったWindows Mobileのメリットを備えながらも、従来の一般的な携帯電話と同じ感覚で使えるものになっている。待ち受け画面で左右キーを押すと発着信履歴が表示される、クリアキーに相当する「BACK」キーがカーソルキーの真下に配置されている、メニュー(スタートキー)→0のキー操作で自分の電話番号が表示されるといった工夫は、まさに「日本のケータイの文法」をWindows Mobileに持ち込んだものだ。

独自の待受画面(左)を搭載。この画面にしておけば一般的な携帯電話に近い感覚で操作が可能。右はWindows Mobile 6 Standardに共通で搭載されている画面

また、起動中のソフトの切り替えや終了を分かりやすい操作で行える「タスクマネージャ」も標準搭載した。Windows Mobileデバイスに慣れたユーザーは、新機種を購入するとまずタスク切り替えソフトを自分で追加するものだが、F1100のタスクマネージャは待受画面に最初から表示されているので、初心者でもホームキーを押すだけで現在どれだけのソフトが起動中かを確認でき、スマートフォンならではのマルチタスク動作を使いこなすことも可能だ。

「富士通さんなりの日本の製造メーカーらしい工夫、4つのアプリケーションキーや、スライドの滑らかさ・独特の質感みたいなものも含めて、今までのものと違うなと感じさせますね。これまでどちらかというと『入力するならQWERTYキーでないと』というPCのヘビーユーザーを意識していましたが、このF1100と続くHT1100(HTC製)では、そこからマーケットを広げていきたいと考えています」(同)