皆さんは、"執事喫茶"をご存知だろうか。私はテレビなどで知ってはいたが、自分にとっては縁遠い所だと思い込んでいた。だが、百聞は一見にしかずということで、編集部のTさん(女性)に同行をお願いし、東京・池袋にある執事喫茶『スワロウテイル』を取材をしてみることに。そして私たち2人は、想像を素敵に裏切ってくれた世界へ足を踏み入れたのだ。
秋葉原に通い慣れている私としては正直、執事喫茶に対してメイド喫茶と同じようなイメージを持っていたのは確かだった。しかし、ただ単純に客と給仕側の性別が逆なだけだと思っていたイメージは、すぐに脳内で書き換えられることに……。
取材のために案内をしてくださったスタッフの方に勧められるがまま、私たちはビルの地下1Fにある『スワロウテイル』へ。玄関のドアが開かれた瞬間、私は硬直してしまった。なぜなら、すらっと背の高い上品な男性が「おかえりなさいませ、お嬢様」と私たちを出迎えてくれたからである。そう、もうここはすでに私のお屋敷。お屋敷には"執事"と称されるお屋敷の総括責任者と、その下に直接お嬢様の世話をしてくれる"フットマン"、食事の用意をしてくれる"パティシエ"たちがいて、お屋敷を守ってくれているのだ。出迎えを受けてから80分間、私たちは夢の時間を過ごすことになる……。
ここで、『スワロウテイル』の"フットマン"への教育という、徹底したこだわりを紹介しよう。『スワロウテイル』に新しく入った"フットマン"は約2カ月の間、お嬢様方への前には出られない。なぜならば、マナーはもちろんのこと、約60種類にも及ぶ「ROYAL ALBERT」や「WEDGWOOD」などをはじめとするカップの種類を覚えなければならないからだ。さらに『スワロウテイル』が厳選した30種以上の紅茶のことを学ぶとのこと。これらを全てクリアしたときに、初めて"フットマン"として、お屋敷の中でお嬢様方のお世話をすることが許されるのだ。
話を元に戻そう。さらに奥の扉を開けると"執事"と2人の"フットマン"が「おかえりなさいませ、お嬢様」とご挨拶し、私たちを出迎えてくれた。"執事"は、漫画などに出てくるような英国紳士のように、気品を感じさせる立ち振る舞いを身につけた大人の男性。2人の"フットマン"は背の高い青年で、コートや鞄などを持ってくれた。そして、私たちの来店(帰り)に気付いた"フットマン"たちが「おかえりなさいませ、お嬢様」の言葉ともに立ち並んで出迎え。その仰々しさと緊張のあまり、思わず恐縮したように頭をいちいち下げてしまう私だった。
お屋敷内を見渡すと、そこには素敵な世界が広がっていた。テーブルの数は24(うち、個室のような造りが6)、椅子は55席が用意され、インテリアは英国調に統一、そして緩やかな優しい照明が包む室内の広さに圧倒される。私は"フットマン"のエスコートで席に案内されるときに、やっと少しだけ背筋を伸ばして歩けるようになった。