「Yahoo!メール」が2022年3月1日から新ドメイン「ymail.ne.jp」のメールアドレスを提供するそうだ。
これまでは、1999年のサービスイン以来、@の右側は「yahoo.co.jp」のみだったので、自分が欲しいシンプルなメールアドレスの取得はまず無理に近かった。仕方がなく、名前と生年月日や別の文字列を組み合わせるなどしていたユーザーも少なくないはずだ。悩んでいるうちに、もう、記憶するのが不可能に近い、怪しげな文字列になってしまうこともある。
Yahoo!メールで新ドメイン、3月1日は争奪戦か
新しい「ymail.ne.jp」ドメインは、同サービスの利用者なら誰でも取得でき、これまで使っていたアドレスと同じメールボックスで管理できるという。
つまり、サービスのユーザーにとっては、二つ目のメールアドレスとなる。この施策によって、@の左側の固有の文字列を「abc」にしたメールアドレスが欲しかったのに、先客がすでに取得していたために「abc1234」にせざるをえなかったといった場合に、望みの「abc」を取得できる可能性がある。
受付開始は3月1日の14時頃が予定されているが、当然、「abc」の持ち主も、自分で取得したいと考えるだろう。争奪戦になるのは想像に難くない。とはいえ、1999年といえば、ケータイメールが絶好調になる寸前だったから、Yahooのメールアドレスは、取得しただけでそのまま放置というユーザーもたくさんいるだろう。欲しいメールアドレスが取得できるそれなりの望みはあると思う。
メールアドレスは@の左側に名前、@の右側に組織名という並びにより、名前@組織名という組み合わせで世界で唯一の文字列を形成する。ここでいう組織名は、会社や学校の可能性もあれば、「Yahoo! メール」のようなサービス名のこともある。また、個人や家族で組織を構成する場合もある。一人だって組織なのだ。
プロバイダー契約とセットだったメールアドレス
一般市民がインターネットに慣れ親しんでいったのは1990年代の中頃以降で、その間には、ケータイメールの全盛期もあった。また、迷惑メールの台頭がメールの信頼度を著しく下落させたような時期もあった。どの時期にメールを使うようになったかで、メールシステムそのものに対する認識は異なるにちがいない。
それに、一般の人が、インターネットを使うようになった90年代は、インターネットプロバイダーと契約すると、メールアドレスがひとつ貸与されるというケースが多かった。だから家族にひとつのメールアドレスというのも珍しくなかった。そこにケータイメールが出現し、ようやくメールアドレスは個人のものという感覚が浸透していった。今から考えるとウソのような話だが、25年ほど前は、それが当たり前だったのだ。そして、Gmailのサービスインがメールのいろんな新しい当たり前を作った。
まあ、メールアドレスは、本人確認も何もなくカネで買える。タダでも手に入る。もちろん、れっきとした会社や学校等が持つドメインを得るためには、いろいろな手続きが必要だが、そこにこだわらなければ、誰でも自分で好きなドメインを買い、好きな名前でコミュニケーションを開始できる。
とはいえ、皮肉なことに、世界中で一意であることが求められるからこそややこしい文字列になってしまうメールアドレスも、人間がそれを意識することはあまりなくなりつつもある。つまり、アドレス帳から相手の名前を選ぶだけでメールを送信できるわけだ。
これは10桁を超えるような連続した数字である電話番号も、覚えやすいものが欲しいと思う一方で、そんなものは誰も覚えなくてすむようになっているのと似ている。今や、家族の携帯電話番号でさえウロオボエということも少なくなさそうだ。ケータイを紛失して、家族と連絡をとりたくても、電話番号がわからなくて途方に暮れるということだってありそうだ。
スマホ無しではSNSも電話番号も意外とあやふや
家族の電話番号も、メールアドレスもわからない、使っているSNSのアカウント名も不明。スマホが手元になければ連絡もできない、そういう綱渡り状態で暮らしが成立しているかと思うと、ちょっと怖くなる。だからこそメールアドレスくらいは覚えやすくて忘れそうにないものを取得しておくというのは悪くない危機回避法だ。
もっとも、人にメールアドレスを伝えるときに、自分でさえウロオボエで、間違って伝えてしまうというケースはまだまだ多い。
個人的にもかなり頻繁に、他人のカードの利用明細や、新規サービスへのパスワード照会、ログイン確認などのメールが届く。自分のメールアドレスを間違って登録しているのだ。とりあえず、無視することにしているが、就職説明会の案内などのメールを見ると、ちょっと気の毒になる。