週明けの月曜日(2021年11月8日)、手元のThinkPad X1 nanoに、Windows UpadateでWindows 11のダウンロードを促すメッセージが表示された。

Windows 11は、互換性が確認された環境については、自分でインストールアシスタントを使ってダウンロードしてインストールすることもできるが 、その互換性が確認された旨のメッセージがしばらくの期間表示され、その後、ある程度の期間を経ると「ダウンロードしてインストール」のボタンが表示される。

そして、ボタンをクリックすれば、その場ですぐにアップグレードすることができる。

  • ThinkPadにもWindows 11のアップグレードが降ってきた

メッセージが表示されるタイミングはメーカーや機種によってまちまちだ。基本的に、メーカー側がもう大丈夫という判断をした時点でトリガーをひくイメージだ。いわば太鼓判だ。

レノボに限らず、どのメーカー製パソコンでも、同様のイメージでアップグレードが進行していく。このメッセージには「今はWindows 10の使用を継続します」というコマンドリンクも用意されているのだが、今のところ、Windows 11と互換性のあるパソコンでWindows 10を使い続けるつもりはないので、その選択がどのような遷移をするのは未確認だ。

ThinkPadの生まれ故郷、大和研究所の使命

そんなタイミングで、レノボ・ジャパン合同会社大和研究所に新サイトリーダーとして着任した執行役員の塚本康通氏が、最新の取り組みについて説明するブリーフィングが開催された。

  • 大和研究所のサイトリーダーに着任した執行役員の塚本康通氏

ThinkPadは、日本の大和研究所、米国のラーレイ、中国の北京という3つの拠点、いわゆる「イノベーショントライアングル」による連携で作られている。その中でも重要なミッションをもつ大和研究所は、日本国内だけではなく世界各国の異なるニーズをとらえ、連携してかたちにしていかなければならない。

塚本氏は、日本の働き方改革について言及し、インターネットの時代、その働き方がずいぶん変わってきたこと、そして、かつてのすごく働く日本人というイメージも、変わってきたことを指摘した。

その日本人を支援する道具としてのThinkPadも変わらなければならない。だからこそ幅広い技術に取り組むことが必要だと塚本氏はいう。

それでもThinkPadの製品哲学は変わらない。次の3要素は連綿と受け継がれている。

  • Purposeful Design(明確な意図がこめられたデザイン)

  • Trusted Quality & Security(信頼にたる品質とセキュリティ)

  • Relentless Innovation(あくなきイノベーション)

さらに、開発哲学として、そのゴールはその時代に合わせた生産性向上によって顧客の成功を支えることとしている。その実現のために開発哲学があり、開発のベースがある。

今、世界がハイブリッド化している中で。場所を問わず最高の生産性を発揮するために。すべての人々のためのスマーター・テクノロジーが求められていると塚本氏はいう。それをデバイス、コラボ、インフラのかたちでレノボが提供することで、顧客は、本来集中すべきDXに専念できるのだ。

多様化する世界で「いいパソコン」は誰のもの?

塚本氏は、自分たち自身もThinkPadのユーザーであり、自分たち自身が生産性高く働くために、いろいろなことをやってきたという。

1992年に誕生したThinkPadは来年(2022年)の30周年に向けて仕込みが着々と進行しているようだ。“大和研究所といえばThinkPad”というのは、この開発拠点が今のみなとみらいに移転するずっと以前、日本アイ・ビー・エムの大和事業所にあったころから変わらない。

  • 過去のプロトタイプも惜しみなくお披露目

塚本氏の出自は公開されている。2002年に日本アイ・ビー・エムに入社し、ThinkPad Tシリーズの内製開発EEエンジニアとしてキャリアをスタートした。個人的にはもっとも好きだったThinkPadはTシリーズなので親しみがわく。レノボがIBMからIBM PC部門を買収したのは2005年なので、そのほんの少し前のことだ。

塚本氏がいうように、働き方の多様化と製品作りには密接な関係がある。そして、今は、製品化の意志決定の難しさを抱えているに違いない。

どんな立場の誰が評価するのか、どの国が評価するのか、ユーザーの働き方が多様化するということは、個々のユーザーが求める「いいパソコン」が異なる可能性があるということだ。ミレニアムやZの世代が十把一絡げで語られることが多い中で、決してそうではないようなムードもある。

そんな中で、ThinkPadは、何をどう提案しようとしているのか。コロナ禍の影響も取り入れた30周年を迎える新ThinkPad、塚本氏はお楽しみとしかいわない。氏のリーダーとしての仕事を興味深く、そして楽しみにしたいと思う。