ケーニグゼグ最新のハイパーカーは、パワーウェイトレシオ1:1未満で家族愛の結晶!?

最高出力1,625hp、最大トルク1,500Nm、車両重量1,320kg(乾燥重量)、250km/h時のダウンフォース850kg、最大ダウンフォース1,765kg(理論値)。ケーニグゼグ「ジェスコ・サデェアズ・スピア」のスペックは圧巻だ。サーキット専用車に匹敵する性能ながら、世界各国の公道走行基準を満たす稀有な存在である。限定30台という希少性も相まって、VIP顧客向けのプライベート発表会で瞬く間に完売となった。

【画像】徹底的に計算し尽された空力パッケージと、圧倒的な加速力を誇るケーニグゼグ「ジェスコ・サデェアズ・スピア」(写真16点)

「サデェアズ・スピア」という名前は、創設者クリスチャン・フォン・ケーニグゼグの父、ジェスコ・フォン・ケーニグゼグが1976年の最後のレースで騎乗した愛馬に由来する。ジェスコは、40年間にわたって馬術競技に携わり、20年間はアマチュア騎手として活動した。1995年に自身の事業を売却した後、ジェスコは息子クリスチャンの新会社を「6週間だけ」手伝うつもりだった。しかし、その6週間は5年間に延び、ケーニグゼグ・オートモーティブの初代会長として、取締役会の構築や事業の基盤、方針、組織の確立に尽力した。

搭載される5.0リッター・ツインターボV8エンジンは、アルミニウム製でフラットプレーン・クランクシャフトを採用する。圧縮比9.0:1、ボア92mm×ストローク95.25mmの設計により、E85燃料使用時に1,625hp、レギュラーガソリンでも1,300hpを7,800rpmで発生する。なお、レッドラインは8,500rpmに設定されている。トルクカーブがユニークで2,700rpmから6,170rpmという広範囲にわたって1,000Nmを維持し、5,100rpmで最大トルク1,500Nmに達する。あらゆる回転域で圧倒的な加速力を発揮することが読み取れる。

ツインセラミックボールベアリングターボチャージャーは、ガソリン使用時1.7bar、E85使用時2.2barのブースト圧を発生。カーボンファイバー製インテークマニホールドと、0.8mm厚のインコネル製エキゾーストマニホールドが、最適な吸排気効率を実現している。動力伝達を担うのは、ケーニグゼグ独自開発の9速ライトスピード・トランスミッション(LST)だ。フライホイールレス設計により、従来のトランスミッションでは不可能な超高速ギアチェンジを実現している。シフト操作はステアリングホイール背面のパドルシフトのみで行われ、フォーミュラカーさながらの操作感を提供する。

サデェアズ・スピアの最大の特徴は、徹底的に見直された空力パッケージにある。新開発のダイナミック・アクティブ・ツインプロファイル・リアウイングは、トップマウント方式を採用。フロント部分では、拡大されたスプリッターにアクティブ・アンダーボディ・エアロフラップを装備。大型ホイールエリア・ディフューザー、フロントフード・エアダム、サイド・フロント・ウイングレット、サイドスカート・ウイングレットが、統合的に空力性能を最適化している。

モノコック構造はカーボンファイバー製で、アルミハニカム構造と燃料タンクが一体化されている。ねじり剛性は65,000Nm/degを実現し、クラッシュゾーンを備えた安全構造も確保。ボディパネルはプリプレグ・カーボンファイバー/ケブラー製で、軽量サンドイッチ構造により強度と軽量化を両立し、乾燥重量1,320kgを実現している。

サスペンションはダブルウィッシュボーン式で、リア上部ウィッシュボーンはカーボンファイバー製だ。電子制御式プッシュロッド・ガス油圧ショックアブソーバーに、フロント・リア共にトリプレックス・ダンパーと軽量スプリングを組み合わせている。電子制御式車高調整機能も装備し、フロント70-100mm、リア75-100mmの範囲で最低地上高を調整可能だ。また、段差や駐車場の出入りに対応するフロントリフトシステムを装備し、作動時は通常より50mm車高を上げる。

ブレーキはフロントに直径410mm×厚さ38mmのベンチレーテッド・セラミックディスクと6ピストンキャリパー、リアに直径395mm×厚さ32mmのディスクと4ピストンキャリパーを装備。最新世代の積層セラミックディスクとスポーツABSにより、圧倒的な動力性能に見合う制動力を発揮する。

ホイールは、ケーニグゼグ独自のカーボンファイバー製で、フロント20×9.5インチ、リア21×12.5インチのセンターロック式だ。タイヤは標準でミシュラン・パイロットスポーツCup2、オプションでCup2Rを設定。フロント275/35-20、リア335/30-21というサイズが組み合わせられる。

室内に目を向けるとカーボンスポーツバケットシート、標準の3点式シートベルトに加え、6点式ハーネスがオプション設定される。オーディオシステム(Apple CarPlay対応)、USB接続、ワイヤレス充電、クライメートコントロール、オートスキン電動油圧システム(ドア・フード自動開閉)、バーズアイビュー・パーキングアシストなど、日常使用に必要な装備は揃っている。

価格は公表されていないが、漏れ伝わっているのは380万ポンド~(約7億4,000万円~)とのこと。

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ケーニグセグ

Words: Takashi KOGA (carkingdom) Photography: Koenigsegg