国際放送機器展「Inter BEE 2022」が11月16日に千葉・幕張メッセで開幕。11月18日まで開催されている。ここでは、Clystal LEDディスプレイを使ったバーチャルプロダクションスタジオの実演デモが注目を集めていた、ソニーブースの様子をレポートする。

  • ソニーがInter BEE 2022で展開していた、バーチャルプロダクションスタジオの実演の様子

なお、Inter BEE 2022ではオンライン会場での展示や各種セミナーも11月1日から12月23日まで実施される。幕張メッセ、オンラインともに事前登録(無料)すれば参加可能だ。

  • ソニーブースの外観(展示ホール7 ブースNo. 7415、No. 7416)

ソニーブースは通りを挟んで大小2つに分かれており、注目を集めていたのが、バーチャルプロダクションスタジオの実演を行うエリア。メインエリアと比べるとコンパクトではあるが、それでも4KサイズのCrystal LEDを用いた大画面バーチャルプロダクションスタジオは迫力満点。開幕初日から多くの来場者が足を止めて見入っていた。

  • Crystal LEDディスプレイを背景に、女性モデルが気ままに動き回る

Crystal LEDディスプレイの映像を背景に、被写体となる女性モデルがひとりで立ち、何もない場所を自由に歩き回ったり腕をのばしたりしている。その姿がカメラを通してモニターに写っているのだが、映像の中では女性モデルが小さくてカラフルなボールの間を縫うように歩いている……つまり、実物の被写体(女性モデル)とカメラの間には本来存在しないはずのオブジェクト(平面に表示された3DCG)が奥行き感をもって浮かび上がり、カメラ越しの映像の中で違和感なくスムーズにライブ合成されているのだ。これが非常に面白い。

  • 業務用モニターの中では、バーチャルCG映像と実物の被写体が、奥行き感をもって合成されていた

ちょっとしたマジックか何かのようだが、既にSixTONESのミュージックビデオなどで活用されている映像制作技術だ。本稿では技術面の詳細な説明には立ち入らないが、バーチャルプロダクションスタジオがどういう技術か詳しく知らなくても、ひと目でその面白さを多くの人に伝えられてしまうのがスゴい。会期中に幕張メッセへ足を運べるのであれば、一見の価値アリだ。

  • Crystal LEDディスプレイの後ろ側はこんな感じ。無数の配線がキチンと整理されているところにプロの技を感じる

ソニーブースではほかにも、2022年9月にオランダで開催された国際放送機器展「IBC 2022」に合わせて発表した、クラウド制作プラットフォーム「Creators' Cloud」と、オンプレミス クラウド・ライブプロダクション「Networked Live」をブース正面に展開。映像制作のワークフローの効率化を支援する、多彩なソリューションを紹介している。

「Creators' Cloud」は、クラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせて、新たな映像表現や迅速かつ効率的な制作を実現する“次世代のクラウド制作プラットフォーム”。限られた制作人員で、迅速かつ効率的に映像コンテンツを制作し、市場の変化にすばやく対応することが映像業界共通の課題として挙げられており、それを解決するソリューションとして提案しているものだ。

ブースでは、多彩なカメラで撮影した映像をクラウドへ伝送するゲートウェイとなるクラウドカメラポータル「C3 Portal」、ソニーが培ってきたAI技術とさまざまなメタデータを活用したワークフローのひとつである、新たなAI映像解析サービス「A2 Production」、制作チームによるリモート操作・同時作業による生産性の向上を目指すクラウド中継システム「M2 Live」を展示。また、収録された素材や編集されたファイル映像を制作チーム間で共有できる、映像制作に特化したクラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud」も紹介していた。

  • Creators' Cloudの展示コーナー

「Networked Live」は、同社が業界に先駆けて提案してきた、IPベースの映像制作ソリューション「IP Liveプロダクションシステム」の枠組みを広げ、ネットワークにつながる制作機器やクラウド上の制作リソースなどを活用した、次世代のリモートプロダクションにも対応するもの。

放送局などが使用するネットワークの効率化に加え、オンプレミスやクラウドに分散した制作リソースを必要に応じて組み合わせることで、場所や規模を問わずライブプロダクションの環境を構築することが可能になるという。同ソリューションに対応する新製品として、ライブプロダクションスイッチャー「MLS-X1」を展示していた。

  • Networked Liveの展示コーナー

ブースの奥にはαシリーズのカメラやレンズ、空撮ドローン「Airpeak S1」を紹介するコーナー、試し撮りができるエリアも展開。新製品として、シネマティックな映像をリモート撮影できる「FR7」(11月11日発売/単体132万円)の姿があった。

  • 試し撮りができるCamera Studioエリア

  • Cinema Lineシリーズの映像制作用カメラ新機種「FR7」

  • 天井から「FR7」を吊り下げて活用できるといった設置性の高さをアピール

FR7は既報の通り、映像制作用カメラ「Cinema Line」シリーズの中では“異色”ともいえる、レンズ交換式のフルサイズセンサー搭載のカメラ部と、パン・チルト旋回台が一体化したカメラで、4K(3,840×2,160ドット)/120fpsで最大5倍のスローモーション撮影にも対応。マウントはEマウント。電動ズーム搭載のレンズキット(161万7,000円)も用意する。

  • FR7でとらえた映像を業務用モニターに出力してチェック。スイッチャーやタブレット用の操作用アプリも展示されていた

  • ソニーの空撮ドローン「Airpeak S1」

  • Airpeak S1用の新しいバッテリーパックの参考展示もあった