アイリスオーヤマは7月15日、炊飯器の新モデルとなる「瞬熱真空釜 IHジャー炊飯器5.5合(RC-IF50-B)」(以下、瞬熱真空釜)を発表しました。発売日は8月6日で参考価格は60,980円です。

大きな特徴は、世界で初めて炊飯器に搭載したという「ヒートパイプ」技術(同社調べ)。これによって炊飯時にあえてお米を「おどらせない」炊飯プログラムが可能になったとし、いままでにない粒立ちのご飯が炊けるといいます。新製品発表会で実機を触ってきたので、発表会の内容とともにレポートします。

  • 会場に展示されていた瞬熱真空釜。本体サイズは幅249×奥行き353×高さ239mm、重さは6.1kg。5.5合炊きの炊飯器としてはちょっと大きめサイズ

  • 瞬熱真空釜を手にするマイナビニュース・デジタルの林編集長。後述する「銘柄量り炊き」機能を備えるため、普通の炊飯器より奥行きがある本体デザインです

炊飯器では世界初となるヒートパイプ技術を搭載

瞬熱真空釜の特徴は、その名前の通り内釜に真空釜を採用していること。釜内部には4mm厚ほどの真空な空間があり、この空間内に作動液を封入。釜底を加熱すると作動液がすぐに沸騰し、加熱された蒸気が釜上部の空間を即座に温めます。

これにより、釜全体をすばやく均一に加熱するのが従来製品との違いです。この「真空内に封入した液体が蒸発してすばやく熱移動する」仕組みをヒートパイプといいます。

  • ヒートパイプ技術を応用した瞬熱真空釜の内釜。真空釜のためか、内釜だけで2kg弱とズッシリ。持ちやすいようにハンドルが取り付けられています

  • 発表会の会場では、ヒートパイプの熱を伝えるスピードの違いをデモンストレーション。写真左は普通の銅のパイプで、右が銅製のヒートパイプ。どちらにも「熱くなると紫→ピンク色になる素材」を巻き付け、沸騰したお湯に3cmだけ浸けます。ヒートパイプの管は10秒ほどで筒全体がピンク色に変わりました

高級炊飯器の多くは加熱方式にIHを採用していますが、IHはコイルが接している金属を発熱させる方式。このため、炊飯器底面にIHコイルを配置すると、底面だけが熱くなりやすいという問題がありました。

メーカーによっては側面にもIHを配置したり、炊飯器のふた部分にもヒーターを内蔵したりと、熱ムラが出にくいように工夫していますが、どうしても多少の熱ムラは起こります。今回の瞬熱真空釜はヒートパイプを利用することで、内釜の熱ムラを解消。会場のサーモグラフィー映像を見ると、釜が驚くほど均一に加熱されているのがわかります。

【動画】一般的なIH炊飯器の内釜と瞬間真空釜で、熱の伝わりかたをサーモグラフィーでチェック。一般的な炊飯器の内釜はIHコイルのある釜底だけが高温になるのに対し、瞬間真空釜は釜全体が均一に加熱されているのがわかります

かまど炊きのお米は「おどらない」!?

ヒートパイプ技術を使うことで、瞬熱真空釜が実現したのは「おどらせない炊飯」です。現在、家電メーカーの多くが高級炊飯器に「高温で激しく沸騰させてお米をおどらせる」機能を搭載。お米が釜内で大きく動くことで、一粒一粒の温度ムラをなくしたり、表面をうまみ成分で覆ったりする効果があるとされます。

しかし今回、アイリスオーヤマが本物のかまどで実験してみたところ、実はかまど炊飯では、釜内のお米はほとんど動いていないという結果が。むしろお米が激しく動くと、お米表面が傷つくデメリットがあるといいます。

  • 緑・赤・青で色分けしたお米を重ねて層を作り、本物のかまどで炊いたところ、炊飯後も色の層はほぼ崩れていませんでした。つまり、かまど炊飯ではお米が大きくは動いていなかったのです

アイリスオーヤマによると、かまど炊きが美味しい理由は、炎がかまどを包み込むことで釜全体が瞬時に、そして均一に加熱されるからだと。そこで瞬熱真空釜では、前述したヒートパイプ技術を採用し、釜全体が短時間で均一に加熱できるようにしています。

炊き上がりは、かまど炊きのように粒立ちがよく、ツヤのあるご飯になるそうです。また、一般的な炊飯器は釜底面近くのご飯は潰れやすく、ベチャつきやすいものですが、瞬熱真空釜で炊いたご飯は底面近くでもしっかりとした粒立ちを保持できるとしています。

今回の発表会では残念ながら、コロナ禍の影響で試食はありませんでした。登壇したお米のスペシャリスト、お米マイスターの西島豊造氏によると、「米に精通した自分でも、いままで経験したことのない食感」のご飯に炊き上がると。味については、比較的主張しすぎない優しい味で、米本来の味を堪能しやすいとコメント。味や香りを主張させすぎないので、とくに朝ご飯にオススメとしていました。

  • お米マイスターの西島氏は、瞬熱真空釜で炊飯したご飯について「圧力炊飯はギラギラしたツヤになりがちですが、瞬熱真空釜で炊いたご飯は優しいツヤが特徴的。丸みとふっくら感のある炊き上がりで、噛(か)むと優しい甘さがじわじわと出てきます。くどさがなく、朝から食べても疲れない味。ゆっくり食べることで、満足感をしっかり得られる味です」と評しました

  • 瞬熱真空釜で炊いたご飯のサンプル。時間がたっているのか、少し乾燥してツヤはイマイチですが、確かに粒はしっかりしている見た目

瞬熱真空釜は、アイリスオーヤマの人気シリーズ「銘柄量り炊き」最上位モデル

今回の瞬熱真空釜は、アイリスオーヤマの炊飯器シリーズ「銘柄量り炊き」のフラッグシップモデルでもあります。銘柄量り炊きシリーズは「こしひかり」や「つや姫」といった銘柄ごとに、最適な加熱ブログラムで炊き分けが可能です。

瞬熱真空釜でも、「こしひかり」や「つや姫」など有名6銘柄のブランドをボタンで切り替えられますが、本体で表示する銘柄以外にも「きらら397」や「ハナエチゼン」は「こしひかり」に対応。「あさひの夢」「ふっくりんご」は「ゆめぴりか」に対応するなど、表示できる銘柄以外のお米にも対応しています。

  • 「銘柄」ボタンを押すことで銘柄を切り替えられます。表示できる銘柄は6銘柄ですが、全部で50銘柄に対応しています

  • 操作はタッチパネル式で、必要な情報だけが光って浮かび上がるタイプ。使わないときは表示液晶が消え、シンプルな天面デザインになります

銘柄量り炊きのもうひとつの特徴が、本体内に重量計を内蔵していること。お米を投入すると、その重量から銘柄に最適な水の量を計算してくれます。また、内蔵の重量計を利用して、お椀によそった分のカロリーまで計算できるます。こうした機能から、銘柄量り炊きはカロリーを気にする層にも人気がある炊飯器です。

  • 銘柄量り炊きは、お米の重さに対して必要な水分量を自動的に計算。中途半端に残ったお米でも最適な水分量で炊飯できるのはうれしいメリット

瞬熱真空釜のポイントでもある「ヒートパイプ」は、アイリスオーヤマが製造しているLED照明に採用している技術でもあります。瞬熱真空釜はある意味、アイリスオーヤマだからこそ開発できた炊飯器といえるかもしれません。今回の発表会では瞬熱真空釜で炊いたご飯を試食できませんでしたが、お米のプロが「いままで経験したことのない食感」というだけに、近々ぜひその味を確かめてみたいと思っています。