コロナ禍における在宅時間の増加によって、EC・通販需要は伸長。自宅からのリモートワークは、一時期は落ち込んでいたPC需要も大きく成長させた。新型コロナ前後で我々の購買体験がだいぶ変わったのは、実感している人も多いのではないだろうか。
日本マイクロソフトは2021年6月8日、新たな取り組みとして2021年4月からビックカメラ.comに導入した、オンライン接客システムを披露する説明会を開催した。「(サービス開始から2カ月しか経過しておらず)数字として明確なものはないが、直接オンラインストアで購入するよりも、オンライン接客を受けてから購入する率が高い」(日本マイクロソフト コンシューマー事業本部 コンシューマーマーケティング本部 森洋考氏)と説明する。この取り組みは継続する予定だ。
今回のオンライン接客システムは外部のスタジオを利用して、学生の学習部屋やリモートワーク、台所やリビングといった実生活を再現するモデルルームを用意。日本マイクロソフトが全国に派遣する販売員のなかから、店頭で活躍していた人を選出したMicrosoft Product Advisorが接客を担当する。PCのディスプレイやスマートフォンを介して、Surfaceシリーズをはじめとしたデバイスの特徴紹介や、購入アドバイスを行う無償のサービスだ。
興味深いのは、オンライン接客に用いるツール。オンライン会議ソリューションとして定着したMicrosoft Teamsではなく、国内ではあまり知られていない「Go Instore」を採用した。最近はインフルエンサーが動画SNS経由で商品の購入ガイドを行うライブコマースなど、消費者の購入体験を重視する動きが強まりつつあり、消費者と販売員をつなぐGo Instoreのようなソリューションが適していたのだろう。日本マイクロソフトによれば「グローバル共通の仕組み」(森氏)とのことだ。
Go Instoreは1対1のビデオ通話機能を備えているが、日本マイクロソフトのオンライン接客の場合、消費者は音声のみ参加。日本マイクロソフトは「我々アドバイザーは顧客の顔を見ることはできない。実店舗以上に、顧客の声に集中して耳を傾けている」(Microsoft Product Advisor 荒川涼子氏)といった工夫を講じているという。店舗に足を運ぶことなく普段着のまま商品の相談を受けられるのは、PCに詳しくなかったり、商品のカラーバリエーションをその目で見たいといった向きには有用だ。
それでも、カメラと画面越しでは製品表面の品質など伝わりにくいところは多々あるため、「(顧客が)見えやすいようにカメラワークを工夫」(荒川氏)する場面もあるという。日本マイクロソフトは本サービスについて「顧客が好きなタイミングでアクセスできる。ライフスタイル空間を用意し、顧客の利用シーンを想定した接客や、販売員と顧客の新型コロナウイルス感染リスクを抑えて対応できる」(荒川氏)と、3つの利点を掲げた。
日本マイクロソフトのオンライン接客は、11時から22時の間で予約なしで利用できる。もし、常駐する4名の販売員が対応できない場合、Webページ上でその旨を示す仕組みを設けている。接客時間の上限は設けていないが、現時点では5~10分程度の利用が多いという。
利用者の中心となっているのは、近くに実店舗がないが実機を見たいという人(都心や地方といったデータは現時点で取得していないため不明)。仮に、実店舗の有無が利用率を左右するのであれば、都市郊外に在住する消費者が多そうだ。サービス開始直後は大学に入学する学生や保護者の駆け込み相談が多く、それ以降はリモートワーク用途の相談にシフトしているという。
前述のとおり本サービスは今後も継続する予定だが、日本マイクロソフトは「他の販売店へ拡大する可能性はある。OEM製PCへ広げることも検討中だ。将来的にはOEM製周辺機器の同時購入も検討したい」(森氏)と、サービス拡大の可能性に言及した。
今回の取材に同席した販売員の荒川氏も「これまでメールや動画閲覧など顧客の用途を伺いながら、将来性を踏まえたモデルを提案してきた。顧客満足度は高いように感じる」とこれまでの成果を語った。田舎の両親がPCを購入するといった場面に本サービスを紹介すると喜ばれそうだ。