Qualcomm Technologies, Inc.は5月24日の朝(日本時間で5月25日0時)に"Scaling the Mobile Compute Ecosystem"と題したオンライン発表会を開催し、ここでSnapdragon 7c Gen 2とSnapdragon Developer Kit for Windows 10 PCs、及びZoom用ドライバの提供を発表した。これを順にご紹介したい。
Snapdragon 7c Gen 2(Photo01)
QualcommのPC(ACPC)向け製品は、スマートフォン向けほどでは無いにせよ、これも数が多い。元々Qualcommは2016年にSnapdragon 835のWindows 10サポートを表明後、2017年にはSnapdragon 835の動作デモ、2018年には後継のSnapdragon 850を発表する。同じ2018年末にはSnapdragon 8cxを発表し、投入時期は2019年中と説明された。このSnapdragon 8cx搭載製品は2019年の第3四半期以降徐々に市場投入されていったが、その2019年末にSnapdragon 7c/8cが発表される。Snapdragon 8cはSnapdragon 850の後継、Snapdragon 7cはエントリ向けに新たなマーケットを開拓という形の位置づけになる。2020年にはハイエンドのSnapdragon 8cxがSnapdragon 8cx Gen 2 5Gに刷新しており、今回はこれに続く動きとなる。
主なスペックはこちらに示す通り(Photo02)。CPUはSnapdragon 7cと同じKryo 468 Gold(Cortex-A76)×4+Kryo 468 Silver(Cortex-A55)×4という8コア構成は変わらないが、従来は最大2.4GHzだった動作周波数が2.55GHzにやや引き上げられている。ただ主な違いはその程度に思われる。モデムはSnapdragon 7cと同じく4G対応のX15だし、Wi-Fi/BTについてもWi-Fi 6/6EやBluetooth 5.2への対応は見送りとなっている。製造プロセスは現時点で言及は無いが、逆に言及がないという事はSnapdragon 7cと同じくSamsungの8nmプロセスの可能性が高い。
もっともQualcommとしては前世代製品との比較よりも、競合製品との比較前面に押し出したいようで、価格比較(Photo03)やユーザー体験(Photo04)、搭載されるISPやAudio Engine(Photo05,06)、性能(Photo07,08)などをアピールした。
Snapdragon Developer Kit for Windows(Photo09)
2つ目が、Snapdragonを搭載した開発向けのWindows 10 PCであるSnapdragon Developer Kit for Windowsである(Qualcomm的な正式名称は"Snapdragon Developer Kit"で、ただこれだと何のプラットフォームか判らないので後ろに補足を入れている様だ)。要するにソフトウェア開発者向けにWindows 10 on Arm 64bitのテスト環境を提供するための機材である。同社によればテスト環境としてノートPCを購入するよりも、より安価なオプションを提供するとある。現時点ではまだ具体的なスペックは一切公開されていないが、恐らくはSnapdragon 7cx Gen 2あたりをベースにしているものと思われる(Photo10)。こちらは今年夏から提供予定である。
Snapdragon対応版Zoomを提供(Photo11)
3つ目の発表はZoom Video Communicationsから行われた。同社はこの夏をめどに、Snapdragonに最適化を施した新バージョンのZoomを提供予定である。実際にSnapdragon 8cxベースのプラットフォームでZoomを動かした場合、現行バージョンだとバッテリーフルの段階から7時間3分でバッテリーゼロになる(Photo12)が、新バージョンでは7時間50分(Photo13)までバッテリー寿命が延びる。つまり12%の省電力化が実現できた、という訳だ。