ゼンハイザージャパンは5月10日、スイスのSonova(ソノヴァ)による、独ゼンハイザー本社のコンシューマー事業の買収についてメディア向けの説明会を開催。ゼンハイザージャパン セール&マーケティングディレクター コンシューマーの榊山大蔵氏が、事業譲渡の概要と今後について説明した。

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既報の通り、独ゼンハイザーのコンシューマー事業は、補聴器ブランドのPhonak(フォナック)などを展開するSonovaへ、2021年末までに完全に事業譲渡されることとなる。ゼンハイザーは今後はプロフェッショナル事業に注力し、「プロオーディオ」、「ビジネスコミュニケーション」、「ノイマン」の3事業部門にリソースを集中させる。

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    Sennheiser 共同CEOのダニエル・ゼンハイザー氏とアンドレアス・ゼンハイザー氏

Sonovaは、ゼンハイザーブランドを使用するライセンス契約を締結しており、ブランド名は今後も「ゼンハイザー」として維持される。音の入口から出口までさまざまな製品を展開してきたゼンハイザーだが、その基本的な姿勢は変わらず、“ゼンハイザーコンシューマー”、“ゼンハイザープロ”のようにブランドが分かれることもない、とのこと。

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    Sonova CEOのArnd Kaldowski氏

“ゼンハイザーの音”はどうなる?

ゼンハイザーはこれまで、オーディオリスニング用途やプロ向けのモニター用途で数多くのヘッドホンやイヤホンを展開してきた。

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このうち、コンシューマー事業に含まれるのは、完全ワイヤレスイヤホンやBluetoothヘッドホンのほか、有線ヘッドホン「HD 800」、「HD 600」、「HD500」の各シリーズ、有線イヤホン「IE 800」、「IE 300」の各シリーズをはじめとする、音楽リスニング向けの製品となる。

業務用途で活用されるモニターイヤホン「IE 400 PRO」、「IE 500 PRO」やヘッドホン「HD 25」などはコンシューマー事業ではなく、マイクなどとともにプロフェッショナル事業の中に含まれるとのこと。

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「ゼンハイザーの音が変わるのが心配」というユーザーの反応もネット上では見られるが、これについて榊山氏は「(コンシューマー向けの)事業部の完全譲渡なので、開発・生産・工場も含めてすべてが対象。ライセンス譲渡だけで開発部隊が移行しないというわけではなく、いままでゼンハイザーの製品を作っていた人間がそのままSonovaの傘下になっても同じように製品開発に携わる。(音が変わるという)心配は限りなく低いと思っている」と話す。

ゼンハイザー製品の今後の販売ルートについて報道陣に問われると、榊山氏はこれから詳細を詰めていく段階で確定的ではないとしつつ、「Sonovaはコンシューマー事業をやっていないので、ディストリビューションのネットワークはゼンハイザーのものを活かすことになるだろう」とコメント。価格についても大きく変わることはないそうだ。また、カスタマーサポートについても従来通り維持される。

今回のゼンハイザーとSonovaの合意の根幹には「今までのカスタマーエクスペリエンスを下げることのないようにしていく」という考え方があると榊山氏は話す。今後の製品開発についても、「事業譲渡によって開発が止まることはない。2023年までのロードマップを掲げており、そこに大きな変更が入ることはない」(榊山氏)。

榊山氏は、ゼンハイザーもSonovaもモノづくりを重視したところに発祥があり、企業カルチャーの親和性は高いとしつつ、「今回のパートナーは“ドリームパートナー”。ゼンハイザーの音質と、Sonovaの補聴器テクノロジー、これらのお互いの強みをかけ合わせることで大きなポテンシャルを生み出せると考えている。特にヒアラブル製品(エンハンスドヒアリング)のマーケットが大きくなると言われており、競合に対して差別化も図れることが、事業譲渡の大きな理由のひとつ」とコメント。

また、オーディオマニア向けのヘッドホンの市場についても、Sonovaは今後もビジネスとして大きな可能性を見出しており、ゼンハイザーのコンシューマー事業部としても今後強化していきたい」とのことだ。