VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、360度パノラマビューなどの3Dコンテンツが身近になり、それらを立体的に表示する技術や新しいデバイスの開発が各社で進められています。

そのひとつ、3Dコンテンツを再現する技術を研究開発しているアメリカのベンチャー、Looking Glass Factoryが開発する「HoloPlayer One」は、3DメガネやHMDやなどのデバイス無しでホログラム映像が表示できるだけでなく、画面をさわって、3Dコンテンツをインタラクティブに動かせるディスプレイで、2017年11月に開発版が先行発売され話題になっています。

  • Looking Glass Factoryが開発中のホログラムディスプレイ「HoloPlayer One」

現実の空間の中で、立体を投影できるディスプレイ

同社は文字やアニメーションが表示したり、音楽にあわせて動かせる「L3D Cube」という3DのLEDディスプレイをヒットさせていますが、HoloPlayer Oneではそれより大幅に技術を進化させ、実写VRを可能にする次世代映像技術として注目されているライトフィールド技術を採用したホログラムディスプレイを開発しています。lightfoldingという光学システムを使ったLCDスクリーンは、指定された方向に特定のシーンを32ビュー分同時に送信でき、動画像が宙に浮いているような臨場感のある表示ができるとしています。

  • 2016年に発売され話題になった「L3D Cube」

現在発売中のHoloPlayer One開発版は、パソコンをつなげて動かすデベロッパー・エディションが750ドル、単体で開発ができるプレミアム・エディションが3000ドルという価格で、2018年7月には最初の製品版が発売される予定です。

  • 現在開発者向けに2タイプが先行発売されています

日本初公開の「HoloPlayer One」を見てきた

それに先駆けてLooking Glass Factoryの共同創業者兼CEOのShawn Frayne氏がチームと共に来日。4月27、28日に神戸KIITOで開催されたクロスメディアイベント「078kobe interactive」で、開発中のHoloPlayer Oneの展示と実機を使ったワークショップが行われました。

今回展示されたデバイスはワークショップ用で、厚みのあるクリスタルガラスのようなLCDスクリーンが載った立体ディスプレイという形状でした。インタラクティブ機能はジェスチャーコントロールで入力するリープモーションを接続していて、動画像を動かせるようになっています。

これまでにもホログラムを再生できるディスプレイやスクリーンはいろいろありましたが、それらに比べる表示が上下左右から角度を変えても画面がブレず、普通の照明でもくっきり見えます。無料で公開されているSDKを使ってユニティや3Dソフトで制作したコンテンツを簡単に表示でき、ワークショップに参加していた人たちはほとんど数分で作業を完了していました。

  • 開発環境の設定は簡単で初めてでも数分ほどできます

裸眼でも3Dコンテンツの「リアルさ」を実感

それらの作業を見ていて驚いたのは、パソコン画面とHoloPlayer Oneでは全く印象が変わり、コンテンツのリアルさが大きく増すことです。いわゆる没入感が裸眼でも十分感じられ、コンテンツの品質まで上がったように見えます。開発者にとってもそこは驚きで「作業をしながら立体視ができるだけでコンテンツがかなり作りやすくなる」と話していました。Looking Glass Factoryが現時点で目指しているのもそこで、多くのクリエイターにHoloPlayer Oneを活用してほしいとしています。

  • 同じコンテンツもHoloPlayer Oneで見ると驚くほど臨場感が変わるのがわかります

HoloPlayer Oneの見え方を動画でご紹介。見る角度により、表示内容が変わっていくのがわかります

CEOのFrayne氏によるとHoloPlayer Oneが今後どのような形になるのかは検討中で、現在発売中の開発者向けではIntelが開発するRealSense SR300 Depth Cameraでインタラクティブ機能を実現する仕様になっていますが、それが変更されるかもしれません。インタラクティブ機能無しで、クリアなホログラム表示ができるだけでもデバイスとしてニーズがあることもわかってきており、廉価版ディスプレイを発売する可能性もあります。

  • 神戸で開催されたワークショップの様子

バーチャルYouTuberのリアル感が増すかも?

用途はいろいろありそうですが、HoloPlayer Oneは通常の空間でも立体的に3Dコンテンツを表示できるので、たとえば、ニコニコ超会議で話題のバーチャルYouTuberのキャラクターを表示させたり、あるいはスマートスピーカーと連動させてコンテンツにあわせた表示ができるようにするといった使い方ができるようになるかもしれません。

スマートフォンのカメラで撮影した映像をそのままHoloPlayer Oneでリアルに立体表示できるようにする技術も開発中で、それが実現できれば、離れた人たちがバーチャル空間で一緒に仕事や作業するのが当たり前になり、リモートワークの浸透にもつながりそうです。

Looking Glass Factoryは、ホログラムディスプレイの提案先として日本市場をかなり重視しており、製品版の発売に再び日本を訪れて実機を使ってもらう機会を設けるとしています。開発版についても引き続きオーダーを受け付けており、使用にあたってのサポート体制も用意しているということでした。