線画が描きやすいペン設定を納得のいくまで探求

ここからは、実際のイラスト制作手順についての紹介へと移った。前半は、イラストの構想、色分け、イメージを掴むための仮の色塗りまでの解説だ。今回のイラストは、ORYO氏が作曲した"雨"をテーマにしたバラードソングの雰囲気に合わせた、儚げな紫陽花が背景の女の子のイラストだ。まずはラフの描き方について、「何が描いてあるのか辛うじてわかる程度」に太めの線で大雑把に行うという。ラフを描き終えたら、その線の色をパステルカラーなどの明るめの色に変更し、もう少し細かい下描きを描くという。これは、のちの「線画」の作業をラクにするための工程だ。ちなみにラフと下描きを描く際は標準のGペンや丸ペンなどのブラシを用いて「形がわかる程度」にまで描いていくとのことだ。

まず大雑把にラフを描き(左)、線の色を明るめの色に変更(中)して細かい下描き(右)を描いていく。下描きにはラフにはないアクセサリーや袖のフリルなどが加筆されている

次に行うのが線画の作業だ。先ほどと同じように下描きの線の色を明るい色に変更したあとで描いていく。線画は、CLIP STUDIO PAINT PROが標準で備える「チョークブラシ」を、筆圧に応じて太さが変わるように設定を変更して描いているという。鉛筆のようなガサガサ感が出て、線画がとても描きやすいとのことだ。おはぎ氏は、「私にとって線画を描く際のペン設定はとても重要で、描きやすいペンではすごく筆が乗るのに、合わないペンでは全然キレイに描けません。自分が描きやすいペン設定を納得のいくまで探しています」と語った。

線画はCLIP STUDIO PAINT PRO標準の「チョークブラシ」の設定を、筆圧に応じて太さが変わるように変更して描かれている

髪の毛を描く際は「つむじ」の位置を意識してそこから髪を下ろすようにすると描きやすいという

線画は、顔や肌、髪、服、アクセサリーといったパーツごとにレイヤーを分け、フォルダで分類しているという。おはぎ氏は線画をキレイに仕上げるコツとして「線と線が交差する箇所を少し濃いめに描く」ことを紹介。これにより、線画に立体感が出て見栄えが良くなるそうだ。このほか、髪や服のシワなどの部分は肌や顔のパーツなどより細い線で描くと素材の柔らかさが表現できることや、髪の毛を描く際は「つむじ」の位置を意識してそこから髪を下ろすようにすると描きやすいなど、知っておきたい線画のテクニックが伝授された。なお、可愛い女の子を描くには、服装やアクセサリーも重要な要素となるが、おはぎ氏は普段からファッション雑誌やグラビアなどをマメにチェックしているという。なかでもお勧めのファッション誌は「LARME(ラルム)」で、おはぎ氏は「資料」として活用しているとのことだ。

色分けはCLIP STUDIO PAINT PROの「塗り残し部分に塗る」と「透明部分をロック」の両機能を活用

「塗り」でイラストの雰囲気を作る

次に「色分け」の解説へと移った。おはぎ氏は自身のイラストの制作スタイルについて「塗りで雰囲気を作るタイプ」と語るほど、色塗りには強いこだわりがあり、あとで手直ししやすいようにレイヤーは線画のフォルダとは別に「色塗り」フォルダを作成し、さらにパーツ毎にフォルダ分けしているという。色分けはバケツツールを用いて色を入れていくが、その際に線画が大雑把に描かれていると塗り残しが発生してしまう。

こんなときの便利機能として、CLIP STUDIO PAINT PROの「塗りつぶし」ツールにある「塗り残し部分に塗る」(塗り残した部分をなぞるだけで色が入る機能)が紹介された。また、おはぎ氏は色分けの際に色の入っている箇所がわかりやすくするため、まずは濃いめの色を付け、そのあとで色塗りの際のベースになる色に変更するという。その際は色が塗ってある部分以外(透明部分)には色がはみ出ないようにする「透明部分をロック」機能も多用しているとのことだ。

寒色ほど奥に引っ込んで見えて、暖色ほど手前に飛び出して見える「色彩遠近法」でイラストに立体感を出す

続いては、イラストの完成後の雰囲気を掴むために人物や背景に仮の色を乗せていく工程だ。今回は紫陽花を背景に儚げな女の子を描くため、テーマカラーを「紫」に決定したという。構図も背景もシンプルなので、"寒色ほど奥に引っ込んで見えて、暖色ほど手前に飛び出して見える"という目の錯覚を用いた「色彩遠近法」を使って立体感を出したという。

サイズ・濃さの異なる三角形がランダムに描画される「三角テクスチャブラシ」は背景のグラデーションとネックレスの宝石に使用