むしろ大きいのはSkullTrailに関する詳細であろう。SkullTrailとはIDF Beijing 2007で明らかにされた、Xeon DPのプラットフォームをそのまま流用したエンスージャスト向けプラットフォームであり、AMDのQuad FX Platform(というか、FASN8)の対抗製品となるものである。そのXeon(というかWorkstation/Server)プラットフォームでは、まずWorkstation/HPC向けのXeon DPに先行して製品が投入され、その他のプラットフォームは来年以降になる事が明らかにされている(Photo11)が、このXeon DPとして提供されるStoakley Platform(Photo12)のサンプル製品(Photo13,14)と一緒に、SkullTrailのサンプル(Photo15,16)も展示された。

Photo11:Xeon MPはPlatformの検証も含む関係か、来年後半の投入となっている。

Photo12:Photo10と併せて見れば、Seaburg MCHがIntel 5400 Chipsetという型番になることが分かる。Bensleyプラットフォーム発表時点では2008年まで使えるという話だったが、FSBが1600MHzに引き上げられたことで、1年でプラットフォームが刷新されることに。

Photo13:こちらは純粋にサーバー向け構成。16スロットのFB-DIMMスロットがやたらに目立つ。

Photo14:マニアックなネタで恐縮だが、管理用にServerEnginesのSM4210を搭載しているのがちょっと目を引く。これはIPベースのリモートコンソールであるが、遂にこれが標準搭載されるようになったか。

Photo15:SkullTrailのサンプルを手に持つStephen L. Smith氏(Vice President,Director, Digital Enterprise Group Operations)。

Photo16:FB-DIMMは4スロットに減らされ、代わりに4本のPCI Express x16スロットが搭載された。いずれもGen 2のものである。

さてこのSkullTrailだが、Stephen L. Smith氏が行ったPress Conferenceの中でQual SLIをサポートするという話が出てきた。これに関して突っ込んで聞いたところ、

  • SkullTrailは、2本のPCI Express Gen2 x16レーンを持つが、その先にNVIDIAのSwitchチップを搭載し、これを使って4本のスロットに分割している。
  • 技術上は、したがってNVIDIAのSLIだけでなくATIのCrossFireも動作する。少なくともIntelで何かこれを制限したりはしていない。
  • SLIなりCrossFireなりを動作させるための条件は、後は各々のドライバがこれをサポートすることだ。これに関して、NVIDIAのみならずATIも現在作業を行っている。したがってDual SLIやQuad SLI、及びATIのCrossFire/Quad CrossFireが動く事が期待できる。
  • そういう訳でNVIDIAはSkullTrailプラットフォーム上で公式にSLIの動作をサポートする。
  • X38については、CrossFireは動作する。NVIDIAはSLIをサポートしないが、その理由はNVIDIAに聞いてくれ(笑)

といった返答が返ってきた。そんなわけでSmith氏の話とボード構成を元に推定したSkullTrailの構成が図1になる。Photo14でPCI Expressスロットのすぐ右に位置するものがNVIDIAのスイッチチップ、その右がESB2と思われる。各スイッチは、Dual SLI/CrossFire動作時は素直にx16レーンをx16レーンとして渡し、Quad SLI/Quad CrossFireを構成するとか、残りの2本のx16スロットに何か別のデバイスを装着した場合にはx8レーンづつに分割する(つまりLane Splitterとして動作するだけ)といった単純な構成か、文字通りx16 Upstream/x16+x16 DownstreamのSwitchになっている構成なのかは現時点では判断できないが、このあたりは実機を試してみないと確たる事は言いにくい。ただどちらの場合でも帯域に大差はない(Splitterの場合はx8として動作することになるし、Switchだとx16として動作しながら、実質的な帯域がx8相当になる)だろうが。

図1

SkullTrailについてもう一つ。Core 2 Extremeの特徴がLock Free(周波数ロックを掛けないので、倍率変更が自由にできる)であり、これを生かしたオーバークロックをこれまでの黙認状態から最近はやや積極的に薦めるといった調子に変わりつつある。ところがオーバークロック動作の場合、当然これに伴ってメモリの周波数も上がることになる。Seaburg MCHはもともとがサーバー向けだから、FSBとMSBの比率を自由に変更できるといった機能は持っていないだろう。Backward Compatibilityを考えて、1066/1333/1600MHzのFSBと533MHz/677MHz MSBをサポートする程度で、組み合わせの自由度はそれほど高くない。こうなると、オーバークロック時にはより高速なMSBが必須に近いが、FB-DIMMは今のところ533MHz/667MHzしか公式にはサポートされていない。これに関してSmith氏は「Intelは公式には667MHzまでしかサポートしない」としているが、ベンチマークセッションでは事もあろうにDDR2-800搭載(しかもレイテンシが5-5-5)のFB-DIMMが機材として使われ(Photo17)、スタッフは「いやSkulltrailもStoakleyも公式にDDR2-800 FB-DIMMをサポートする」と言い出す始末。いずれはIntelも公式にDDR2-800のサポートをアナウンスすると思われるが、今は社内での方針変更に向けて部署により温度差がある、といったところなのだろう。

Photo17:そういえば以前IntelはDDR2-800はCL5しかValidationしないと言っていたから、CL6としないのはある意味筋が通っているが、メモリチップはともかく、よくAMBが持つものだ。

こうした動きをうけて、当然ながらメモリベンダーも走り出しているようだ。元々AppleのMac Pro向けに800MHzのFB-DIMMが要求されているという話があった事もあり、いくつかのAMBベンダーは800MHzに対応したAMBの出荷をこっそり始めているようだ。たとえばQimondaは、(会場には持ってこなかったものの)PC2-6400 6-6-6のFB-DIMMをラインナップしており、512MB/1GB/2GB/4GBの各製品を既に量産出荷していることが確認された(例を挙げると、512MB品のデータシートはこちら)。会場でも、4社ほどのメモリベンダーが出荷予定あり、もしくはサンプリング/出荷開始中という話であり、またAMBメーカーも少なくとも3社程度が対応するようだ。ただ、Mac ProとSkullTrailを全部あわせても、数としては大した量にはならないため、Validationに要する手間とコストを考えて、800MHzはやらないとするベンダー(たとえばInphiははっきり「やらない」と断言した)もあるようで、このあたりどの程度の数量が実際に市場に流れるかはちょっと微妙である。

ついでに書いておくと、本来800MHzはDDR3世代のFB-DIMM2で行う予定だったが、どうもこの話は事実上立ち消えになったらしい。実際、AMBベンダーのほぼ全てがFB-DIMM2用のAMB2は「今のところ予定はない」としており、仮にあるとすると従来とまったく違うベンダーが手がける事になる訳だが、いくらなんでもそろそろ立ち上がって無いとValidationが間に合わない事になる。今の時点でAMB2に名乗りを上げるベンダーが無い=FB-DIMM2は無い、と考えるのが妥当なのだろう。