iPhone発表の際にSteve Jobs氏は、iPod機能を「これまでで最高のiPod」とアピールした。ワイドスクリーンでビデオ再生が可能。またフラッシュメモリーをストレージとしているため、バッテリー駆動時間が長く、耐衝撃性に優れる。iPodとiPod nanoのハイブリッドといえるような仕様である。だが一番の注目点は、タッチ操作を主体としたインタフェースだ。iPodのクリックホイールは、ライバルの追随を許さない優れた操作性を実現している。当然iPodユーザーは、代わりとなるタッチ操作にクリックホイールと同様の快適さを期待するだろう。iPod機能に関しては、iPhoneのタッチ操作が越えるべきハードルが非常に高い。

iPod機能を起動させると、下部に5つのアイコンが並ぶ。標準では「Playlists」「Atrists」「Albums」「Videos」、そして「More」だ。MoreをタップするとAudiobooks、Podcastsなど、アイコンとして並んでいない項目にアクセスできる。また5つのアイコンのうち、More以外はユーザーが自由に変更できる。

iPod機能では、タッチディスプレイの下部にPlaylistsやArtistsなど、5つのアイコンが並ぶ

More以外のアイコンはユーザーが自由に変更可能。編集画面で他の項目のアイコンをタッチ操作でドラッグ & ドロップする

メニュー・アイコン以外の項目はMoreをタップするとリストされる

Albumsではアルバムアートワークがサムネイル表示される

アーティストでブラウズ

プレイリスト画面

アイコンによる項目切り換えは非常に便利だ。たとえばiPodでプレイリストを作成する際、アーティスト名を基準に楽曲を探し、次にアルバム名を基準に違う曲を選ぼうとすると、階層を上がるために何度もMenuボタンを押すことになる。Menuボタンをカチカチと押しながら、一気に項目一覧に戻れるボタンを付けてくれないかな……と感じた人は多いと思う。iPhoneでは1タップ(More内ならば2タップ)で項目を切り換えられるので、iPodよりも軽快に楽曲やビデオをブラウズできるし、On-The-Goのプレイリストを簡単に作成できる。ちなみにiPhoneでOn-The-Goに楽曲やアルバムを加えるには、「Playlists」 → 「On-The-Go」で[Edit]ボタンを押すと、楽曲の横に青丸が表示されるようになり、それをタップすると登録される。

「On-The-Go」の[Edit]ボタンを押した状態。楽曲名の横に青い丸印が表示され、それをタップするとOn-The-Goに追加される

長いリストでは右端にアルファベットが表示され、それをなぞることで素早い移動が可能

Songsのように長いリストの時には、右端にアルファベットが並び、指のひと動きでリストの頭から最後まで瞬時に移動できる。クリックホイールのクルクルよりも断然速い。

再生画面では右上に、アルバムの楽曲リストにアクセスできるボタンが配置される。また再生画面でiPhone本体を横向きにするとカバーフローに変わる。カバーフローではアルバムのアートワークをタップするとアルバムの楽曲リストに変わる。

ポートレート時の再生画面

再生画面時に本体を横にするとカバーフローになる

再生画面の右上にアルバムの楽曲リストへの切り換えボタン(左)。タップすると画面が回転してアルバムの曲が表示される(右)

不便に思えるのは、再生画面で5つのメニュー・アイコンが表示されないことだ。横向きのカバーフロー時はスペースがなくなるので仕方ないと思うが、ポートレート時の再生画面では、メニュー・アイコンを残した方が便利に思える。

下に5つのメニュー・アイコン。左上に"戻る"に相当するボタン、右上に再生画面へのボタン。画面が広いだけに片手では操作しづらい

クリックホイールとの決定的な違いは、クリックホイールは片手で操作できるが、iPhoneのタッチ操作は画面に現れる操作ボタンが3.5インチのディスプレイの上下に分かれているため片手では操作しづらい。両手が基本になる。また画面を見てボタンの位置を確認する必要もある。画面を見ない状態での操作はほぼ不可能だ。

ただしiPhone付属のヘッドフォンにはマイク部分に小さな操作ボタンがあり、タッチ操作を使わなくても、再生 / 一時停止(クリック)、次の曲に進む(ダブルクリック)などは行える。またiPhone左横のボリューム・ボタンで音量も調節できる。それでも、曲の頭や前の曲に戻りたい時もあるし、音量調節でiPhone本体に触れるのがひと手間に思えてしまう。

マイクと操作ボタンを備えたiPhone専用ヘッドフォン

なぜ画面を見ない状態での操作にこだわるかというと、標準でiPhoneは1分でタッチディスプレイがロックされる設定になっている。ほとんどのユーザーが内蔵バッテリーを効率的に使うために、その設定のままで利用している。音楽再生中でも、1分経てば画面がロックされるのだ (ビデオ再生ではロックされない)。その状態で音量調節またはヘッドフォンでのコントロール以外の操作をするには、スリープ / 復帰ボタンまたはホーム・ボタンを押し、スライダーを動かしてロックを解除しなければならない。これが面倒なのだ……。それで曲の頭に戻りたいのに、あきらめたりする。

画面を見て操作する分には、タッチ操作は便利で、エフェクトも楽しく、クリックホイールで操作したいと思うことはない。特にビデオ再生は、ボタンのない広い画面で存分に楽しめる。だが、音楽再生を楽しむという点ではリモコンが欲しくなる。

ビデオ再生の操作は快適