ワイヤレスジャパン2007会場の中でもひときわ大きなスペースを使い、夏モデルやサービスの展示を行っていたKDDIブース。その一方で、開発中の新システムの展示が多くの人を集めていた。

電波の利用効率をアップする「コグニティブ無線通信技術」

コグニティブ無線技術のかなめのひとつである空電センサ。これを使って電波の利用状況を監視しつつ、トラフィックを予測する

開発中の新システムのひとつが「コグニティブ無線通信技術」。データ通信で複数の無線方式を併用している場合、方式やチャンネルによって電波の空き状況が大きく異なることがある。つまり、"あまり使われていない電波"もあるということになる。この技術は、利用率の低い無線方式で通信を行うように自動的に切り替えることで、電波全体の利用効率を上げようとするものだ。

たとえば、CDMA2000 1X EV-DO Rev.A、モバイルWiMAX、IEEE802.11j無線LANなど、複数の無線方式を併用して、基地局と端末の間で通信を行っているとする。時間ごとに区切ってみると、ある方式は使われていない時間がある。コグニティブ無線基地局では、空いている無線チャンネル、無線システムを監視していて、パケットごとに空いている電波に振り分けて送信を行う。複数の無線を併用することで、あるチャンネルへのトラフィックの集中を防ぎ、安定した通信と広帯域化を実現する。

同社はコグニティブ無線通信において、より効率よくパケットを振り分ける技術や、空き情報を先読みする無線環境の予測技術を開発。電波の利用効率を向上させた。

応用例として考えているのが、被災地展開用基地局間ネットワーク。被災地での無線の利用状況を監視・予測しながら、車載用基地局の再配置を行って、エリア全体でのトラフィックを制御できるようにするというものだ。これにより、電波がつながりにくい、使えないという状況を回避することができる。

放送コンテンツを有効活用する「IP over デジタル放送」

「IP over デジタル放送」は、デジタル放送をIP化して配信する技術である。通常の放送では、さまざまなコンテンツを放送用にMPEGなどの映像フォーマットに変換して送る必要があるが、「IP over デジタル放送」なら音声・映像のストリーミング、Webサイト、Flashなどをそのまま配信できるようになる。放送用のフォーマットに制限されないために、表現豊かなコンテンツの配信が可能になる。

この場合、視聴者からのコンテンツを受け付けて、その中から番組制作者が選択して配信することも可能。放送用フォーマットに変換することなく、そのまま受け付けたコンテンツを利用できるのだ。

それ以外のIP化のメリットとしては、受信機で受け取ったコンテンツを、ホームネットワーク内にある各機器にルーティングすることが可能という点がある。IP化により、パソコン、ビデオ、オーディオプレイヤーなど、各機器に合ったコンテンツをひとつの放送で一斉に配信できる。また、受信端末と利用者の情報をひも付けることで、利用者に適切なコンテンツを提供する仕組みも実現する。

同社ブースでは応用例として、ひとつの電波で放送して同じ番組を視聴しているときも、コマーシャルの時間になると視聴者の属性にあわせて違う商品の宣伝が放送されるようなデモを行っていた。

同じ放送だが、パソコンによって違うコマーシャルが見られる

KDDIとレノボが共同開発したSIMスロットを持つThinkPad

パームレスト部に通信モジュール「KCMP」を内蔵。ディスプレイ裏側を通して、サイドのアンテナにつながっている

KDDIとレノボ・ジャパンが共同開発した、auの通信網を使ってパケット交換式のデータ通信ができるThinkPadも展示。通信モジュールは、CDMA 1X WIN/cdmaOne対応の京セラ製「KCMP」を使用。これを内蔵することで、PCカードより快適な通信環境を実現した。

ディスプレイ部にアンテナが見えているが、実はこれだけではなく、ディスプレイ裏側にもアンテナを配置し、受信効率を上げている。また「KCMP」には、GPS位置測位機能、OTA(Over The Air:無線による開通/解約)機能、日付時刻情報取得機能、簡易位置情報取得機能を持ち、2010年の周波数再編以降も利用できるという。

搭載するノートパソコンは、最新のCPUやチップセットを搭載した「ThinkPad X61」。ビジネスでもコンシューマでも快適な操作ができるうえ、無線LAN(IEEE802.11a/b/g)、Bluetooth、10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-Tにも対応するため、多彩な通信が利用可能となっている。