憧れる女子が急増中? “あざとかわいい”が最強である理由
あなたには、夢中になった恋愛ドラマがありますか? 泣いて、笑って、キュンキュンして、エネルギーチャージした、そんな思い出の作品が。この連載では、過去の名作を恋愛ドラマが大好きなライター陣が、当時の思い出たっぷりに考察していきます。
2020年から今年にかけて、“あざとかわいい”というワードが注目されている。
日向坂46の人気楽曲『アザトカワイイ』はYouTubeのMV視聴回数が1,500万回を超え、2020年のNHK紅白歌合戦で披露された。
田中みな実や弘中綾香がMCを務めるバラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日)は、毎週放送する度にTwitterでトレンド入りし、TVerの再生回数ランキングでも上位にランクインしている。
ここ最近だと、女性ファッション雑誌『CanCam』で、芸人の阿佐ヶ谷姉妹が“あざとかわいい”ポーズで表紙を飾る企画が話題になった。
そんな“あざとかわいい”ブームだが、実は今に始まったことではなく、2014年のリバイバルブームであると私は考えている。
2014年1〜3月、フジテレビで放送されたドラマ『失恋ショコラティエ』。この作品で、元祖“あざとかわいい”女子ともいえる最強ヒロインが存在していたのを覚えているだろうか。
ドラマをリアルタイムで見ていた女性だったらピンとくるかもしれない。
そう、石原さとみ演じる“サエコさん”だ。
モテテクだけじゃない! サエコさんの“あざとかわいい”魅力
『失恋ショコラティエ』は、恋に一途なショコラティエ・小動爽太(松本潤)が、チョコレートが大好きな小悪魔な既婚女子・高橋紗絵子ことサエコさん(石原さとみ)に想いを寄せ、彼女に身も心も振り回される物語だ。
大人気漫画家・水城せとな先生の原作『失恋ショコラティエ』が最高なのはもちろんなのだが、ドラマ版では石原さとみ演じる“サエコさん”の存在感が全視聴者をトリコにした。
白やピンクのかわいらしい服を身にまとい、髪型はロングヘアのゆるふわミックス巻き。
高めの声で「爽太くん!」と笑顔で駆け寄り、話す時は必ず上目遣いであごのあたりに指を添え、時には軽めのボディタッチをするサエコさんに、人妻だと分かっていながらも爽太は想いを募らせていく。
これだけ聞くと「女性に嫌われる女性」という印象を持つ人も多いだろうが、モテテクだけでなく、前向きな性格もサエコさんの魅力。
彼女はいつも明るく、笑顔で、絶対に人の悪口を言わない。
実は家庭では夫の幸彦(眞島秀和)にDVを受けているのだが、それを決して表には出さず、外では努めて朗らかに振る舞っている。
爽太と同じ職場で働く恋に不器用な薫子(水川あさみ)が、サエコさんに「気になる男の子からのメールがそっけない」という恋愛相談をした際には、こう答えていた。
「何もしないで、向こうから好きになってもらえたら、それが一番ですよね。でも普通、そんなことないんです。お菓子だって味がおいしいだけで十分なのに、それでも売るためには、形や色をかわいくしたりして、愛される努力が必要なんだなって思うし。
この人だって薫子さんを好きになってくれたら、メールの返事ももうちょっと早くなるとか、いろいろ変わってくるかもしれないですよ?」
それに続くサエコさんの印象的なセリフに「意識的にでも、無意識的にでも、人の気を引く努力をしている人が好かれていると思うんですよね」というものがある。
当初サエコさんに苦手意識を持っていた薫子は、このアドバイスを聞いて自分自身の考えを改めるのだが、当時リアルタイムでドラマを見ていた23歳の私もハッとした。
“あざとかわいい”は悪いことじゃない。かわいくなるための努力をできる子こそが、たくさんの人から好かれるし、最強なのだと。
“あざとかわいい”の流れに乗って、サエコさんも再ブーム?
そんな7年も前のドラマだが、実は今、若い女の子たちの間で“サエコさん”が密かにブームとなっている。
最近のTikTokでは、サエコさんに学ぶモテテク動画や、サエコさんが着ていた洋服や髪型を真似したVlog動画などが人気。75万以上のいいねがついている動画もあり、「サエコさんしか勝たん」「あざとかわいい」というハッシュタグやコメントであふれている。
TikTokユーザーは中高生が多いので、彼女たちがドラマ『失恋ショコラティエ』をリアルタイムで見ていた頃は小学生だったはず。
頭の片隅に“サエコさん”の記憶が残っていたのか、再放送やDVDを見てハマったのか、それともたまたまTikTokでバズって注目されただけなのかは分からない。
それでも「かわいい」を目指す女子にとっては、時代や世代を超えて、“サエコさん”が永遠の憧れであることに変わりはないのだろう。
(編集・文:高橋千里、イラスト:タテノカズヒロ)
※この記事は2021年04月10日に公開されたものです