占いで「当たっている」と感じやすい理由
「バーナム効果」とは、誰にでも当てはまりそうなのに、まるで自分だけが当てはまるかのような感覚に陥ってしまう心理のこと。今回は心理カウンセラーの永瀬なみさんに、バーナム効果の意味や使い方、恋愛やビジネスでの活用例と注意点を解説してもらいます。
「バーナム効果」という言葉をご存じですか?
バーナム効果とは、誰にでも当てはまりそうなことを自分だけに当てはめて考えてしまう心理です。
今回は、バーナム効果の意味や名前の由来、具体的な使い方や注意点などを解説します。恋愛やビジネスなどの日常生活にバーナム効果を取り入れたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
バーナム効果の意味は?
まずは、バーナム効果という言葉の意味や実験、身近な使用例を紹介します。
バーナム効果とは「自分だけに当てはまると思い込む心理」
バーナム効果とは、誰にでも当てはまりそうなことなのに、まるで自分だけが当てはまるかのような感覚に陥ってしまう心理のことです。
名前の由来は、1880年代に、興行師(こうぎょうし:催し物を開催する職業の人)として活躍していたフィニアス・テイラー・バーナムという人にあります。
彼が「We’ve got something for everyone(私たちにはみんなに当てはまる要素がある)」という宣伝文句を使っていたことから、彼の名前を取って「バーナム効果」という名前がつけられました。
この心理を実験で証明した心理学者バートラム・フォアの名前を取り、「フォアラー効果」とも呼ばれています。
バーナム効果の実験
バートラム・フォアが行ったのは、こんな実験です。
(1)学生に性格診断を受けてもらう
(2)全員に同じ診断結果を渡す
(3)当たっているかどうかを0~5点で評価させる
その結果、平均は4.26点となりました。全員に同じ診断結果を配ったにもかかわらず、多くの学生が「よく当たっている」と高評価をつけたのです。
学生に配られた診断結果には、例えばこんな文章がありました。
・あなたは他人から好かれ、称賛されたいと願っています
・あなたには、まだ生かせていない能力があります
・あなたは自分自身を批判してしまうことがあります
こうして見ると、この記事を読んでいるあなたにも当てはまる部分があるのではないでしょうか?
このように、人には誰しも“他人と共通した部分”があるものなのです。
身近にあるバーナム効果の使用例
実は、私たちの身近でもバーナム効果は使われています。
代表的なのが、占いです。具体的には、血液型占いや星占い、動物占いにタロット占いなど、個々の違いを用いずとも占えるものにはバーナム効果が使われていると考えられます。
特によく見られるのが、二面性を指摘する方法です。
例えば、おとなしそうなタイプに「あなたは穏やかそうに見えるけれど、実はとても情熱的な人です」と伝えたり、婚活中の人に「あなたは早く結婚したいとは言いつつ、1人の時間もなくしたくないと思っていますね?」などと伝えたりします。
人には多かれ少なかれ二面性があるため、こういった伝え方をすると「当たってる!」と感じやすいのです。
反対に、生年月日や手相、人相といった個々の違いを用いて占うものについては、バーナム効果が使われているとは限りません。
また、広告やキャッチコピーにおいてもバーナム効果が活用されています。
具体的には、広告でよく目にする「こんな人におすすめです」という欄を思い出してみてください。ここに書いてあることが多く当てはまれば当てはまるほど、見た人は「私のことだ!」と感じます。
人は誰もが「自分を特別扱いしてほしい」という願望を持っているため「これは私のためにある商品だ」と感じると、その商品がつい欲しくなってしまうのです。
バーナム効果の使い方は? シーン別に具体例を紹介
では、もし意図的にバーナム効果を恋愛やビジネスで使おうと思ったら、どんな使い方ができるでしょうか?
ここからは、バーナム効果を実際に使う方法として具体的な例を紹介します。
恋愛シーンでの活用例
恋愛のシーンでバーナム効果を使う場合は、相手が周りに明かしていない部分を言い当てるのがおすすめです。「えっ、何で分かるの?」と感じた相手は、あなたに特別感を抱きやすくなります。
この時に言い当てるのは、大した内容でなくてもOKです。例えば、こんな言葉を伝えると相手の心に響くかもしれません。
「(友達と過ごす時間が多い人に)私もそうなんだけど、もしかして寂しがり屋さん?」
「(起業した人に)経営者って意外と孤独なんじゃない? 大丈夫?」
「(気遣い上手な人に)そんなに気を使わなくても大丈夫だよ、疲れちゃうでしょ?」
思いを寄せる相手と少しでもお近づきになりたい人は、ぜひ相手の内面に注目してみてください。上手に言い当てられれば、きっと親密度がアップしますよ。
ビジネスシーンでの活用例
ビジネスシーンでバーナム効果を得るためにまず大切なのが、相手の困りごとをリサーチしておくこと。
美容室の接客を例に考えてみましょう。お客さまが抱える悩みの種類は、性別や年代によっておおよそ分類できます。
例えば20代の女性は乾燥やパサつき、くせ毛、傷みなどに悩みがちですが、40代の女性がよく悩みに挙げるのはツヤのなさや白髪、うねりなど。このように、同じ「女性の髪」でも年代によって悩みは異なります。
そこで、この情報を接客時のトークに取り入れるのです。すると、お客さまは「そうなの、そこが気になってたの!」と思うと同時に「信頼できそうな美容師さんだな」と感じてくれるはずです。
これは「コールドリーディング」と呼ばれる心理術の一種でもあります。
コールドリーディングとは、初対面にもかかわらず相手の特性や感情を言い当てること。いわゆる話術の1つです。初対面のお客さまに営業をする機会がある人は、ぜひバーナム効果とあわせてコールドリーディングについても学んでおくと役立つかもしれません。
バーナム効果を活用する上で気をつけるポイント
最後に、バーナム効果を活用する上で注意してほしい点をいくつかお伝えします。
バーナム効果を使う時に注意が必要なのは、次の2つです。
バーナム効果が生まれにくい人もいる
人によって性格や価値観が異なるため、バーナム効果が誰にでも同じように有効とは限りません。
バーナム効果が生まれやすいのは「自分のことを知ってほしい(分かってほしい)」と思っている人です。
反対に「自分のことをあまり他人に知られたくない」と思う人には、バーナム効果が生まれにくいと考えられます。言い換えるなら、警戒心が強いタイプにはバーナム効果が生まれにくいということですね。
バーナム効果を使いたい時は、効果が出やすい相手かどうかをチェックしながら進めると良いでしょう。
否定的な内容にすると効果が半減する
もう1つの注意点は、肯定的な内容にしなければ効果が半減すること。というのも、人は自分の信じたいことだけを信じがちだからです。
自分に都合の良いことだけを信じようとする心理を、専門用語で「確証バイアス」といいます。
例えば、自分のことを外交的だと思っている人に「本当のあなたは内向的なタイプですよ」と伝えても、本人がそれをうれしいと思わなければ信じようとしないのです。それどころか「この人の言うことは当たらない」と思われてしまう可能性もあります。
せっかくバーナム効果を活用しようとしているのに、確証バイアスが働くことで「この人の言ってることは間違っている」と思われてしまっては元も子もありませんよね。
バーナム効果を活用する時は、相手が肯定的だと感じる(うれしいと感じる)内容を心掛けてみてください。
バーナム効果を使った悪徳商法には要注意
今回は、バーナム効果の意味や名前の由来、具体的な使い方や注意点などを解説しました。
バーナム効果は、気付かないうちに自分が使われることもあります。特に女性は、自分のことを言い当てられると「分かってくれた!」と喜びやすい傾向があります。
もしかすると適当に言っていることがたまたま当たっただけかもしれませんので、怪しい商法に引っ掛からないよう、くれぐれも注意してくださいね。
(永瀬 なみ)
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※画像はイメージです
※この記事は2021年04月29日に公開されたものです